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アマゾン、なおも社員から不満噴出、気候変動対策で1.1兆円の基金設立も

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
米アマゾンのジェフ・ベゾスCEO(写真:ロイター/アフロ)

 米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)は先ごろ、気候変動対策のための基金を設立すると明らかにした。

「気候変動は地球にとって最大の脅威」

 今夏より、環境問題に取り組む科学者や活動家、非政府組織(NGO)などに、「ベゾス・アース・ファンド(Bezos Earth Fund)」を通じ、100億ドル(約1兆1000億円)を拠出するという。

 同氏は「大企業や中小企業、国家、国際団体、個人との共同活動」と説明。「気候変動は地球にとって最大の脅威だ。気候変動が及ぼす破壊的影響と闘うために、従来の方法の強化と新たな方法の探索の両面で協力したい」とも述べた。

 米ウォールストリート・ジャーナルは、同氏が宣言通りに基金を立ち上げれば、気候変動問題に取り組む米国で最大規模の基金になると伝えている。

再生可能エネルギーへの投資や自身の慈善基金も

 ベゾス氏は、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏や慈善家のジョン・アーノルド氏が共同会長を務める、再生可能エネルギー技術開発企業に投資するベンチャーキャピタル「ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ」の取締会メンバーでもある。

 また、2018年に設立した慈善基金「ベゾス・デイ・ワン・ファンド(Bezos Day One Fund)」にも私財を投じ、ホームレス世帯の支援活動を行う非営利団体などに資金を提供している。

従業員、アマゾンの取り組みは消極的と批判

 一方で、アマゾンの従業員は、同社の環境問題への取り組みに批判的だ。今年1月下旬に、従業員がウェブサイト上で集団抗議を始めた。同社の地球温暖化対策が消極的だと指摘している。

 アマゾンでは、物流事業からの二酸化炭素(CO2)排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すプロジェクト「シップメント・ゼロ(Shipment Zero)」を立ち上げ、2030年までに、その50%を達成するという目標を掲げている。

 昨年9月には、2040年までに全事業活動からのCO2排出を実質ゼロにすることを目指すと発表。現在、40%の再生可能エネルギーの使用比率を2024年に80%に高め、2030年に100%とする目標も掲げた。

 また、出資する電気自動車(EV)メーカーの米リビアン・オートモーティブに配送用EVを10万台発注。自社の基金「ライト・ナウ・クライメート・ファンド(Right Now Climate Fund)」を通じて森林や湿地帯の再生・保全に1億ドルを投じる計画も明らかにした。

 これに対し、米マイクロソフトは今年1月、2030年までにCO2排出を実質マイナスにする「カーボン・ネガティブ」を目指すと発表。より踏み込んだ対策を打ち出した。これを受け、アマゾンの従業員の間で「アマゾンも高い目標を掲げるべきだ」との不満が噴出した。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、最近、企業の気候変動対策への取り組みと、人材確保・維持能力には密接な関連があるという。とりわけ環境問題に敏感な若い従業員では、それが顕著だという。

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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