アマゾンがインド市場で睨まれた理由、当局が競争法違反の調査開始

インドのナレンドラ・モディ首相と米アマゾンのジェフ・ベゾスCEO(写真:ロイター/アフロ)

 ロイター通信米ニューヨーク・タイムズによると、日本の公正取引委員会に相当するインド競争委員会(CCI)が米アマゾン・ドット・コムと米ウォルマート傘下のインド・フリップカートに対し、競争法違反の調査を開始するという。

独占販売や偏った販促、大幅値引きなどを調査

 これら外資のeコマース大手が、その市場支配力を乱用し、同国の中小小売業者の競争力を弱める行為をしていないかどうかを詳しく調べるとのことだ。

 インド競争委は、アマゾンなどが次のような競争違反をしたと疑っている。(1)スマートフォンメーカーとの提携による新製品の独占販売、(2)特定の出店業者を対象にした偏った販売促進、(3)大幅値引き、(4)特定の出店業者の優先表示(インド競争委の資料)。

 ここで、インドの外資規制について、おさらいしておく。同国はアマゾンなどの外国企業がeコマース事業を行うことを禁止している。その一方で地場の小売業者(出店者)と消費者を仲介するマーケットプレイスは許可している。

 ただ、それには条件がある。昨年2月の規制強化によって、傘下のインド小売企業を通じて自社マーケットプレイスで商品を販売したり、出店者と独占販売契約を結んだりすることができなくなった。

外資EC企業に求められる「中立なマーケットプレイス」

 外資企業は、中立なマーケットプレイスを運営し、地場の小売業者を保護しなければならないという。運営者が自社のプラットフォーム上で自ら商品を販売し、インドの小売業者と競争してはならないし、同様の行為を自社の関連会社を通じて行うこともできない。

 こうした中、アマゾンやフリップカートが地場企業との合弁会社や、合弁会社の子会社を自社プラットフォームに出店させ、他の小売業者の競争力を弱めたと、インド当局は疑っている。

 ニューヨーク・タイムズによるとアマゾンは、自社ブランド「AmazonBasics 」のスーツケースや、同じく自社ブランドである「SOLIMO(ソリモ)」のティッシュペーパーなどを、出資企業を通じて、自社インドサイトで販売した疑いが持たれているという。

 フリップカートはインド企業だが、2018年に米ウォルマートが77%の株式を取得し、傘下に納めた。このため、外資規制の対象になった。フリップカートもサイト上で子会社を優遇した疑いがあるという。

インドEC市場、22年に1000億ドル規模に

 ニューヨーク・タイムズは、インドはアマゾンにとって最も成長が速い市場であり、顧客サービスと研究開発の拠点としても重要な国だと報じている。

 アマゾンは昨年(2019年)8月、世界最大のオフィスキャンパスを中南部テランガーナ州の都市ハイデラバードに開設した。面積は約3万8400平方メートル(東京ドーム0.8個分)で、オフィス空間の総面積は約16万7000平方メートル。約1万5000人の従業員を収容できるという施設である。

 こうした中、インドはアマゾンなどの外資小売大手に対する監視を強化している。昨年10月には、当局がアマゾンとフリップカートの販売価格を調査しているとロイターが報じた。

 同国の祝祭シーズンに合わせて、2社が不当な値引き販売をしていないかどうかを調べたという。これは、約7000万の小売業者を代表する業界団体からの苦情を受けたもの。今回の調査もこれら業界団体の申し立てに応じたものだ。

 インドのeコマース市場は急成長している。会計事務所大手プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の試算によると、2022年までに市場規模は1000億ドル(約11兆円)に拡大する見通し。

 しかし、当局の今後の動きによっては成長が減速する恐れがあると、同国競争法に詳しい法律事務所、TT&Aの弁護士は話している。

  • (このコラムは「JBpress」2020年1月15日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて再編集したものです)