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アップルは1億円アプリ開発者をグーグルの2倍生み出す、とは本当か

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

2社のプラットフォーム、モバイルアプリの収益で大差

 モバイルアプリのマーケティング会社、米センサー・タワーによると、昨年(2018年)9月までのわずか3カ月間に、世界の消費者が米アップルのアプリストア「App Store」で支出した金額は120億ドル(約1兆3200億円)で、米グーグルのアプリストア「Google Play」(62億ドル)のほぼ2倍になった。

 モバイルOSの利用者数や、アプリのダウンロード数では、グーグルの「Android」が、アップルの「iOS」を大きく上回っているが、アプリストアの収益では、依然、アップルがダントツでリードしている(図1)。

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初めて1億円超稼いだアプリ開発企業

 これに伴い、アップルのプラットフォームは、成功企業を数多く生み出しているという。

 米国市場に関するレポートによると、昨年、App Storeで初めて年間収入が100万ドル(約1億1000万円)を超えたアプリ開発企業は、164社に上った。この数はグーグルでは88社。アップルは、ミリオンダラー企業の創出といった点でもグーグルに勝っているという。

 昨年、App Storeで年間収入が初めて100万ドルを超えた企業の数は、一昨年から15%増加した。一方のGoogle Playでは24%増と、伸び率ではアップルを上回った。だが、絶対数では依然、アップルがグーグルのほぼ2倍となっている。

ゲーム比率が突出して高いGoogle Play

 両社のプラットフォームには、これ以外にも異なる点がある。年間収入が初めて100万ドルを超えた企業が手がけたアプリのカテゴリーである。App Store、Google Playともに、最も多いカテゴリーは「ゲーム」だが、その比率が両者で大きく異なる。

 App Storeでは、「ゲーム」の33%に続いて、「健康・フットネス」(12%)、「ライフスタイル」(10%)、「写真・動画」(8%)、「ソーシャルネットワーキング」(5%)の順となる。

 Google Playでは「ゲーム」が65%と、突出して高い比率。そのあとは「ソーシャルネットワーキング」(6%)、「スポーツ」(5%)、「ツール」(5%)、「健康・フットネス」(5%)と、いずれも5%程度となる。

 また、App Storeでは、初の100万ドル超えとなった企業の中で、ゲーム開発企業が1割減り、健康・フットネスとライフスタイルの企業が、合わせて1割程度増えた。これに対して、Google Playでは一昨年からの大きな違いが見られなかった。

App Store、昨年の消費者支出額は5.8兆円

 別の調査会社であるアップアニーによると、App Storeのサービスが始まって以来、世界の消費者が同サービスでアプリに費やす金額が右肩上がりで伸びている。

 その一昨年における金額は、425億ドル(約4兆7000億円)。2011年から7年間の年平均成長率は実に52%に上る。とりわけここ数年の伸びが著しく、2015年からの3年間で、ほぼ2倍に増えている。

 そして、昨年の金額は531億ドル(約5兆8000億円)。これが、2022年には757億ドル(約8兆3000億円)と、2017年から80%増えるとアップアニーは見ている。

  • (このコラムは「JBpress」2018年12月27日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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