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なぜ、iPhoneは価格が上昇し続けているのか、その理由知ってますか?

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:アフロ)

 先ごろ発表された「iPhone」の2018年モデル。すでに主力モデルの販売は始まっており、10月19日には、もう1つのモデルの予約注文受け付けも始まる。これら新モデルについて、簡単におさらいしてみよう。iPhoneの2018年モデルは次の3つがある。

6.5インチ登場、下位版も6.1インチと大型

 (1)昨年発売された「iPhone X」の後継機となる「iPhone XS

 (2)その上位バージョンで、画面サイズが過去最大の6.5インチとなった「iPhone XS Max」。こちらはiPhone XSと同じくOLED(有機EL)ディスプレーを備えている。

 (3)そして、6.1インチの液晶ディスプレーを搭載する下位バージョン「iPhone XR」である。

 このうち、iPhone XSは画面サイズが5.8インチで、前モデルと同じ。しかし、iPhone XRの画面は、液晶ディスプレー搭載の前モデル「iPhone 8」「iPhone 8 Plus」(それぞれ4.7インチと5.5インチ)よりも大きい。

 新たな3モデルの画面サイズは、発表前に出ていた観測と同じだ。これにより、2018年版iPhoneは、その平均画面サイズが、昨年のそれから23%大きくなった。また、一昨年の平均サイズと比べると、28%大きい。

最も高額なモデルは17万円超

 こうして、シリーズ全体で過去最大の画面サイズになったiPhoneだが、これに伴い価格も過去最高となった。

 例えば、iPhone XS Maxの米国における価格は1099ドルからと、これまでのiPhoneの中で最も高い。

 iPhone XSは999ドルからと、前モデルのXと同じ。ただ、iPhone XRは749ドルからとなり、昨年のiPhone 8の価格である699ドルから50ドル上昇した。

 米ウォールストリート・ジャーナルによると、これら新たな3モデルの平均価格は949ドルで、昨年発売された3モデルのそれに比べ15%高い。

 しかし、これは、あくまでもストレージ容量が最小の64GBモデルで計算した場合だ。iPhone XSとiPhone XS Maxの両モデルには過去最大容量の512GBが新たに用意されており、こちらはそれぞれ、1349ドル(日本では税別15万2800円)と1449ドル(同16万4800円、税込では17万7984円)となる。

 今回発表されたiPhone全モデルの平均単価を計算すると、1082ドルになる。果たして消費者はこうした1000ドルを超える端末を受け入れるのだろうか。

iPhone Xの市場投入でASPが上昇

 ここに興味深いデータがある。iPhoneの平均販売額が、ここ最近上昇の一途をたどっていることを示すものだ(図1)。

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 こちらは前述した店頭販売価格ではなく、アップルが実際にiPhoneの販売で売り上げた金額と、その台数をもとに算出した、端末1台当たりの平均販売額(ASP、Average Selling Price)。

 最近の傾向が顕著に表れたのは、昨年10〜12月期のこと。同四半期におけるiPhoneのASPは796ドルとなり、過去最高を記録した。

 アップルは、同四半期にiPhone Xを市場投入した。この高額な端末がASPを押し上げたというわけだ。

 またこの金額は今年4〜6月期も、724ドルと高水準で推移。1年前から約20%上昇した(図2)。

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 一方で、4〜6月期のiPhoneの販売台数は4130万台で、1年前から1%の増加にとどまった。

 スマートフォン需要は世界的に頭打ちで数多くのメーカーが、かつてのように販売台数を伸ばせない状況。

 そうした中、アップルは、台数の伸び悩みをASPの上昇で補うという戦略をとっている。

  • (このコラムは「JBpress」2018年9月14日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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