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急増するドローン、米連邦航空局が見通しを予測

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米連邦航空局(FAA)が、このほどまとめた航空宇宙産業リポートによると、米国におけるドローン(無人機=UAS:Unmanned Aircraft System)の実働数は、今後5年で急増する見通し。

商用ドローン、2021年に最大160万機

FAAによると、ドローンのうち、趣味目的の小型機は昨年末時点で約110万機だった。これが2021年までに約350万機へと増加し、市場の成長度合いによっては最大450万機にまで増えるとFAAは見ている。

一方で、昨年末時点で4万2000機だった商用ドローンは、2021年に44万2000機と、10倍超に増大する見通しだが、最大160万機に達する可能性もあると、FAAは予測している。

立ちはだかる規制の壁

こうして予測値に幅があるのは、市場が急速かつ、大きく変化していることに加え、現在施行されている商用ドローンの運用規則に多くの制限があり、将来それらの制限が緩和される可能性があるからだ。

昨年6月に公表され、同年8月に施行されたドローン使用に関する運用規則では、飛行が許可されるのは、操縦者から視認できる範囲の高度400フィート(約122m)以下となっている。

また、飛行できる時間帯は日の出30分前から日の入り30分後に限定され、夜間の飛行は認められない。さらに、飛行に直接関係のない人の上を飛ぶことや、1人の操縦者が複数機を同時操縦することも禁じている。

米アマゾン・ドットコムは、いち早くドローンを使った商品配送システムのプロジェクト「Prime Air」を立ち上げ、実験を繰り返しているが、こうした規制がある限り、同社のドローン計画は実現しない。

米メディア(Unmanned Aerial Online)によると、そもそも商用ドローンの飛行は禁止されている。そうした中、FAAは企業や団体に対し、それぞれ個別に審査を行い、問題がないと判断すれば制限を免除している。

規制緩和を示唆

ただ、今回FAAはリポートの中で、予測値に幅があることの説明として、規制に関するいくつもの前提条件を考慮したと述べ、次のような表現で規制の一部が緩和あるいは撤廃される可能性があることを示唆している。

「予測に最小値と最大値があるのは、規制環境の変化の進み具合という前提条件がいくつもあるためだ。規制環境が変化すれば、商用目的のドローン利用は、より広範かつ日常的なものになる」

なお、米国の市場調査会社ガートナーは、先ごろ公表したリポートで「民間用ドローンは個人の趣味用や産業用のいずれにおいても国や自治体の規制という障壁があり、これが市場成長を阻害する要因にもなっている」と指摘。一方で同社は「これまでのところドローン人気は衰えることを知らず、今後世界のドローン市場は急成長する」とも報告した。

ガートナーによると、昨年における民間用ドローンの世界出荷数は約215万機だった。これが今年は前年比39.0%増の約300万機になると同社は予測している。

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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