Yahoo!ニュース

あなたの予定をクラウドが決める日 - グーグルの人工知能(AI)研究開発 -

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
グーグル囲碁AI対プロ 最終戦は人工知能が勝利(写真:ロイター/アフロ)

米グーグルはこのほど、スケジュールアプリ「Googleカレンダー」にユーザーの日々の目標達成を支援する機能を追加したと発表した。

この機能の名称は「ゴール(Goals)」。ユーザーが目標を設定すると、カレンダーの内容をスキャンして空き時間を探し、自動でスケジュールを入れてくれるという。

使うほど賢くなるスケジュール機能

例えば、ジョギングやウォーキングなどの運動、語学やプログラミングなどの学習、楽器の練習、アート作品作りといった自分が目標とする様々なことを登録できる。

使い方は、Googleカレンダーのアプリ画面右下にある作成アイコン「+」をタップしたのち、「ゴール」をタップし、カテゴリーを選択する。カテゴリーにはエクササイズやスキルアップなどの項目があり、その中から自分の目標を選ぶ。

すると、毎日あるいは1週間に1度といった頻度、朝や午後といった時間帯、1回当たりの所要時間などの質問があり、それらに答えると自動で一連のセッション(予定)をカレンダーに入れてくれる。

またそれぞれのセッションはいつでも変更することが可能だ。例えば同じ時間に別の用事が入った場合、その用事を入力すると、セッションは自動で別の日時に再設定される。

さらに、セッションはいつでも延期できる。その場合は「延期」アイコンをタップすると自動でリスケジュールされる。また予定どおりにその日の目標を終えた際は、「完了」アイコンをタップする。

グーグルによると、こうした延期、編集、完了といった操作を繰り繰り返すことで、機能はどんどん賢くなり、スケジュールはユーザーの日々の生活に合ったものになるという。

なおゴールを作成するには、AndroidやiPhone向けの最新Googleカレンダーアプリが必要だが、作成したゴールの延期、編集、完了などの設定は、パソコン(Webブラウザー)でも行える。

本稿執筆時点では最新アプリは公開されていないが、グーグルは数日中に利用できるようになると説明している。

人工知能や行動経済学の専門家を採用

この話題を取り上げた米ニューヨーク・タイムズなどの海外メディアによると、ゴール機能には人工知能(AI)が用いられている。

グーグルは昨年機械学習を利用して、複雑なスケジュール設定を様々なカレンダーアプリに対して行うアプリ「タイムフル(Timeful)」の開発企業を買収したが、今回の機能はこの企業に籍を置いていたダン・アリエリー氏という人物が担当しているという。

この企業はもともと、スタンフォード大学の人工知能の専門家と、デューク大学の心理学・行動経済学教授、ダン・アリエリー氏による共同研究プロジェクトだった。

そしてアリエリー氏はグーグルによる買収に伴い、グーグルでゴール機能の開発を担当することになった。

テクノロジーの問題はテクノロジーで解決

このゴール機能について、ニューヨーク・タイムズが次ぎのように伝えている点が面白い。要約すると次のようになる。

「テクノロジーの進歩により、ビジネスは迅速になった。例えばグーグルは電子メールを優先順位に基づいて自動で振り分けたり、不要な電子メールを取り除いたりして、仕事の効率アップを手助けしている」

「しかし、その結果生じたのは、我々がより多くの電子メールを送るようになったということ。結局テクノロジーは我々の生活からエネルギーを吸い取っているが、グーグルはそうした問題を同じくテクノロジーによって解決しようとしている」

JBpress:2016年4月15日号に掲載:オリジナルタイトル「グーグル、カレンダーアプリに人工知能を搭載 自動でスケジュール調整する機能を追加」)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

小久保重信の最近の記事