アップルが開発しているのは仮想・拡張現実端末、社内に数百人規模の秘密研究部門、人材獲得も活発に

(写真:ロイター/アフロ)

先頃、米アップルが仮想現実(VR:virtual reality)と拡張現実(AR:augmented reality)研究の第一人者として知られるバージニア工科大学の教授を雇い入れたと英フィナンシャル・タイムズなどの海外メディアが伝えていたが、同紙の新たな報道によると、アップルはこうした技術の専門家で構成する大規模なチームを社内に組織しているという。

アップル、ヘッドセット端末を開発中

そのチームとは数百人規模の秘密の研究部門で、そこには同社がこれまで買収してきた企業の人材がいる。

またフィナンシャル・タイムズは、アップルは最近、拡張現実の米新興企業、フライバイ・メディア(Flyby Media)を買収したとも伝えている。

米ウォールストリート・ジャーナルによると、このフライバイ・メディアは、米グーグルの3次元(3D)視覚認識プロジェクト「Project Tango」向けに画像認識ソフトを提供した企業。このグーグルのプロジェクトでは、動作や空間、配置を立体的に認識する人間の視覚と同様の能力をモバイル端末で実現することを目指している。

そしてアップルが現在開発しているのは、米フェイスブック傘下のオキュラスVR(Oculus VR)が手がける「Oculus Rift」や、米マイクロソフトの「HoloLens(ホロレンズ)」のようなヘッドセットで、同社はすでに複数の試作機を作っているという。

アップルがいつヘッドセットを発売するのか、その製品がどのようなものになるのかといったことは明らかになっていないが、フェイスブックやグーグル、マイクロソフト、韓国サムスン電子などが次世代のテクノロジープラットフォームと睨み、仮想・拡張現実の開発を進める中、アップルもこの分野に参入したとフィナンシャル・タイムズは伝えている。

FBのオキュラス買収で興味が再燃

アップルでは2000年代半ばにスティーブ・ジョブズ前最高経営責任者(CEO)の指揮の下、仮想現実用ヘッドセットの開発が行われていたが、その技術は未完成のまま計画は中止された。

しかし、米フェイスブックが約20億ドルでオキュラスVRを買収した後、アップルのこの分野における興味が再燃したという。

アップルは2013年に3Dモーショントラッキング技術を手がけるイスラエルのプライムセンス(PrimeSense)を買収した。

昨年5月には、拡張現実用アプリケーションを開発するためのソフトウエアや、テーブルの表面などを大型タッチスクリーンとして利用するためのウエアラブル技術を手がけるドイツのメタイオ(Metaio)を買収。

同年11月には、モーションキャプチャーを使い、人間の表情をリアルタイムでアバターなどのデジタルフィギュアに反映させる技術を手がけるスイスのフェースシフト(Faceshift)を買収した。

また今年に入ってからは、顔の表情から感情を読み取る人工知能(AI)技術を手がける米エモティエント(Emotient)を買収したとも報じられた。

マイクロソフトからも人材引き抜き

今回のフィナンシャル・タイムズの報道によると、アップルのこの分野における人材雇用が盛んになったのは、前述のメタイオを買収した直後。

これまでにアップルは、バージニア工科大学のコンピューター科学教授、ダグ・ボウマン氏や、マイクロソフトのHoloLensチームのスタッフを雇い入れた。また光照射野(Light Field)技術によって、撮影後にピントを自在に変更できるカメラを開発した米ライトロ(Lytro)からも数人の技術者を引き抜いた。

フィナンシャル・タイムズによると、アップルはプロジェクトを完成させるため光技術も獲得したい考え。同社では今後も仮想・拡張現実の分野で企業買収や人材引き抜きが続きそうだと、海外メディアは伝えている。

JBpress:2016年2月2日号に掲載)