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アップルだけじゃない? スマホの成長鈍化懸念サムスンの業績予想に市場は失望感

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

先週金曜日、スマートフォン大手の韓国サムスン電子と台湾HTC(宏達国際電子)がそれぞれ4〜6月期の業績を報告したが、いずれもアナリスト予想に届かず、市場には失望感が広がった。

利益が過去最高も、投資家の期待に応えられず

このうちサムスンは4〜6月期決算の業績見通しを明らかにした。これによると同四半期は、営業利益が9兆3000億〜9兆7000億ウォン(82億〜85億ドル)の範囲となり、過去最高を更新する見通しだ。

だが、アナリストの予想はそれよりも高い10兆ウォン超だった。またサムスンは売上高を56兆〜58兆ウォンと予想したが、こちらもアナリスト予想の58兆7000億ウォンに届かなかった。

サムスンの営業利益は1年前から44〜50%増加する見込みだが、これは1〜3月期の増加率である54%を下回る水準。

海外メディアによるとこの発表を受け、アナリストらは「これまで過度に楽観的だった」と判断、今後の業績予想を下方修正した。

HTCは83%の減益、高機能モデルが振るわず

サムスン同様、米グーグルのモバイル基本ソフト(OS)「アンドロイド(Android)」搭載スマートフォンを手がけるHTCは5日、4〜6月期の決算(監査前)を発表した。

これによると、同社の純利益は1年前から83%減少し、売上高は同22%減となった。同社には「HTC One」と呼ぶスマートフォンの旗艦モデルがあるが、同モデルの販売が低迷しているとの報告があり、HTCの株価は先月30%近く下落した。

こうした高機能モデルについては、米ウォールストリート・ジャーナルが、先進国市場の普及率がピークに達しつつあるとするアナリストの分析を伝えている。

高機能スマートフォンの分野では、米アップルが投資家の高い期待に応えることができず、株価の低迷に悩まされている。だが、投資家が失望しているのはアップルだけではないとも同紙は指摘している。

投資家はスマホの成長性に懐疑的?

例えば、カナダのブラックベリーが先月に発表した3〜5月決算では、同社の最新OS「ブラックベリー10」を搭載したスマートフォンの出荷台数がわずか270万台であることが分かった。

これはアナリスト予測の300万台を下回っている。この270万台とは、アイフォーンの1〜3月期の出荷台数の1割にも満たず、フィンランド・ノキアの出荷台数の半分という水準だ。

そしてそのノキアも米マイクロソフトの「ウィンドウズフォン」搭載端末「ルミア(Lumia)」シリーズが思うように売れず、同社全体の出荷台数減少を食い止めるまでに至っていないという状況。

米ガートナーによれば、ノキアの世界スマートフォン市場における販売台数シェアの順位は昨年10〜12月期に8位だったが、今年1〜3月期は10位に後退している。

スマートフォンは高機能端末が先進国市場で飽和状態に近づいていると懸念されている。そうした中、サムスンなどのアンドロイド端末メーカーは低・中価格帯モデルにも力を入れ、新興国市場でシェアを伸ばしてきた。アップルもまもなく新興国市場向けの低価格アイフォーンを発売すると見られている。

ただ、サムスンやアップル、HTCはいよいよ安閑としていられない状況だ。

中国やインドなどの新興国市場では名の知れぬ地元メーカーが続々低価格端末を市場投入し、シェアを拡大している。利益率の高い高機能端末が先進国でこれまでほど売れなくなったからといって、単純に新興国市場に活路を見いだせばよいという考えは通用しなくなりつつある。

JBpress:2013年7月9日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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