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今年はウエアラブル端末がヒットする年? アップル、MS、サムスンが開発中と海外メディアが報じる

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー

米国の調査会社チェンジウェーブ・リサーチが北米の消費者1713人を対象に行ったアンケート調査によると、米アップルが今年にも発売すると言われている腕時計型端末を購入したいと考えている人が、すでに19%に達しているという。

「アイウォッチ(iWatch)」などと報じられているこの端末は、アイフォーンやアイパッドなどと連動し、電話をしたり、テキストメッセージを送ったりできるほか、アップルの音声アシスタント機能「シリ(Siri)」にも対応する。各種のセンサーを備え、利用者の健康管理にも使えるとされている。

チェンジウェーブ・リサーチはこうした端末の潜在需要が果たしてどの程度あるのかを調べるためにアンケートを行った。それによるとこのアイウォッチなる製品を購入する可能性が「非常に高い」と答えた人の割合は5%で、「やや高い」という人は14%だったという。

この数字をどう見るかというヒントを同社は示している。例えばアップルがアイパッドを発売する前の2010年1月に行った同じような調査では、可能性が「非常に高い」という答えは4%、「やや高い」は14%だった。チェンジウェーブ・リサーチはアップルのパソコンに関しても同様の調査を2005年に行っており、その時の回答は「非常に高い」と「やや高い」がそれぞれ4%と14%だった。

もちろん単純に比較はできないが、今回の調査結果は、これら昔の調査と傾向が同じというわけだ。いずれもその後にアップルの大ヒット商品になったことを考えると、アイウォッチはアップルの新たな看板商品になる可能性があるとチェンジウェーブ・リサーチは予測している。

米有力紙が、アップルの開発計画を報道

アップルはこのアイウォッチについてまだ発表もしておらず、その存在さえも認めていない。ただしもしこれが本当に存在するとすれば、アップルに対する消費者や市場関係者の期待は高まっており、アップルはそれに応えるため製品の完成度を相当に高めなければならないと指摘されている。

なおこのアイウォッチについては、今年2月に米ニューヨーク・タイムズや米ウォールストリート・ジャーナルが事情に詳しい関係者の話として報道している。それによると、アイウォッチは曲面ガラスを採用した端末で、基本ソフト(OS)はアイフォーンの「iOS」をベースにしている。

タブレット端末用のディスプレイガラスを製造している米コーニングが昨年「ウィロー・ガラス」と呼ぶ、紙のように自在に曲げられるフレキシブルガラスを発表しており、アイウォッチのような製品を実現させる技術基盤は整いつつあると言われている。

こうした身に着けて利用するウエアラブルデバイスは、バッテリーの持ち時間をいかに長くできるかが重要と言われているが、アップルは電力消費効率の高いチップを開発するメーカーと協力しているという。

失敗に終わったMSの腕時計型端末「SPOT」

そして、ウエアラブルデバイスの市場拡大をにらんでいるのはアップルだけではなさそうだ。例えば米グーグルは昨年めがね型端末の開発プロジェクトを発表。その第1弾製品「グーグル・グラス」は、早期導入プログラムに参加した人にすでに届けられたと伝えられている。

このほか先頃は、米マイクロソフトがタッチ操作可能な腕時計型端末を研究開発中とウォールストリート・ジャーナルが伝えた。フィンランドのノキアもスマートウォッチと呼ばれる腕時計型端末など、ウィンドウズフォンと連携するウエアラブルデバイスの研究開発をすでに終えているという。このほか韓国サムスン電子もこの分野の製品を開発中だと伝えられている。

興味深いのは、これらのメーカーはいずれもスマートフォンやタブレット端末の市場で激しい競争を繰り広げていること。ウエアラブルデバイスが今後普及していくのであれば、その市場のシェア争いは引き続きこれら主要プレーヤーが行うことになりそうだ。

なお、今からほぼ10年前にマイクロソフトが腕時計型端末を開発している。「スマート・パーソナル・オブジェクト・テクノロジー(SPOT)」と呼ぶ技術基盤をベースにした端末が、2004年に米国、フィンランド、スイスの時計メーカーから発売された。

これらはFMラジオの電波を使って天気、交通、スポーツ情報を定期的に配信するというもの。利用者が1カ月9.99ドルのサービス料を支払うというビジネスモデルだったが、2008年に販売が打ち切られた。

しかし今は時代が変わった。携帯電話網のデータ通信利用は日常茶飯のこと。公共の場では無線LAN(Wi-Fi)が至る所で利用でき、ウエアラブルデバイスはブルートゥース(Bluetooth)でスマートフォンとも接続できる。前述のニューヨーク・タイムズは、ウエアラブルデバイスが今後10年でスマートフォンに取って代わると見るアナリストもいると伝えている。

JBpress:2013年4月23日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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