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「禁断のモノマネ」がバレた北朝鮮エリート校幹部の悲惨な運命

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央テレビ)

 北朝鮮には、朝鮮労働党の幹部を養成する「党学校」という教育機関がある。首都・平壌にある中央幹部学校(旧称:金日成高級党学校)を頂点に、各地に置かれている。

 江原道(カンウォンド)にある党学校で経理課長を勤めていた男性が、不正行為を行った容疑で逮捕されたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

 党学校の学生は、寮で寝泊まりしながら教育を受ける。朝鮮労働党江原道委員会(道党)は、財政状況がいかに悪くとも党学校の教員と学生には食糧配給をきちんと続けていた。経理課長は、この配給された食糧を、様々な形でくすねて自宅に持ち帰っていた。

 そのことは校内で広く知れ渡っていたが、上級幹部がバックに付いていたのか問題になることはなかったようだ。だが、職員が道党に信訴(内部告発)を行い、ついに事態が動いた。

 江原道検察所が、課長の自宅を家宅捜索したところ、倉庫には食糧が溢れかえっていたという。そればかりか、韓国の映画と音楽が入ったUSBメモリ10個、米ドルの札束が発見された。捜索中にキッチンからは、韓国風のアクセントでこんな自動音声が聞こえてきたという。

「ごはんが美味しく炊けました」

 ご禁制の品である韓国製家電を悪びれることもなく使っていた課長一家。その音声を聞いた検察所の職員は、呆れ返ったという。

 課長はさらに、韓国映画に登場する女優のセリフのモノマネを近隣住民に披露するなど、問題だらけであることが判明した。

(参考記事:金正恩をヘナヘナにした「エリート少女」らの禁断の行為

 金正恩総書記は今年10月、中央幹部学校で「新しい時代のわが党の建設方向と朝鮮労働党中央幹部学校の任務について」と題した講演を行ったが、その中で次のように指摘している。

 全党的に課された任務に対する無責任感と非積極性、形式主義とことなかれ主義、人民生活を見守らない行為をはじめ、あらゆる誤った思想観点と活動態度を克服するための闘争が各方面から細部的に厳格に行われた。

 特に、権柄と官僚主義、不正腐敗行為、単位特殊化と税金外の負担を課する行為を掃討するための戦争を宣布して段階別に強い組織的・法律的措置を取った。

 これに合わせた規律強化事業が行われている中の摘発で、上層部は非常に深刻に受け止めている。

 課長は現在、江原道保衛局(秘密警察)に身柄を移され、予審(起訴前の証拠固め)の段階にあり、食糧や現金の不正蓄財の過程、韓国映画の入手先について厳しい追及を受けている。

 余罪があまりにも多く、予審が長引くことが予想されており、金正恩氏の言葉に反する行為を行っただけあって、保衛員たちは生きては帰ってこれないだろうと噂していると、情報筋は伝えた。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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