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「中国の空気を吸うな」北朝鮮警備隊、防毒マスク着用し厳戒

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
北朝鮮の国境警備隊員(デイリーNK)

 中国が新型コロナウイルスの抑え込みに躍起になっている。最大都市・上海でのロックダウンは日本でも大きく報じられているが、それに先立って感染者が急増した吉林省各地でもロックダウンに入っている。

 吉林省衛生健康委員会の発表によると、7日の新規感染者は617人に達したが、なりふり構わぬ対策の効果があったのか、25日には44人まで減少した。ただ、国境の川を隔てた向う側では依然、戦々恐々としている。

 中国・遼寧省と国境を接する平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、当局は今月初旬、国境警備隊員に対して防毒マスクを着用して勤務に当たるように指示を下した。「新型コロナウイルスがタンパク毒素に変異した」という判断に基づくものだとのことだが、真偽は不明だ。

 また、先月には吉林省と国境を接する慈江道(チャガンド)中江(チュンガン)に駐屯する国境警備隊員にも同様の指示が下されている。ただ、国境全域で同様の命令が下されたかは確認されていない。

 圧着ゴムで作られたマスクを長時間着用するのは困難であるため、外部で警戒に当たる際にのみ着用しているものと思われる。隊員の間では「ウイルスが風で飛んでくると言われているが、そんなことがあるものか」と疑問の声が上がっているという。

(参考記事:北朝鮮国民が目を背ける「見せしめ射殺体」の衝撃の現場

 また、「去年は飛んできた鳥も朝鮮の地を侵犯すれば銃撃せよとの命令を下していたが、今年は中国から流れてくる空気も吸うなと言っている」と皮肉る声も上がっているそうだ。

 なお、国境付近の住民に対しては、混乱を恐れてか情報が伝達されておらず、防毒マスクを着用した国境警備隊員を見て、冬季訓練の一環だと思いこんでいるとのことだ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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