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金正恩「死亡映像」が北朝鮮で拡散…当局厳戒、国民も緊張

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央通信)

北朝鮮国内で、金正恩党委員長が死亡したという内容の動画が密かに拡散しており、当局が取り締まりに躍起になっているという。

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は27日、韓国デイリーNKに「保衛部(秘密警察)、保安署(警察)が総動員され、国境地域では密かに中国との通話をしたり、メッセージを送受信したりする住民の集中取り締まりを行っている」と伝えた。

確実に死刑

新型コロナウイルスの侵入を防ぐため、中朝国境地帯の警戒は強化されているが、それに加え、金正恩氏が死亡したとする内容の映像流入が発覚したために、一帯はいっそうの厳戒態勢となっているという。

「朝鮮中央テレビの報道番組を模倣した動画が中国から入ってきたのだが、(金正恩氏が)現地指導の途上で急病により死亡したという内容が含まれている。これが社会問題となり、緊急点検と調査が進められている」(情報筋)

ここで述べられているとおり、問題の映像は出来の悪いニセモノだ。故金正日総書記の追悼式の映像を流用してそれらしく作られているが、北朝鮮のテレビ番組を見慣れた人ならすぐにわかる。

しかし北朝鮮においては、映像がホンモノかニセモノかというのは二の次である。北朝鮮当局は、韓流ドラマや韓流映画が社会主義体制を蝕むとして憎悪し、拷問や公開処刑などの手法まで用いながら、闇での流通を取り締まってきた。

(参考記事:女性芸能人たちを「失禁」させた金正恩氏の残酷ショー

ただのドラマでさえそうなのだから、金正恩氏の権威を傷つけ、嘲笑するような映像を視聴・拡散させたと知られたら、どんな目に遭わされるかわからない。意図的に拡散したと断定されたら、まず間違いなく死刑だろう。

情報筋も「この映像を見た住民たちも物凄く当惑した。問題となってからは、誰も言及すらできなくなっている」と話す。

さらに、「党の組織指導部と検察、保衛部、保安署などにより特別取締班が編成され、この映像がどのように入ってきたか、流布した者は誰なのかを調査している。中国との間で密輸などを行ってきた人々は、頭を低くして嵐が過ぎるのを待っている」と語った。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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