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北朝鮮、漁船に「凶器搭載」を義務化…日本海で海保に対抗

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩氏(朝鮮中央テレビ)

冬を迎え、東北の日本海沿岸ではハタハタ漁が本格化しているが、心配なニュースが飛び込んできた。北朝鮮当局が、漁に出る漁師に凶器を搭載するよう指示を出したというのだ。

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、私事旅行で中国にいる元山(ウォンサン)市民が、水産事業所の幹部から聞き、漁師からも確認を取った話として、この件を伝えた。

当局は漁船ごとに斧2本、包丁10本、鉄製の銛10個以上、表面に釘がぎっしり打ち込まれた棒10本、卵の中に唐辛子粉を詰めた唐辛子卵を20個などを備えよと指示し、積んでいなければ出港許可が出ないため、漁師たちは凶器作りに追われているという。

この元山市民は、中国の人にこの話をしたが、当初は冗談だと思われ真面目に取り合ってくれなかったと述べた。

当然のことながら、こんな馬鹿げた指示に北朝鮮国内でも懸念の声が上がっている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)在住の華僑は、現地でも同様の指示が出されていることを伝え、日本やロシアの海域まで行って操業するしかない北朝鮮の漁船が、日本の海上保安庁やロシアの国境警備隊に摘発されそうになったときに、振り回して抵抗するためのものだと説明した。

「このような原始的な道具を使って抵抗するのは本当に危険極まりない」と批判しつつも、お上からの指示とのことで仕方なく準備していると現地の漁師たちの反応を伝えた。北朝鮮国内では、漁師たちの生命が危険に晒されると心配する声が上がっているが、文句を言えば出漁そのものができなくなるので、漁師たちは従わざるを得ないという。

(参考記事:日本海上での大量殺人…「北朝鮮の海賊」の残虐度

インターファクス通信によると、ロシア国境警備隊は今年9月17日、違法操業をしていた北朝鮮漁船団を摘発したが、その過程で激しく抵抗され、隊員4人が負傷した。うち1人は銃で撃たれている。北朝鮮の船員にも負傷者が発生し、1人は3日後に死亡している。この事件では、船員11人が逮捕、起訴されている。

また、今年10月には、日本海の大和堆周辺で水産庁の漁業取締船と北朝鮮の漁船が衝突し漁船が沈没する事故が起きている。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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