北朝鮮「働く女性」に人気の新ビジネス…金正恩「中絶禁止」とも合致

北朝鮮の招待所で働く女性従業員たち(資料写真:平壌写真共同取材団)

現在の北朝鮮政府の前身にあたる北朝鮮臨時人民委員会が1946年7月に発表した「朝鮮男女平等権法についての法令」は、当時としては非常に先進的な男女平等法と言われた。

それから73年。北朝鮮社会には依然として、様々な形での女性差別が存在する。しかしその一方、女性はそのような風潮に負けず、北朝鮮経済の柱となっている側面もある。

ろくに給料も配給も出ない国営工場や企業所に一日中縛り付けられ、経済活動ができない男性とは異なり、必ずしも職場に所属する義務のない女性たちは、市場で商売をしてその稼ぎで一家を養う。

(参考記事:女性からの「死の復讐」に怯える北朝鮮のバツイチ男性

そんな忙しい女性たちの間で最近、ベビーシッターが人気を集めていると北朝鮮各地のデイリーNK内部情報筋が伝えている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、清津(チョンジン)の市場で働く女性たちの間で子どもをベビーシッターに預けるのが流行していると伝えた。

女性たちはできる限り、子どもを実家の両親や義理の両親にに預けようとするが、それが無理な場合にはベビーシッターを雇う。ベビーシッターは概ね、商売の知識を持っていなかったり、家族から経済的援助が受けられなかったりして貧しい暮らしを強いられている年配の女性がやっている。

情報筋は、清津(チョンジン)で小さな簡易売台(プレハブの店舗)で飲食業を営むある女性のケースを挙げた。

まず、午前9時に売台に出勤して、やって来たベビーシッターに赤ん坊を預けてから店を開ける。昼には離乳食を送り届ける。ベビーシッターは乳を飲ませるために1日2回ほど、女性の売台に赤ん坊を連れてくる。そして、午後8時に再度赤ん坊を売台に連れてきて、その場で報酬を受け取るという流れだ。

報酬は1日にトウモロコシ麺1キロ。ちなみに北朝鮮の市場で、トウモロコシ1キロは1600北朝鮮ウォン(約20円)程度で取引されている。報酬の相場はここ数年、あまり上がっておらず、実家の両親や義理の両親に子どもを預ける場合にも、ベビーシッターに渡すのと同じだけのトウモロコシ麺を渡すか、それに相当する現金を渡すとのことだ。報酬が安い割には、面倒をよく見てくれるので子を持つ親の間でとても満足度が高いそうだ。

北朝鮮には、協同農場、3級以上の工場、企業所には国営の託児所が存在する。また、小規模な職場に通う人は区域の国営託児所に子どもを預ける。ところが、市場で商売する女性のライフスタイルに合っていないというのだ。

「託児所は子どもを決められた時間に連れていき、決められた時間に連れて帰らなければならないので、工場勤めの女性には合っている。しかし、現状で女性の多くが(託児所の)要求条件に合わせられず、ベビーシッターに預ける」(情報筋)

それ以外にも、子どものコメとおかずに月平均1万北朝鮮ウォン(約130円)の費用がかかる。ベビーシッターよりは安いが、満足の行く環境ではないようだ。

一方、平安南道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、商業活動が活発で所得の高い平安南道の平城(ピョンソン)や平安北道(ピョンアンブクト)の新義州(シニジュ)でも、女性がベビーシッターに子どもを預ける事例が増えていると伝えた。

平城や新義州の場合、前述の清津と比べるとベビーシッターの報酬は高く、食費と合わせて1ヶ月100元(約1580円)ほどかかる。一方で、国営の託児所はおむつ以外のものはすべて提供される。それでも、国営託児所よりベビーシッターが人気なのは、母親の多忙さ以外にも理由がある。

「数十人が団体でいる場所ではなく、一、二人を集中的に世話するベビーシッターは、昼ごはんやおやつを与える際に、親と同様に気を使えるからだ」(情報筋)

預かっている子どもの数が多い託児所では、一人ひとりに目が行き届かかない。また、集団生活から来るトラブルも発生する。それを防ぐにはベビーシッターに任せた方が安心というわけだ。

ただし、教育面では国営の託児所の方が優れており、逆にベビーシッターの方が事故の恐れがあると不安がり、国営託児所を好む親もいるとのことだ。

最近の景気悪化がベビーシッターを選ぶ傾向を煽っているとの見方もある。景気が良くないので、商売で遠くまで出かけることが増え、夜遅くまで預かってくれる個人経営の託児所のほうが便利というわけだ。

ちなみに、当局はベビーシッターについて特に介入しようとしていない。中絶を禁止してまで人口増加を図る金正恩党委員長の政策に合致しているからだと思われる。

(参考記事:北朝鮮で「捨て子」が深刻化…背景に「避妊・中絶」禁止