「死刑囚は体が半分なくなった」北朝鮮、公開処刑の生々しい実態
中国との国境に面した地域にある、北朝鮮の教化所(刑務所)で、受刑者が看守の保安員(警察官)を殺害する事件が起きたと、現地のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
事件が起きたのは、咸鏡北道(ハムギョンブクト)会寧(フェリョン)にある全巨里(チョンゴリ)教化所だ。内部情報筋によると、事件のきっかけとなったのは「酒」だ。
「正月に贈り物として酒が配られた。それを飲んで酔っ払った教化生(受刑者)が、普段から自分をいじめていた保安員の頭を石で殴って殺害した」(情報筋)
この受刑者は、保安員の制服に着替えて、教化所の正門から堂々と出て脱走した。
当局は即刻逮捕命令を下し、咸鏡北道の保安部(警察本部)、保衛部(秘密警察)、国境警備隊が合同で逮捕作戦を繰り広げた。この受刑者がどこを目指していたかは不明だが、教化所から中国との国境までは30キロほどなので、脱北を試みようとしたと見るのが自然と言えよう。あるいは強化された国境警備に阻まれ、より警備の手薄なところを探していたのかもしれない。見つかったのは会寧から北東に100キロ以上離れた慶源(キョンウォン)だった。
受刑者は脱走から5日目の今月6日に逮捕、連行された。そして、10日に他の受刑者が見守る中で銃殺刑に処せられた。
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北朝鮮は、国際社会から人権問題への批判を意識してか、かつては公開で行っていた処刑を非公開で行う傾向にある。ただ、今回は閉鎖された教化所という空間で、内部の秩序を保つ目的で見せしめとして公開処刑されたものと思われる。
(参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」)
世界最悪の人権侵害国家と呼ばれる北朝鮮の中でも、さらにひどい人権侵害が行われているのが収監施設だ。全巨里教化所の内部の実態については、収容された経験を持つ多くの脱北者が証言している。
(参考記事:北朝鮮、脱北者拘禁施設の過酷な実態…「女性収監者は裸で調査」「性暴行」「強制堕胎」も」)
今回の事件は、人権侵害を末端で実行している保安員とて安全とは言えないことを示している。彼らが恨みを買って殺される事件は度々起きている。例えば2012年の12月ごろ、全国各地で「オパシ」(悪徳保安官)が次々に殺害される事件が起きた。抑圧体制は支配する側にとっても不幸なものなのだ。
(参考資料:北朝鮮で悪徳警察官が次々に殺害される…妻子も巻き添えに)