「世界は弱肉強食のジャングルと化す」金正恩氏が隠し持つアブナイ世界観
北朝鮮国営の朝鮮中央通信は23日、国連安全保障理事会が北朝鮮の核兵器開発に対して制裁措置を加えるのは「二重基準(ダブルスタンダード)の極みである」と非難する論評を配信した。
これは、北朝鮮がかねてから繰り返してきた主張だ。李容浩(リ・ヨンホ)外相も23日の国連演説で、同じことを言っている。
論評は、安保理は「朝鮮半島と地域の情勢緊張の悪循環の根源である米国とその追随勢力が行う合同軍事演習については押し黙りながら、それに対処したわれわれの自衛的措置に対してはことごとく『制裁決議』」を加えていると指摘。
また、核実験や弾道ミサイル実験が世界の平和と安全に脅威になるとする法的根拠は、国連憲章やどの国際法典にも定められておらず、実際に「われわれよりはるかに先にこのような実験・試験を行った国が国連安保理で問題視されたことはただの一度もない」などと主張している。
これを読んで、「北朝鮮の言い分にも一理ある」と感じる人もいるかもしれない。核開発以外にも、自国民に対する残忍な人権侵害など金正恩体制を追い詰める法的根拠はいくらでもあるが、ここは敢えて、北朝鮮の主張に付き合ってみよう。
(参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」)
米露中英仏の安保理常任理事国のみが合法的に核武装できると定めた不拡散条約(NPT)が不平等条約であるのは、紛れもない事実だ。しかし約束は約束だから、加盟していれば守るのが義務なわけだが、NPTからの脱退を宣言している北朝鮮としては、「縛られる謂れはない」との主張なのだろう。
ただ、北朝鮮はNPTからの脱退を宣言する前から、隠れて核開発を行っており、それがバレた後で脱退を宣言したのだ。やはり核武装を強行したインド、パキスタン、イスラエルは最初からNPTに参加しておらず、この点で北朝鮮の立場は異なる。
NPTによって核武装の優位を守ってきた米国が、自国に敵対的な北朝鮮による「NPT破り」を黙認するはずもなく、超大国としての影響力をフル活用して圧力を加えているのが現在の構図なのだ。
本当のところ、北朝鮮もそのぐらいのことは分かった上で「二重基準」を批判しているのだと筆者は思う。いわば、自分の立場を正当化するための方便である。
実際には、「なんだかんだ言っても、核兵器を持った者が勝ち」であるという金王朝三代――特には金正恩党委員長の世界観こそが核武装の原動力になっているのではないか。筆者もまだ、金正恩氏の世界観を分析しきれているわけではないが、前述した論評の次のような一説は参考になりそうだ。
「国際舞台で二重基準を適用して自分らの世界制覇野望を実現しようとする米国の策動がそのまま容認されるなら、国際関係においては正義と真理が抹殺され、世界は必ず弱肉強食のジャングルと化す」
これは世界に対する警告として述べられたものだが、核兵器という究極の暴力手段で現行秩序を破壊しようとしている金正恩氏は、むしろこうした世界の到来を望んでいるようにも見える。
我々は、決してそのような行為を容認できない。繰り返すが、北朝鮮を追い詰める法的根拠は、人権侵害をはじめいくらでもある。
(参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは…)
国際社会は今後も、北朝鮮に対する追及の手を緩めてはならない。