100人規模で次々に死者が出る「金正恩型」の2次災害
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北朝鮮が朝鮮労働党創建日(10月10日)に合わせて核実験、もしくは長距離弾道ミサイルの発射実験を強行する可能性があると米韓当局が警戒している。
本来なら、台風10号(ライオンロック)の影響による水害被害で、核・ミサイルどころではないはずだ。しかし北朝鮮は先月、被災直後にもかかわらず核実験を強行した。どんな状況であれ、金正恩党委員長が決断すれば、核実験もしくはミサイル発射実験は強行されるだろう。
復旧現場を捉えた写真
金正恩氏は復旧作業に10万人の人員を投入するよう指示を下すなど、表向きは人民大衆に配慮を見せている。また、労働新聞などの北朝鮮国営メディアは9月28日の時点で、「基礎のコンクリートの打設が98%に達した」と報じた。あたかも復旧作業が順調に進んでいるかのように宣伝しているが、デイリーNKがとらえた現場の最新写真からは、とてもそうとは言いがたい。
(参考記事:【写真】北朝鮮の水害被災地、復旧作業は進まず)
さらに、早くも多数の犠牲者を出す二次災害が発生しているという。
17日間で100人が死亡
羅津(ラジン)と会寧(フェリョン)を結ぶ鉄道の咸北線の復旧現場では、岩盤の発破作業中に2回事故が発生。それぞれ4人、3人の作業員が死亡した。安全装備なしに発破作業を行い、爆発に巻き込まれたのだ。
一方、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、茂山(ムサン)郡の七星里(チルソンリ)で9月14日、山崩れで通行止めになっていた道路と鉄道の復旧作業中に、再度山崩れが発生した。
作業現場にいた作業員20数人は土砂に押し流され、豆満江に落とされた。男性たちは、岸まで泳いで助かったが、女性の多くが泳げず、泳げる人々の救助もむなしく、地元の女性3人と清津(チョンジン)市鉄道管理局の線路補修隊の幹部2人が亡くなった。
500人死亡の「地獄絵図」
会寧税関から金生里(クムセンリ)に至る道路と鉄道の復旧現場で、9月12日から29日までの間に100人以上が死亡したという。事故が発生した現場は、目の前に豆満江が流れ後ろには小豊山(ソプンサン)がある地盤の弱い地域だ。
市内では、これ以外にも橋の崩落に巻き込まれて作業員が死亡するなど、二次災害が相次いでいるが、当局からのアナウンスは一切なされず、現場では早くも緘口令が敷かれている。
過去にも、橋梁の建設現場で500人が一度に死亡する地獄絵図のような大惨事が起きたことがあった。しかし、北朝鮮当局は事故の存在そのものを隠蔽し、詳細は一切明らかにされなかった。今回も徹底的に隠蔽しようとしているようだ。
(参考記事:北朝鮮、橋崩壊で「500人死亡」現場の地獄絵図)
さらに「現場の担当者は『死亡者は、自分の不注意で事故を起こした』などと弁明するだけで、誰も責任を取ろうとしない」と、デイリーNKの内部情報筋は打ち明けた。
「核の暴走」の裏で
そもそも、金正恩氏直々の指示で行われている復旧作業で、なんらかの事故を起こしたとなると、厳しく処罰される可能性があることから、幹部らは責任逃れに終始している。
幹部らの無責任な姿勢に、被災地の住民からは「人を生かそうとしているのか、殺そうとしているのかわからない」「ただでさえ水害で多くの人が亡くなったのに、これでは、死者が増えるばかりだ」という不満の声があがっている。
復旧作業も進まず二次災害が起きるなか、もし金正恩氏が核実験やミサイル発射実験を強行すれば、住民からの反発の声は避けられない。さらに、国際社会から非難を招くのも必至だ。これまでも金正恩氏による核の暴走の裏で多数の犠牲者が生み出されてきたが、またもや悲劇が繰り返されつつある。
(参考記事:北朝鮮「核の暴走」の裏に拷問・強姦・公開処刑)