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15歳で駆け抜けた世界の大冒険  木下晴結インタビュー 後編【テニス】

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
高校1年生の木下は、テニスと勉強を両立させて頑張っている(写真すべて神 仁司)

 ジュニアテニスプレーヤーの木下晴結(きのした はゆ)は、2022年シーズンに、テニスの4大メジャーであるグランドスラムのジュニアの部で、15歳ながらすべて本戦出場を果たすことに成功した。今回は、高校生1年生である木下の奮闘ぶりなども聞いてみた。

――USオープン2022では、女子シングルス決勝「イガ・シフィオンテク対オンス・ジャバー」を観戦できたんですよね。

木下:やっぱりシフィオンテクのファイターの部分がすごい。そのファイターのメンタルがすごい強くて、それがシフィオンテクだなって思っています。自分も声を出すタイプなんで、そこはすごいリスペクトしてて好きなところなんです。やっぱり自分もあそこの舞台(グランドスラム決勝)に行きたいなとも思いました。

 もともと決勝を見る予定はなくて、観光に行く予定だったんです。(木下に帯同する奥田裕介)コーチは観光に行きたいって言ってて、自由の女神を見に行こうとめっちゃ言われたんですよ。でも、晴結が、決勝を見れるなら見たいって言って、(会場に)残りました。

 ニューヨークの街は、タイムズスクエアへ行きました。

――アーサー・アッシュスタジアムは、USオープンのセンターコートであり、世界最大のテニス専用スタジアムです(収容人数2万3859人)。どうでしたか。

木下:めっちゃ、めっちゃデカかったです。もうなんか後ろの方まで上の方まであって、見えるのかなって(笑)。

――いつか木下さんがアーサー・アッシュスタジアムのテニスコートでプレーできるといいですね。

木下:立ちたいですね。

――グランドスラムの中で、どこの大会がお気に入りですか。

木下:やっぱテニスの聖地を感じたウィンブルドン。雰囲気がいいです。

――ローランギャロスとウィンブルドンの間である6月中旬頃、チュニジアで開催された、プロも参加する一般のITF大会(賞金総額:1万5000ドル)に挑戦したんですね。

木下:やっぱりジュニアとプレースタイルが大きく違うっていうのは感じました。頭をよく使ったプレースタイルが多かったり、メンタル的にもキレにくいっていうのを感じました。本戦(1回戦)で2大会共負けたんで、そんなにいい思い出じゃないけど。

――9月下旬から10月上旬にかけて、日本で開催されたITF2万5000ドル大会にもトライしました。七尾大会(石川)では、予選を勝ち上がって2回戦進出。牧之原大会(静岡)でも予選を勝ち上がって、見事準優勝。決勝では5-7、4-6で負けました。

木下:チュニジアでの経験があったからこそ、(インタビュー時から)先週(牧之原)と先々週(七尾)につながった。これでWTAランキングもたぶん付くんで、いい経験だったと思います。(連戦で)結構疲れはあったんですけど、テニスの感覚的には良くなっていたんで、出てよかったと思います。

【※10月17日付のWTAランキングで、木下は710位で初登場。15歳でWTAランキングを手にした】

木下は、グランドストロークを軸にしてネットプレーも交ぜるオールラウンドプレーを心がけている。シングルバックのスライスも使う
木下は、グランドストロークを軸にしてネットプレーも交ぜるオールラウンドプレーを心がけている。シングルバックのスライスも使う

――木下さんは、4月から高校生になったんですよね。どこの高校で勉強しているんですか。

木下:ルネサンス大阪高等学校の通信制で勉強しています。インターネットやスマホでできるんで、動画見たり、レポート提出を毎月したりして、年に5日ぐらいスクーリング(実際の学校に)行くって感じです。

――得意科目とかありますか。

木下:体育(笑)。体育以外だったら、ん~~。でも、勉強が超嫌いなわけじゃないですよ。別にめっちゃ好きってわけでもないんですけど、別に苦じゃないんで(苦笑)。別になんでもいいんですけど、でもちょっと国語だけは……。本とかもそうなんですけど、字がいっぱい並んでる本とか、あんまりじっと読めない。本1冊読み切れない。超気になってた本も、最後まで読めない。

――気分転換の仕方は?

木下:食べることと寝ること(笑)。(食べ物は)好きなものがいっぱいで選びきれないタイプ。1番がないんですよ、焼肉も大好きだし、寿司も好きだし、全般行ける。好き嫌いないです。

――木下さんは、小学6年生の時は身長145cmだったそうですね。タイミングや球種で相手のリズムを崩し、守備力や対応力があったとか。

木下:対応力だったり、いろんな球種を使って頑張ってたんですけど、やっぱりパワーに対して無理なところがあって、全国大会だったり、いろんな大会でそんなに勝てなかった。

――いつ頃から身長が伸びたんですか(現在の木下の身長は168cm)。

木下:中学に入って1年弱は遠征を回れていたんですけど、その時にめっちゃ伸びて、中1で10cm、中2で8cmぐらい伸びた。制服とかも、最初スカートがひざ下だったんですけど、中3の時には全然ひざ上で、先生に「短い!」って怒られました。トレーナーさんにもずっと見てもらっていたので、急激に背が伸びて痛くなるというのはなかったんですけど、打点がくるったのか、テニスの調子が良くなかったことはありました。

――木下さんがテニスを始めたきっかけはどんなものでしたか。

木下:とんねるずのスポーツ番組に錦織(圭)君が出ていて、それを見てお兄ちゃんが、近くの香里グリーン(テニスクラブ、大阪・枚方市にある)に体験レッスンに行くってなったんで、それについて行ったという感じです。自分もパッて入って、5歳の晴結の方がハマったっていう。ただお兄ちゃんが行くから、晴結がついて行っただけ。昔から体を動かすのが大好きで、いろんなスポーツが大好きだった。幼稚園の頃からずっと水泳をやってて、一応全部泳げます。あとは、友達とバド(ミントン)やったり、サッカーやったり野球やったり。(テニスは)ボールを使って、ラケットに当たるとかが楽しかった。

――木下さんは、10月27日に16歳になりました。現在、ITFジュニアランキングは30位(10月24日付)で、WTAランキングは713位(10月24日付)です。今後の目標や16歳で達成したいことを教えてください。

木下:グランドスラム・ジュニアでまずはベスト8だったり、結果を出して(ベスト)8や4など上位に進出できるように頑張りたい。それと共に、WTAランキングの方も上げていくっていうのがこの年(16歳)の大事なところかなって思っています。今、(WTA)ランキングが付いたんで、それをどれだけ上げていけるか。ジュニアとWTAの大人の方の大会の両立をうまくしていく年かなと思います。

ワールドスーパージュニアの女子ダブルスでは、1歳上の石井さやか(写真右)と組んで準優勝。大阪出身の木下は、カメラを向けるといろんな表情を見せたり、ポーズをとったりしてサービス精神旺盛
ワールドスーパージュニアの女子ダブルスでは、1歳上の石井さやか(写真右)と組んで準優勝。大阪出身の木下は、カメラを向けるといろんな表情を見せたり、ポーズをとったりしてサービス精神旺盛

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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