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女子テニスツアー最終戦・WTAファイナルズに、青山修子/柴原瑛菜組が初出場しトップチームの証しを刻む

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
青山(前列左から4番目)柴原(後列左から4番目)(写真Getty Images)

 青山修子(WTAダブルスランキング6位、11月8日付け、以下同)と柴原瑛菜(6位)が、女子プロテニスツアー最終戦であるWTAファイナルズに初出場を果たした。

 WTAファイナルズは、シーズン年間成績上位のシングルス8人とダブルス8チームだけがプレーを許されるエリート大会。いわば年間王者決定戦の舞台に、青山と柴原は立つことができるのだ。

 2021年シーズンに、青山/柴原組は、初めて世界のトップ10へ入る大活躍を見せた。WTAツアーでは、優勝5回(アブダビ、メルボルン、マイアミ、イーストボーン、クリーブランド)を記録し、特にマイアミではWTA1000グレードでの嬉しいビッグタイトル獲得となった。グランドスラムでは、ウィンブルドンでベスト4に進出し、初めてグランドスラム準決勝の舞台を経験した。ファイナルズ出場権を争うレースランキングでは5070点を獲得して2位となり、初の出場権を見事獲得したのだった。

「トップ8組しか出られないこの大会に出場できた自体、すごく光栄です。本当にここでプレーできることはすごく嬉しいです。なので、柴原選手としっかりいいプレーが出せるように2人で力を合わせて戦いたいなと思ってます」(青山)

「私たちも初めてなので、1年ずっといい試合をしてきたし、その自信を持ちながらここでいいプレーができるといいかな」(柴原)

 日本女子ペアでのツアー最終戦出場は、2002年WTAツアーチャンピオンシップス(アメリカ・ロサンゼルス)でベスト4に進出した杉山愛/藤原里華組以来、実に19年ぶりとなる。

 33歳の青山と23歳の柴原のWTAファイナルズ初出場は、シーズンをとおして世界のトップレベルで安定した成績を残してきた勲章であり、名実共に超一流のトッププレーヤーの仲間入りを果たした証しでもある。

 身長154cmの青山の前衛でのネットプレーは俊敏で、以前から定評があった。特に、彼女のポーチは大きな武器であり得点源であり、ツアー屈指の決定力がある。

 一方、身長170cmの柴原は、後衛での力強いグランドストロークが持ち味で、青山の前衛でのネットプレーをよりうまく引き出し、ポイントにつなげることができる。最近では、柴原が前衛にいる時のネットプレーにも磨きがかかり、チームとしてのポイント獲得力が上がってきており、ダブルスチームとしてのレベルを引き上げることに成功している。

 昨年は、新型コロナウィルスのパンデミックによってWTAファイナルズは中止となったが、2021年大会は、開催地を中国・深センからメキシコ・グアダラハラに移して開催にこぎつけた。

 ツアー最終戦では、試合前に、シングルス8人、ダブルス8チームがそれぞれ勢ぞろいし、選手各々がドレスアップして記念撮影をする恒例行事がある。青山も柴原も華麗に着飾って、初めてのフォトセッションに臨んだ。

「昨日(11月8日)パーティーに出させていただいて、(マルチナ)・ナブラチロワさんもいた。歴史ある大会で、改めてすごい大会だなぁと感じて、私としてはすごく感動しました」(青山)

「小さい時から、いつもWTAファイナルズでみんながドレスアップして写真を撮っている印象が残っていた。今回は、私たちが写真の中に入れてすごく嬉しかったです」(柴原)

 WTAファイナルズは、通常のトーナメント方式と異なり、ラウンドロビン(総当たり戦、以下RR)方式で行われる。ダブルスでは、8チームを4チームずつの2グループに分け、RRでは各チーム3試合戦うことになる。

 ラウンドロビンは、負けて終わりのトーナメントと違って、たとえ1試合目で負けても、次に試合が控えており、チャンスも残っている。青山と柴原はどう臨むのだろうか。

「どういう感じなのか試合に入ってみないとわからないんですけど、トーナメントと違って、負けても勝っても次があるので、逆に思い切ってできるのかなと考えている。それが、いい状態につなげられればと」(青山)

「ラウンドロビンは初めてなので、一試合一試合2人でいいプレーを出して行って、頑張りたい」(柴原)

 各グループの成績上位2チームが準決勝に進み、Aグループ1位対Bグループ2位、Bグループ1位対Aグループ2位の組み合わせで試合をして、それぞれの勝者が決勝進出者となる。

 獲得できるランキングポイントも大きく、RRで1試合勝つごとに250点を得ることができる(RR1試合プレーするごとに125点)。さらに準決勝勝者に330点、優勝者に750点、全勝優勝なら最大1500点を獲得できる。

 RRで、青山/柴原組は第2シードが付いて、テノチティトラン・グループ(※テノチティトランは、旧アステカ王国の都。現在のメキシコシティ)に入り、第4シードのニコル・メリカー マルチネス(アメリカ)/デミ・シュールス(オランダ)、第5シードのサマンサ・ストーサー(オーストラリア)/ジャン・シューアイ(中国)、第7シードのダリア・ユラク(クロアチア)/アンドレヤ・クレパッチ(スロベニア)と同じ組になった。青山と柴原は、グループの顔ぶれの印象を次のように語る。

「いろいろ考えたりしますけど、結局考えないで一試合一試合やって、その先につながっていくのかなと、今思っているので。とにかく目の前の一試合を全力で戦うことが一番大事かなと思っています」(青山)

「やっぱりトップ8のチームなので、みんなチームとして強いと思うし、どの試合もタフだと思う。私たちのプレーで、今年いい結果がいっぱい出ているので、それを(自信として)持ちながら毎試合入りたい」(柴原)

 青山/柴原組は、大会初日の11月10日のデーセッション第2試合で、第7シードのユラク/クレパッチ組と初戦を戦う予定だ。

 1972年から始まった女子テニスツアー最終戦では、ダブルスで、ビリー ジーン・キング(アメリカ)、ナブラチロワ(アメリカ)、リンゼイ・ダベンポート(アメリカ)、マルチナ・ヒンギス(スイス)らといった錚々たるレジェンドが、現代テニスの歴史の縮図と言えるようなこの大会にその名を刻んできた。

 果たして、青山と柴原が、WTAファイナルズ独特の雰囲気の中で、RRでの大事な初戦を制することができるか、さらに上位進出するような大きな活躍を見せるのかどうか大いに注目したい。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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