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プロテニス選手の尾崎里紗と日比万葉が、「Road to Wimbledon 2019」を振り返る

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
(写真はすべて神 仁司が撮影)
Road to Wimbledon 2019(日本予選)では、ウィンブルドングリーンと呼ばれるウィンブルドンと同じ色のカバーが壁に付けられている。尾崎里紗プロ(写真左)と日比万葉プロ
Road to Wimbledon 2019(日本予選)では、ウィンブルドングリーンと呼ばれるウィンブルドンと同じ色のカバーが壁に付けられている。尾崎里紗プロ(写真左)と日比万葉プロ

 14歳以下のジュニア選手を対象にグラスコート佐賀テニスクラブ(佐賀県)で開催されている「Road to Wimbledon 2019(日本予選)」(4月22~27日)。ここで勝ち残った男女ジュニア各2名は、8月11~17日に、ウィンブルドンの会場であるオールイングランドローンテニス&クロッケークラブ(以下AELTC)で開催される本大会「Road to Wimbledon 2019 FINALS」に出場することができる。

 日本では昨年から始まったユニークで貴重なこの大会に、ワールドツアー転戦中の合間を縫って尾崎里紗プロと日比万葉プロが、日本のプロ選手では初めて参加してくれた。

 イギリスから来日したAELTCのヘッドコーチであるダン・ブロックサム氏とマーク・ヒルトンコーチと一緒にテニスクリニックで指導したり、アドバイスをしたりして、ジュニア選手たちとの交流を深めた。そんな佐賀での初体験を、尾崎プロと日比プロが振り返ってくれた。

――初めて参加した「Road to Wimbledon 2019(日本予選)」はどうでしたか。

日比:「こんな若い時から、ウィンブルドンに関係している大会に参加できて正直うらやましいな(笑)。私がジュニアの時は、まだそういうのが無かったので、本当に初めて芝でやったのが、ウィンブルドン前の大会(前哨戦)でした。12歳ぐらいの時は、芝のコートすら見たことがなかった。(佐賀の)こんなにきれいで素晴らしいコートで、イギリスからコーチが来て見てもらえるなんてすごく(子供たちにとって)いい機会だなと思います。

(もし自分が14歳以下だったら)すぐに応募してました(笑)。勝ち上がれば、本当にウィンブルドンに行けるなんて、普通そんな機会なんてなかなかないので、本当にうらやましい」

尾崎:「ジュニアの時は、イギリスに行って初めて芝で練習するという形でした。他のコートと違って特殊なので、たぶん芝で学ぶことも多いと思います。小さい時にウィンブルドンへの意識をもってできるというのがすごくうらやましい。やっぱり子供のときに自分で夢を見つけられると、頑張れるエネルギーにもなる。テレビでウィンブルドンが流れる時に、現実的に自分が考えられるようになる。そういう意味でもこのイベントはすごくいいなと思います」

イギリスから来日したマーク・ヒルトンコーチ(写真左から3人目)と一緒に、ジュニア選手とのテニスクリニックに参加した尾崎プロと日比プロ
イギリスから来日したマーク・ヒルトンコーチ(写真左から3人目)と一緒に、ジュニア選手とのテニスクリニックに参加した尾崎プロと日比プロ

――お二人が抱くグラスコートの印象と、ウィンブルドンへの印象を教えてください。

日比:「芝は大好きです。テニスを始めた時から、私の夢がウィンブルドンで優勝することだったので、それを基準にして自分のプレーを作り上げていった。それをずっと目標にしています。あと、ジュニアの時に、ウィンブルドンで準優勝したことがあるクリス・ルイス(1983年男子シングルス準優勝者)に(練習を)見てもらったことがあるので、ウィンブルドンのすごさとか魅力とかを常に教えてもらっていました。ウィンブルドンの決勝まで行って戦った人が常に近くにいたので、自分も行きたいという気持ちがすごく強かったです。

 ウィンブルドンは、テニスで一番古い大会(1877年から)で歴史があって、全部白というドレスコードもある。(1873年から)イギリスでローンテニスが始まって、今のコートの大きさやルールが始まって、そういう歴史と文化が、唯一引き継がれている大会。テニスをやっている私たち選手たちにとっては、すごくスペシャルな大会です」

尾崎:「プレースタイルとしては、芝は得意な方ではないんです。2年前に初めてウィンブルドンの本戦の舞台に立った時に、やっぱり他のグランドスラムとは違った緊張感、上品というか凛としていて、高級感があります。会場の雰囲気もそうですし、コートに立った時にそういう感じがありました。それがすごく新鮮でした。そういったことが印象に残っています。テレビでよく見ますし、”テニスの聖地”でもあるので、やっぱりその舞台に立つというのは、すごく貴重な経験で、すごく嬉しかったですし、好きな大会の一つですね」

AELTCのヘッドコーチであるダン・ブロックサム氏(写真左から3人目)に協力して、クリニックでは、尾崎プロと日比プロがジュニア選手にストロークのお手本を披露した
AELTCのヘッドコーチであるダン・ブロックサム氏(写真左から3人目)に協力して、クリニックでは、尾崎プロと日比プロがジュニア選手にストロークのお手本を披露した

――お二人の今後の目標を教えてください。

日比:「どうしてもプロの世界に出ると、仕事であるがゆえに複雑な感じでテニスを見てしまうことが増えてしまう。子供たちを見ていると、本当に純粋にテニス選手になりたい、ウィンブルドンに出たいという夢があって、それに向かって頑張っている。自分も昔はそういう形でやっていたので、それを思い出すのもの大事かな。

 大きな目標は、もちろんウィンブルドンで優勝することです。それまでのステップとして、やっぱりグランドスラムの本戦で戦えるように、自分のテニスをしっかりつくり上げていきたい。ランキングはトップ100に入って、WTAとグランドスラム中心に回れるスケジュールが組めるようなランキングに持っていきたいです」

尾崎:「まず今年に、グランドスラムの予選に出られるランキングに上げて戦えるようにしたい。年間の目標としてはトップ100位近くまで行くことです」

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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