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錦織圭が、男子ワールドテニスツアー最終戦ATPファイナルズで、フェデラーから初勝利を挙げた本当の価値

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
ATPファイナルズで、フェデラーを破って幸先のいい1勝目を挙げた錦織。錦織がやってのけた大きな功績が、日本できちんと評価されることを願いたい(写真/神 仁司)
ATPファイナルズで、フェデラーを破って幸先のいい1勝目を挙げた錦織。錦織がやってのけた大きな功績が、日本できちんと評価されることを願いたい(写真/神 仁司)

 男子ワールドテニスツアー最終戦であるATPファイナルズ(11月11日~18日、イギリス・ロンドン・O2アリーナ)が開幕し、大会初日に、レイトン・ヒューイットグループのラウンドロビン(総当たり戦)の初戦で、第7シードの錦織圭(9位)が、第2シードのロジャー・フェデラー(3位、スイス)を7-6(4)、6-3で破って、幸先のいい1勝目を挙げた。

 ATPファイナルズは、年間成績上位8人しか出場できないエリート大会。テニスの4大メジャーと同等の大会とも言われている。

 そこで37歳のフェデラーは、大会史上最多となる6回の優勝を誇り、ラウンドロビン初戦では12勝3敗という抜群の好成績を残してきた。いわば、“最終戦マイスター”なのだ。

 そのフェデラーを、28歳の錦織圭が破ってみせた。

 これまで最終戦で錦織は、過去2度対戦したが、いずれも敗れていた。2015年大会ではフルセットにもつれたハイレベルなテニスをお互い披露したが、勝ったのはフェデラーだった。

 今回の対戦では、錦織もフェデラーもミスの多いテニスで、お互いベストテニスではなかったものの、錦織はついに勝って見せたのだ。内容が良くなかっただけに、錦織の表情は決して明るいものではなく、ボールが合わないとフェデラーを気づかうような様子も見られた。

 もちろん日本男子選手が、ツアー最終戦でフェデラーを破ったのは初めてのことだ。錦織は、こういう記録に全く興味を示さないが、大きな仕事をやってのけたというのは間違いなく、大いに評価したい。

 最近の日本の地上波テレビの情報番組は、ツアー最終戦の価値を、選手たちが残してきた足跡で判断せずに、高額な賞金額や高級ホテルや高価なスポーツカーで測ろうとする傾向が強い。何とも愚かなことだろうか。プロスポーツを、エンターテインメントと分別ができない実に稚拙で、短絡的なやり方だ。

 これでは地上波テレビの情報番組が、大会の価値を理解することは永遠になく、選手たちへの本当の評価もできないのではないだろうか。本当の価値を知ることのできないテレビ制作によって、日本の視聴者にも本当に価値ある情報が伝わらないことは不幸なこととしか言えない。

 もっとも視聴者やファンの方が賢明で、冷めた目でテレビ情報番組を見たり、あるいは見る価値がないと選別できていたりする。

 ツアー最終戦でフェデラーを破った錦織を、皆さんそれぞれのメディアリテラシーをもってきちんと評価してもらえれば、こんな嬉しいことはない。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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