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尾崎里紗2017インタビュー Part2 思い出のUSオープンテニスで、グランドスラム初勝利を果たす

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
2017年シーズンに、尾崎は、グランドスラム4大会すべてに出場を果たし、世界ランキングも自己最高の70位を記録した。2018年の活躍も楽しみだ。(写真/神 仁司)
2017年シーズンに、尾崎は、グランドスラム4大会すべてに出場を果たし、世界ランキングも自己最高の70位を記録した。2018年の活躍も楽しみだ。(写真/神 仁司)

 現在、日本女子テニスの中心的な存在の一人である、尾崎里紗は、2017年シーズンに、テニス4大メジャーであるグランドスラム4大会すべてで出場を果たした。

 8月下旬には、グランドスラム第4戦のUSオープンで、念願のグランドスラム初勝利も手にした。グランドスラムでは、4回目の出場にして、嬉しい初勝利をつかみ取った。

――(4月からの)クレー(土)シーズンになってなかなか勝ち星に恵まれませんでした。ハードからクレーへの切り替えがうまくいかなかったのでしょうか。

尾崎:クレーは、ジュニアの頃から得意じゃなかったけど、最近は苦手意識がなくなってはいた。クレーではちゃんと組み立ててオープンコートをつくるような展開をしないと、なかなかポイントが取れない。しかもコートの球脚が遅いし、ヨーロッパの選手は粘り強くてうまいので、自分のポイントパターンがちゃんと作れない。逆に、いつも私がしている粘り強いプレーを相手にされて、自滅というか早くポイントを取りたいから、厳しい所を打っちゃったり、体力がつきて(ボールを)追えなかったり、バランスを崩してミスをしたりした。

 私は、前後の動きが苦手なので、甘いボールが来ても、クレーだとボールのバウンドが高いので、上がりきった所で打とうとするとボールに力を伝えることが難しくなってしまう。前への動きが遅くて、相手の角度を取られたボール(ショートクロスやドロップショット)が取れなかったりする。

――グランドスラム第2戦・ローランギャロスでもデビューも果たしました。ブシャールの調子が良くなく、試合出だしも悪く、十分尾崎さんにも勝機はあったように見えましたけど、振り返ってどうでしたか。

 1回戦 6-2、3-6、2-6 ユージェニー・ブシャール(57位、カナダ)

尾崎:私にチャンスはあったと思うんですけど……。ブシャールの出だしが悪かったけど、私にしては珍しくスタートがよかった。第1セットで、私が5-0にした後ぐらいから、ブシャールのプレーが良くなり始めて、サーブも良くなって、第2セットからは相手のミスが減り始めた。私は、第1セットでは、ドライブボレーに行っていたんですけど、試合が進むにつれて前に出なくなり、ストロークの精度も落ちた。私はクレーでストローク戦を展開するのができていなかったし、さらにネットプレーが減ってしまうと、なかなかポイントにつなげるのが難しかった。試合中には気づけていなくて、試合後にそのことを聞かされて、確かにそうだなと思った。

――グランドスラム第3戦、テニスの聖地といわれるウインブルドンの舞台にも初めて立ちました。グラス(天然芝)では、ずっと尾崎さんがやりにくそうにしていて、対戦相手の方が一枚上手でした。

 1回戦 6-7(5)、6-2、3-6 デニサ・アレルトバ(107位、チェコ)

尾崎:相手はフラット系で打ってきて、グラスなのでボールが滑ってきたので、すごくやりづらかった。逆に、私が打つトップスピンのボールが、グラスだとあまり高く弾まないので、どうしても低いボールの打ち合いになってしまって、とにかく難しかった。正直、自分が押されている感じで、最後は相手にきっちり打たれてしまった。

――ローランギャロスもウインブルドンも、尾崎さんが1セットを取りながら、グランドスラム初勝利には結びつけることができませんでした。

尾崎:全豪で硬かったのと比べれば、フレンチとウインブルドンでは力はまぁまぁ発揮できていたかなと思う。でも、1勝はしたいとも思っていたので、セットを取りながら負けたのが続いて、焦りというか、勝てるかなという思いはあった。

――夏頃から、前年のランキングポイントを守らなければいけない状況でしたが、頭のどこかにありましたか。それとも気にしないようにしていましたか。(昨年尾崎は、WTAワシントンD.C.大会でベスト8、WTA南昌(中国)大会でベスト4だったが、1年が経過すると、ランキングポイントが消滅することになっている)

尾崎:あまり考えていませんでしたけど、ちょっとプレッシャーは感じていたと思います。ウインブルドンの後、夏頃からあまり体調が良くありませんでした。ちょっと貧血ぎみになることが続いて、息切れとかもひどくなってきて、すぐばててしまって、あまりいい練習ができていなかった。その時は、貧血ぎみだと分かっていなかったんです。血液検査をなかなかできなくて、最近になって初めて自分の状態を知りました。とにかく夏のハードコートシーズンでは、テニスの面でもあまりうまくいっていなかったですね。

――グランドスラム第4戦・USオープンもデビューを果たし、テニスの4大メジャー大会全出場を果たしました。ドローもよく今度こそグランドスラム初勝利を狙えるという感じだったのではないでしょうか。

尾崎:あの時、全然自分のボールが走っていなかったと思う。あんまり思ってはいけないと思ったんですけど、ドローが決まって、相手が予選上がりと知って、このチャンスを活かさないと、苦手意識じゃないですけど、(グランドスラムで)1回勝つことが気持ち的に、なんか難しくなるなとは思ったので、絶対勝ちたいとは思っていた。

――グランドスラム初勝利への道は険しかったですね。1回戦では、相手の5回のマッチポイントを跳ね返し、3時間2分の激戦の末、勝利をもぎとりました。

 1回戦 6-3、6-7(5)、7-6(5) (Q)ダニエレ・ラオ(219位、アメリカ)

尾崎:結構やばかったですね(苦笑)。3回目のマッチポイントでしたっけ、私、足が引っかかって、こけたんですよね。これは本当にやばいとその時は思いました。体力的にきつかったし、負けるかもと思った。何とか粘って粘って勝てました。相手も硬くなってましたね。本当にしんどかったので。勝った瞬間は苦しかったけど、何とか勝てたという嬉しさはあった。一番はホッとしましたね。でも、後からは反省ばかりでした(苦笑)。内容的に、全然思い切りできていなかったし、第2セットから(相手の)ミス待ちになってしまっていた。自分から勝ちに行けていなかった。

――2回戦では、尾崎のいい部分はほとんど見ることができませんでした。一方的に、シード選手に負けました。

 2回戦 0-6、3-6 第27シード ジャン・シューアイ(26位、中国)

尾崎:26位の選手と対戦して、まだまだと感じたというよりは、それ以前に私の問題ばっかりで、その試合に負けて何か得たものはなかった。自分のメンタルもそうだし、技術的にも、すべて自信なさげにやっていた。

――それにしても、ニューヨークで開催されるUSオープンは、尾崎さんにとってラッキープレースのようですね。

尾崎:どんな形であれ勝てたのは事実です。219位が相手でしたけど勝つには難しい部分もあったので、その中で勝てたのはよかったです。私は、ジュニアの時に予選から初めて本戦に出場(2009年)したのものそうだし、初めてグランドスラムの予選に出たのもUSオープン(2013年)ですし、今回もUSでグランドスラム初勝利をすることができた。やっぱりニューヨークのコートは好きなので、私にとってUSオープンは、ラッキーな場所ですね。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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