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尾崎里紗2017インタビュー Part1 日本女子テニスの中心的な選手の尾崎が、ツアーで存在感を示す

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
2017年シーズンに、尾崎は、グランドスラム4大会すべてに出場を果たし、世界ランキングも自己最高の70位を記録した。2018年の活躍も楽しみだ。(写真/神 仁司)
2017年シーズンに、尾崎は、グランドスラム4大会すべてに出場を果たし、世界ランキングも自己最高の70位を記録した。2018年の活躍も楽しみだ。(写真/神 仁司)

 現在、日本女子テニスの中心的な存在の一人である、尾崎里紗は、2017年シーズンに、テニス4大メジャーであるグランドスラム4大会すべてで出場を果たした。

 3月下旬には、グランドスラムに次ぐプレミアマンダトリーというグレードのマイアミオープンで、予選から勝ち上がって初めてベスト16に進出して、今シーズンのハイライトとなった。

 そして、世界ランキングも自己最高の70位を記録して、尾崎の存在を、ワールド女子テニスのWTAツアーに力強く示すことができた。

――2017年シーズンは、WTAランキング100位でスタートし、WTAツアー大会の予選からチャレンジしたり、グランドスラム4大会で本戦出場を果たし、ツアーレベルに挑戦した1年といえますが、振り返ってどうですか? 

尾崎:(WTA)ホバート大会(ベスト8進出)から始まって、わりとすぐにというか本戦でも勝てて、(シーズン)出だしでは行けるのかなと、そんなにすごい壁は感じなかった。それは、やっぱり私が100位に入ったばっかりで、私のことを知っている人(選手)もいるけど、そこまで知っている人は多くなかった中で、私の粘り強いテニスで勝っていけていた。

 (3月の)マイアミ(でベスト16)の後は、戦えているけど、なかなか勝ちにつなげられなくて、その辺りから壁を感じ始めた。

――1月のオーストラリアンオープンでは、グランドスラムデビューを果たしました。サラ・エラーニ(53位大会時、イタリア)に5-7、1-6で敗戦。尾崎さんのプレーが終始硬かったですね。

尾崎:やっぱりグランドスラムでの初舞台ということもあって、たぶん硬くなってしまったと思う。エラーニは、以前テレビで見た選手でしたし、(2014年)ローランギャロスで準優勝しています。最初私の体が全然動かないし、ラケットも全然思うように振れなかった。第1セットの終わりぐらいから、やっと体が動いてきたけど、終始硬かったと思う。

 (エラーニの粘りのプレーに)なかなかポイントが取れなくて、しんどかったです。

――尾崎さんのお兄さんや(尾崎が出身の)ロイヤルヒル‘81の皆さんも応援に来ていたので、もう少しいいプレーを見せたかったのでは。

尾崎:心強かったです。ずっと見て来てくれた人たちなので。私もその期待に応えたいというのは、ちょっとあったかなと思います。

――3月上旬のWTAインディアンウェルズ大会では、予選から上がって本戦1回戦へ。あの時はロジャー・フェデラー(ATPランキング2位、スイス)や錦織圭(22位)の試合を見て、イメージトレーニングができたんですよね。

尾崎:私が結構力んで、力づくでプレーしてしまうことがあるので、いつもどうやったらリラックスしてプレーできるのか、(ツアーに帯同する)川原努コーチと話し合ってやっています。フェデラーは本当にプレーが滑らかですし、全然力んでいる感じが無くて、軽く簡単に打っている感じが、テレビよりも実際に見る方がより感じました。どうリラックスして打っているのかを見て、(自分のプレーの)イメージにつなげた。

 マイアミの時は、2005年のフェデラーの動画を見ていました。今のフェデラーが腕や手首のしなりというか感覚がすごくて真似できないので(笑)。

 圭君は、フォアの展開とか前に入っていくポジションどりがすごく速くてうまい。私は、(ベースラインより)後へは行けるんですけど、なかなか前へ(ポジションを)入っていけない。圭君の守りから攻めへの切り替えの早さ、プレーの展開力が参考になりました。

――3月下旬のマイアミオープンでは、尾崎さんは、予選から勝ち上がってベスト16に進出しました。尾崎さんが大会時87位で、最初は予選を上がれるかどうかという感じだったので、ベスト16は大きな自信になったのでは。

尾崎:(予選を)上がれる自信とかはあまり考えていなかったんですけど、インディアンウェルズでの試合の後、コートがガラ空きだったので、現地でずっと練習をして、その時にフォアのいい感覚がつかめた。マイアミに入ってから、コートが合っていたのもあったんですけど、すごく感覚的に良くなった。絶対上がれるという自信はなかったけど、良くなりそうという感覚はあった。

 (予選)を上がれたのもそうですし、自分のテニスが良くなって勝てたのが自信になった。ただ単に上がっただけではなくて、自分でも手ごたえを感じて上がれたのが良かった。

  マイアミオープン2017での尾崎の勝ち上がり

  Q1R 6-3、6-3 カティエ・スワン(338位、イギリス)

  Q2R 7-5、6-0 第14シード ジュリア・ボザーラプ(97位、アメリカ)

  1回戦 3-6、7-5、6-1 ルイーサ・チリコ(63位、アメリカ)

  2回戦 6-4、4-6、6-1 第16シード キキ・バーテンズ(21位、ベルギー) 

  3回戦 7-6(5)、6-3 ジュリア・ゴルゲス(47位、ドイツ)

4回戦 2-6、2-6 第1シード アンジェリク・ケルバー(1位、ドイツ)

――タフな試合を勝ち上がりましたが、印象に残っている試合はありますか。

尾崎:2回戦は雨ですごく待たされて、試合前に眠気もあった(笑)。でも、チャンスだし、風が強くて、結構やりづらかった。バーテンズは、2016年ローランギャロスでベスト4の強豪選手ですけど、気後れすることはなかった。でも、あんまり覚えてなくて(苦笑)、無心でやるといい試合になることがある。良くない時は、いろいろ考えちゃって、本能的にやっていない。夜中の午前2時過ぎに試合が終わったのも印象に残っています(試合は23時47分に始まって、午前2時6分に終了した)。

――大きな大会で、トッププレーヤーと戦う状況で、体力やメンタル面で学んだことはありましたか。

尾崎:グランドスラムの次に大きな大会(マイアミオープンは、グランドスラムに次ぐプレミアマンダトリーという高いグレードの大会)で、勝ち進んで4回戦で、世界ナンバーワンの選手と戦えたのは、すごく収穫になった。でも、4回戦では、体の疲れもあって、気後れしてしまったところがあったのは反省点ですね。当然緊張はするんだけど、今後は気後れせずに、成長していけたらと思う。

 それと、今までにない感覚があった。歓声も多くて、トップの選手は、こんな気持ちいい環境でやっているんだな、と。そして、実戦が一番だなと感じました。試合を重ねて、いい試合をして勝つのが一番の自信になる。

――マイアミベスト16によって、尾崎さんは、3月のWTAブレークスルー・オブ・ザ・マンスに初めて選ばれたんですよね。そして、自己最高の70位を記録しました。

尾崎:嬉しかったです。こんな賞があるなんて知らなかったので。日本人だけではなくて、海外の人もちゃんと見てくれているんだとすごく感じました。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

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