Yahoo!ニュース

「グラムスリーの挑戦」Part2 女子選手参加の沖縄テニス合宿初開催&ツアーコーチ待遇改善の秘策とは

神仁司ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト
中央列左から、グラムスリー所属となった19歳の村松千裕、グラムスリーと契約した21歳の日比万葉(安藤証券所属)、2018年からグラムスリーと契約する23歳の尾崎里紗(江崎グリコ所属) (写真/神 仁司)
中央列左から、グラムスリー所属となった19歳の村松千裕、グラムスリーと契約した21歳の日比万葉(安藤証券所属)、2018年からグラムスリーと契約する23歳の尾崎里紗(江崎グリコ所属) (写真/神 仁司)

 株式会社グラムスリー(代表取締役 坂本明氏)が、新たにスポーツマネジメント事業を開始したが、その関連の活動として、日本女子プロテニス選手ら参加の沖縄テニス合宿が、12月22~24日まで沖縄・ユインチホテル南城などのテニスコートで初めて開催された。

 今回の合宿に参加したのは、30歳のベテランで、ダブルス世界ランキングで現在日本女子最高位の青山修子(WTAダブルスランキング29位、12月18日付け、近藤乳業)、21歳の日比万葉(WTAランキング234位、安藤証券所属、グラムスリー契約)、19歳の村松千裕(408位、グラムスリー所属)、23歳の尾崎里紗(119位、江崎グリコ、2018年よりグラムスリー契約)、18歳の山口芽衣(730位、Fテニス)、15歳のカジュール オヴィ アンジュ(1229位、TEAM UKA)だ。

 PR会社であるグラムスリーが、選手合同合宿を企画し開催するというのは、とてもユニークで新しい試みだが、そもそも、その発想はどのようにして生まれたのだろうか。坂本氏は、日比と一緒に海外を転戦する尾崎文哉コーチとディスカッションをする中で、沖縄合宿のアイデアがフッとわいたと振り返る。

「文哉くんとは、万葉ちゃんのこと以外でも、クラウドファンディングをやってみようとかいろいろなことをいつも話しているんです。そんな中で、今、尾崎里紗ちゃんと契約の話をしているんですけど、(尾崎のコーチの)川原(努)くんと文哉くんとで話しているうちに、みんなで合宿をやるのがいいんじゃないかということになった。僕も、今までそういう試みがないんだったらやってみましょう、ということでスタートさせました」

 果たして合宿が選手達にとって、有意義なものになるかどうか、開催前に確固たるものがあるわけではなかったが、最初はそういうものだと坂本氏は割り切り、たとえ実験的な試みであっても、まずやってみることが大切だと考え実行に移した。

 尾崎コーチは、中国・上海でコーチ業をやっていた経験もあるが、若手日本選手を中心にチームをつくって合宿することの意義を強く感じている。

「プロなって、(世界ランキング)300番、400番、500番ぐらいの選手が一番大変で、そこに対してサポートしていきたい。その思いを一つの形にしてみたいということで、自分の知り合いのコーチにもお声がけして、選手に役立つことがあるんじゃないかと思い、とにかくいろいろな方にお声がけさせていただいて、こういう場(合宿)を設けてみました」

 プロテニスのツアーコーチは、プロテニス選手に雇ってもらうのが基本的な形態で、極端な話、選手に不必要だと判断されれば、契約を解除されてしまう不安定な要素をはらんでいる。

 今回、尾崎コーチは、グラムスリーの社員になることによって、ツアーコーチの不安定な要素を軽減できることになった。日本ではまだまだ少ない事例だが、グラムスリーは一つのロールモデルを掲示してみせた。

「選手もコーチも企業も、すべてがウィンとなるような関係をつくっていきたい、という坂本さんの思いによるものです。まず選手を育成するためには、コーチがしっかりした生活基盤を築き、精神的なストレスを除いた中で、選手に集中してコーチをしてほしい思いが坂本さんにあった。そこから社員という形をとらせてもらった」

沖縄合宿での練習で、日比にアドバイスをする尾崎コーチ(写真右)
沖縄合宿での練習で、日比にアドバイスをする尾崎コーチ(写真右)

 その新たな境遇の中で、尾崎コーチは、「微力ですけど、万葉ちゃんを(ランキング)二ケタになる選手に育てていきたい。2人で何が正解かわからない中、試行錯誤しながら一緒に戦っていければなと思っています」とコーチ魂を燃やす。

 今回の沖縄合宿に参加した選手達も、それぞれ有意義な時間を過ごし、新たなモチベーションを見出した。

 尾崎コーチと練習に参加した日比は、新たなスタートが切れたようで目を輝かせた。

「強い選手に囲まれて練習できる機会って、大会以外ではあまりない。すごくいいプレッシャーを感じながら、自分ももっと頑張らないと、というモチベーションができて、いつもよりクオリティーのいい練習ができているなとすごく感じた。そういう練習を続けていければ、上達するのも早くなるだろうなって、合宿に参加している選手も、たぶん同じようなことを感じているんだろうなと思っている。こういう環境をつくることで、みんな一緒にどんどん強くなっていけるんだろうなと感じました」

 また、村松も自分より世界ランキングが上の先輩選手たちとボールを打つことで収穫があった。

「試合でもなかなか当たれないような強い選手と一緒に練習できることで、目で見て、どういう意識でやっているかを間近で見れて、私もすごく刺激になって練習できている。今回、こういう機会をつくってくれたことに本当に感謝しています。

 私も、昨年試合に出てたくさん課題が見つかったので、そういうことも周りの選手からしっかり学んで、来年に向けて準備できればいいなと思っています」

 また、今回は選手合宿のほかにも、沖縄現地で地域貢献の一環として小・中・高生を対象にしたテニスクリニックや、選手を対象にした管理栄養士による栄養指導も行われた。

沖縄で開催されたテニスクリニックで、子供たちに手本を見せる尾崎(写真左)と、尾崎の海外転戦に帯同している川原コーチ(写真右)
沖縄で開催されたテニスクリニックで、子供たちに手本を見せる尾崎(写真左)と、尾崎の海外転戦に帯同している川原コーチ(写真右)

「合宿で何か得るものがあればと思っています。もし今回の合宿が、選手の皆さんやコーチの方々に意味のあるものになるのならば、来年以降も継続的にやっていきたいなとも考えています」と坂本さんは、選手達の気合の入った練習風景を見ながら、グラムスリーとしての手ごたえを感じ取った。

「今後、こぞって選手達が、この合宿に参加したいと言ってもらえるといい」

 グラムスリーと世界の現場で戦う日本人コーチがアイデアを出し合って実現した今回の沖縄合宿は、新しい試みであるため、今後改善すべき点も出てくるであろう。だが、グラムスリーにも、コーチ達にも、選手達にも、新しい確かな一歩を踏み出せたのは間違いない。

ITWA国際テニスライター協会メンバー、フォトジャーナリスト

1969年2月15日生まれ。東京都出身。明治大学商学部卒業。キヤノン販売(現キヤノンMJ)勤務後、テニス専門誌記者を経てフリーランスに。グランドスラムをはじめ、数々のテニス国際大会を取材。錦織圭や伊達公子や松岡修造ら、多数のテニス選手へのインタビュー取材をした。切れ味鋭い記事を執筆すると同時に、写真も撮影する。ラジオでは、スポーツコメンテーターも務める。ITWA国際テニスライター協会メンバー、国際テニスの殿堂の審査員。著書、「錦織圭 15-0」(実業之日本社)や「STEP~森田あゆみ、トップへの階段~」(出版芸術社)。盛田正明氏との共著、「人の力を活かすリーダーシップ」(ワン・パブリッシング)

神仁司の最近の記事