いよいよ今週末に迫った「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 特別編集版」の「金曜ロードショー」での放送。

他局で放送され、アニメファンの間では有名ながらも「金曜ロードショー」で流れるには意外でもあった本作の放送決定には、発表当初から多くの注目が集まっています。

ご存知ジブリ作品や「ルパン三世」、「名探偵コナン」などでもお馴染みの「金曜ロードショー」のアニメ放送で、今何かが変わろうとしているのでしょうか。

「金曜ロードショー」プロデューサーの岩佐直樹さんと北條伸樹さんに、異例ともいえる放送実現の経緯や、本作をはじめとする近年のアニメ放送にかける想いを、前後編にわたり伺っていきます。

■「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」放送の経緯

ーまずは今回、「金曜ロードショー(以下「金曜ロード」)」で「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を放送することになったきっかけをお聞かせいただけますでしょうか。

岩佐:「金曜ロード」はゴールデンタイムの番組なので、アニメに限らず家族全員で楽しめる作品ということを大前提に放送作品を選択しています。

そこに加えて、近年アニメがますます盛り上がる中、誰もが知っている作品だけじゃなく、アニメファンには有名だけどまだ広くは知られていない、けど幅広く楽しんで頂けるような作品も放送していきたいと思ったのがきっかけのひとつです。

ー昨年7月に放送された「聲の形」への反響も後押しとなったそうですね。

岩佐:「聲の形」も同じ想いから、ある意味挑戦ではありましたが放送させていただいた作品でした。

人気の漫画原作や高校生の青春物語という間口の広さがあり、その上で京都アニメーション(京アニ)さんの手掛けるあの映像美ですので、まだ知らない層にもきっと楽しんでいただける作品だと思ったんです。

実際に反響も大きかったですし、その流れもありまして、今回同じ京アニさんの作品である「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の放送にも繋がりました。

ー同じ京アニ作品の中でも、今回「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」が選ばれた理由は何だったのでしょうか。

岩佐:“まだ広くは知られていない”といっても、アニメファンに限らず、みてもらえれば老若男女問わずに感情移入ができて楽しめる、「金曜ロード」のいつものお客さんに届く作品なのかな、と思ったところがあります。

北條:それと「金曜ロード」で時々やっているリクエスト企画の中でも「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」がみたいという声が少なからずありまして、そうしたところからもニーズを感じていた作品だったんです。

(c)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会
(c)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

ー今回は、劇場公開された「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 -永遠と自動手記人形-」に加え、テレビシリーズの特別編集版が放送されることも話題になっています。放送実現の経緯はどのようなものでしたか。

岩佐:「金曜ロード」ということで、最初は劇場公開された外伝を窓口のABCアニメーションさんから提案がありましたが、本作をみるからには、テレビシリーズをしっかりみてもらった方が視聴者にとっても映画にとってもいいんじゃないかと思い、京アニさんに監修を頂く形で、特別編集版の放送実現に至りました。

北條:実は自分は、外伝と、昨年公開された「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を先にみていて、テレビシリーズは後からみたという人間でした。

なので外伝も独立した作品として楽しめることはもちろん知っていたのですが、それでもやっぱりテレビシリーズをみてからの方が何倍も楽しめると、作品を100%の状態でみてもらうためにも、事前に特別編集版を放送したいと思ったんです。

ーテレビシリーズ→外伝→劇場版と発表されてきたシリーズの、今回は外伝までの放送となります。今後、今挙がりました劇場版も放送したいという考えはあるのでしょうか。

北條:もちろんあります。まだあくまで我々の、今後の希望という段階ではありますが、気持ちとしては「金曜ロード」の中でも、シリーズ完結までみてほしいという想いです。

■「金曜ロード」のアニメは何かが変わったのか?

金曜ロードショーロゴ
金曜ロードショーロゴ

ーこれまでも様々なアニメを放送されてきた「金曜ロード」ですが、番組におけるアニメの位置付けは、どういったものなのでしょうか。

岩佐:これまでの、ジブリ作品や「ルパン三世」、「名探偵コナン」シリーズなどの放送をみても分かります通り、アニメは元々「金曜ロード」の柱のひとつです。

加えて、自分は3年程前に「金曜ロード」の担当になる前、テレビアニメと映画事業部で、10年ほどアニメ製作の現場にいた経緯がありまして、個人的にもアニメで更に新しいことができたらな、という想いがありました。

そうして実際に「金曜ロード」にきてみると、北條をはじめ、アニメを盛り上げていこう、広げていこうというポテンシャルがあるのも感じましたね。

ーそのポテンシャルもあってか、今回の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」をはじめ、アニメファンの間では最近のアニメ作品の放送ラインナップに新鮮さを感じるという声もあります。実際に、何か大きな方針の変化などがあったのでしょうか。

岩佐:いい作品があれば放送するというのは常にありますので、そういう意味では、むしろアニメ作品自体がここ最近充実しているのもあると思います。

とはいえ、「金曜ロード」の長い歴史でいいますと何かが大きく変わったという意識はなくて、そもそも「風の谷のナウシカ」を最初に放送した80年代とかも、今と同じ状況だったと思うんです。(※初放送は「金曜ロード」枠ではなく特別枠として放送)

当時から既に評価の高い作品ではありましたが、今と比べたらまだ一般的には宮崎駿監督のお名前も浸透していた訳ではありませんし、そうした中で、恐らく当時の担当たちが『これはもっと広くみてもらうべき作品だ』と思ったからこそ放送したんだと思います。

ー確かに、今となってはアニメファン問わず誰もが知っていますが、初放送は“そうなる前”に行われた作品でした。

岩佐:それでいうと、細田守監督の「時をかける少女」も、日テレで最初に放送したのは、「サマーウォーズ」の公開時に「金曜ロード」ではない枠でしたが、まだ「サマーウォーズ」がヒットする前の、一般的には細田守監督はまだまだ知られていないという中での放送でした。

「エヴァンゲリオン」シリーズも、「新劇場版:破」の公開時に前作「:序」を放送したのが最初ですが、主題歌や遊技機等で一般的な知名度もあったものの、作品としては今よりもコアな盛り上がりであったときの放送だったと思います。

そうしてそれぞれの時代で担当者が、単に有名かどうか、国民的・世界的かどうかではなく、作品として広くみてもらうべきものを放送してきた歴史があったと思うんです。

そして今、新たに広くみてもらいたい作品が生まれていて、それを「金曜ロード」からお届けしたいとなってきているんだと思います。

ー変化というよりも、むしろずっと番組の軸にある想いに基づいたラインナップだったのですね。そうして変わらないものがある一方で、配信の普及など、長年続く「金曜ロード」をとりまく環境は変化してきています。その中で、「金曜ロード」がアニメを広く放送する価値は、どのようなところにあると思いますか。

岩佐:配信が定着してきた中で、「金曜ロード」のように地上波でゴールデンタイムに放送させていただく意義って、レコメンド機能ともまた違う、普段だったらなかなか触れるチャンスのないような作品との出会いを提供できることかなと、これはアニメに限らずですが思っています。

その意味でも、今回の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は特別編集版から流させていただくので、本作を知らなかった人や普段アニメをあまりみない人にとっても、この放送が作品との出会いの場になったらいいなと思いますね。

■「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」放送外での新しい取り組み

ー現在公開されている『3分でわかる「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」』は、そうした本作を初めて知る方々への導入になっていますね。

北條:そうですね。また今回それを作って良かったのが、ファンの方が作品をオススメする際に『こういうのがあるよ』と、この動画を使ってくれて、そうやって活用していただけているのもすごくありがたいなと思います。

ー近年アニメのヒットにおいても、そうしたファンによるオススメ、いわゆる“布教”はかなり重要になってきています。今回の著名人による推薦コメント も、そうした点を意識された取り組みだったのでしょうか。

岩佐:今回、こちらがそれを狙ってお願いしたというよりは、そもそも自発的に作品を広めたいと思っていた皆さんが、「金曜ロード」での放送をきっかけにコメントを預けてくださったように感じました。

コメントをいただいた東野幸治さんも、ハライチの岩井勇気さん起点の、いわば布教を経ていろいろなところで熱く語るくらいハマられた方ですし。

あと、手前味噌と言われるかもしれませんが、日テレのアナウンス部の中でも、実はそうした布教の輪が出来ていることを知りまして、中島芽生を起点に、元々アニメファンの伊藤遼が『ほんとにいいからみて』と薦めた結果、普段アニメをみない水卜麻美がみて感動したというエピソードがあったんです。

今回コメントをもらった人達も、そうして誰かから薦められたり、その後『メイクさんに紹介しました』とか、みんなそうしたエピソードをもっていたので、むしろ推薦コメントを通して、こうして広がっていく作品なんだなというのを改めて感じましたね。

今回の「金曜ロード」での放送をきっかけに、それがさらに大きな輪になっていけばいいなと思います。

ーそうした取り組みや今回の放送に対する視聴者からの反応は、「金曜ロード」側としてはどのようにみていますか。

岩佐:元々「金曜ロード」でのアニメ放送は特にSNSとの親和性が高いと思っていたのですが、今回の「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」への反応も既にすごく大きいです。

Twitterを中心に、放送が決まるとファンの人達が自ら『これ素晴らしいからみんなにみてほしい』と、どんどん情報を広げてくれているのを感じています。

そうした形で、ファンの後押しを受けながら作品を多くの人にみてもらえるのはすごく良い形だと思いますし、ありがたいです。

異例の放送の実現は、方針の変化ではなく、むしろ連綿と続く「金曜ロード」のコンセプトに基づくものでした。後編では、そうした放送の“外”で行われているSNS等を介した新たな取り組みや、今後の「金曜ロード」におけるアニメ展開への展望をお聞きしていきます。