女性ファン=BL好きとは限らない?:知っておきたい誤解と地雷

(写真:アフロ)

大好評公開中の「劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~」や、現在放送中のアニメ「ギヴン」など、近年男性同士の多様な関係性や恋愛模様を描いた作品が、広く一般的にまで楽しまれるようになってきました。

かつては一定のファン層にこっそりと親しまれていたジャンルが、それ以外の人たちにまで受け入れられるようになり、純粋に作品の面白さが評価されているのはすごいことだと思います。

しかしその一方で、一般化したばかりの分野なだけに、偏った知識だけが伝わり、思わぬ誤解が生じてしまうこともあるようです。

◆女性ファン=みんなBLが好き?

(※BL=ボーイズラブの略、男性同士の恋愛描写を総称して使われることが多い)

中でも特に極端なのは、女性ファン=腐女子(みんなBLが好き)?という誤解です。

上記のような作品が一般化してくるのに伴って、”BL”や”腐女子(※BLを嗜好する女性)”という言葉も市民権を得るようになりました。

その影響もあってか、女性ファン、特にアニメファンなどは、「みんなこういうの(いわゆるBL描写)が好きなんでしょ?」と思われたり「女性向け作品=腐女子コンテンツ」と言われたりすることが多々あるのです。

確かに女性向け作品にそういった描写が多かったり、一定の受容があることは間違いありませんが、ひとえに女性ファンといっても、全員が全員腐女子という訳ではありません。

BLが苦手な人ももちろんいますし、作品の楽しみ方や嗜好は、同じ作品が好きな女性ファン同士であっても実はかなり多様で複雑なのです。

◆女性ファンの3属性

かなり簡略化したものではありますが、女性ファンが作品を楽しむとき、その属性は主に”原理主義”と”腐女子”と”夢女子”の3つに分かれると思います。

”原理主義”は読んで字のごとく、作品をそのまま楽しみたいという人で、”腐女子”は主にBL設定やBLパロディを楽しむ人、”夢女子”とは、主に好きなキャラの相手役に自己投影して、恋愛シミュレーションゲームのような設定を楽しむ人のことです。

イメージ図(筆者作成)
イメージ図(筆者作成)

しかし全ての女性ファンがこの3属性にはっきりと分かれるのかというと、そういう訳でもありません。

図で表したように、原理主義兼腐女子、腐女子兼夢女子、夢女子兼原理主義といったどちらの楽しみ方もできるという人もいれば、3つの属性のどの楽しみ方もできるという人もいます。

一方で、BLは絶対に受け付けられないという人もいますし、人によっては属性が作品毎に変わるので、あの作品では腐女子的な楽しみ方もできるけど、この作品ではBLが”地雷(※避けて通りたい・触れるとダメージを受けてしまうほど苦手な物事のこと)”ということがあったりと、その楽しみ方や属性は人や作品によって違い、かなり複雑なのです。

こうした細かい属性の違いから、例え同じ作品が好きな人同士でも、お互いの嗜好がわかるまでむやみにBLの話はしないというのが女性ファンの間では暗黙の了解となっています。(余談ですが、”BL"や”腐女子”という言葉が市民権を得たというのも、一般的に使われるようになったというだけで、逆に腐女子当人がそういった直接的な言葉を使っているところはあまり見たことがありません)

◆話題になることが増えてきたからこそ

少しややこしく思えますが、要は女性ファンだからといって”みんなが腐女子でみんながBL好き”ではないということです。

大袈裟な例えではありますが、「この作品のファンなら腐女子」とういのは「浦和レッズのサポーターなら全員埼玉県民」というくらい極端ですし、「女性ファンならこういうの(いわゆるBL描写)が好きなんでしょ?」というのも、巨人ファンに向かって「野球が好きなら阪神も好きでしょ?」というくらい極端で、人によってはかなりの地雷にもなりかねません。

女性ファン同士であっても相手の地雷を踏んで争いが生じてしまうこともあるので、複雑な属性の全てを理解するというのは到底無茶な話ですが、女性に人気の作品や男性同士の恋愛描写が含まれる作品の話をするときに「そういう要素が苦手な人もいる」と、頭の片隅に置いておくだけでも、地雷を踏んでしまう確率は少なくなると思います。