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セレブ専用の抜け道があったニューヨークの5つ星ホテル、ザ・カーライルの秘密とは?

清藤秀人映画ライター/コメンテーター

 ニューヨークの5つ星ホテルと言えば、数々の映画の舞台になってきたザ・プラザ、同じく、セントラルパーク・サウスにあるザ・ピエール、コロンバスサークルにそびえ立つマンダリン・オリエンタル、ダウンタウンのランドマーク、ザ・ソーホー・グランドetc。しかし、同じ5つ星でも"セレブの隠れ家"という格別に名誉ある称号を授かっているのが、市内でも最も高級と言われる地域、セントラルパーク・イーストに佇むザ・カーライル・ローズウッド・ホテルだ。話題のドキュメンタリー「カーライル ニューヨークが恋したホテル」を観ると、同ホテルがなぜセレブ御用達なのかがよく分かる。例えば。

ザ・カーライルはアッパー・イーストサイドの顔
ザ・カーライルはアッパー・イーストサイドの顔

かつてはケネディとモンローの逢い引きの場所だった?

 1962年の5月19日、時のアメリカ大統領、ジョン・F・ケネディの45歳の誕生日祝賀会がマジソン・スクエア・ガーデンで行われた際、祝賀会に出席したマリリン・モンローが大統領に向けて、"ハッピーバースデー・ミスタープレジデント"と艶っぽい声で歌ったのはご存知のはず。そんな2人が秘密のデート場所に使っていたと言われるのがカーライルだ。映画では、モンローが誰にも気づかれずホテルに入るための秘密のトンネルがあったという、セレブ好きの耳がそばだつレアな情報もリークされる。ケネディ一家とカーライルの縁は深く、近所に住んでいたジャクリーン・ケネディ・オナシスはホテルのレストランで週2回、コブサラダ(野菜と七面鳥と固ゆで卵等をフレンチドレッシングであえたもの)とジントニックという定番ランチを楽しんだとか。また、1999年の7月、息子のジョン・F・ケネディ・ジュニアが小型飛行機事故で若くして亡くなる直前、生前最後の食事をとったのも、カーライルだった。

 イギリス王室とカーライルの縁も深い。故・ダイアナ妃を筆頭に、チャールズ皇太子やアン王女、ヨーク公、ウェセックス伯爵等が、ニューヨークの定宿として同ホテルを利用。2014年の12月、ウィリアム王子とキャサリン妃が初めてニューヨークを訪れた際、やはりカーライルに予約を入れたことは言うまでもない。アールデコ調で統一された館内のアメリカとは思えないヨーロッパ的な雰囲気、外の世界と完全に隔離された静寂が支配する空間の心地よさ、そして勿論、最良のホスピタリティが英国ロイヤル・ファミリーを代々リピーターにしたのである。

ジョージ・クルーニーはアマル夫人と3ヶ月連泊

スタッフ受けも最高な上顧客、ジョージ・クルーニー
スタッフ受けも最高な上顧客、ジョージ・クルーニー

 一流ホテルに求められる最良のホスピタテリィとは、顧客のニーズに最大限応えること。ちょっとやばい物でも欲しいと言われれば調達するし、秘密厳守はサービスの基本である。でも、カメラを向けられたルームサービスや給仕長たちは、口々に「それは秘密です」とか言って質問をはぐらかしつつも、本音は喋りたくて仕方がない様子だ。その代わり、セレブ本人がホテルとのディープな関わりについてとても楽しそうに語ってくれる。

 上顧客の1人、ジョージ・クルーニーは弁護士のアマル夫人とお気に入りのスイートルームに3ヶ月間連泊したと告白。彼のように世界中の1流ホテルを渡り歩くジェットセッターをして、「まるで家にいるようにくつろげる」と言わしめるカーライルのサービスの1つに、顧客のイニシャルを枕カバーに刺繍し、次に泊まる時までキープするという信じ難いサービスもある。また、館内には"ロジャー・フェデラー・スイート"というプレートがドアに貼られたスイートルームがある。フェデラーが毎年8月にフラッシング・メドウズで開催される全米オープンに出場する間宿泊する特別室だ。チェックインしたフェデラーがスタッフにこう声をかける。「今年も3週間お世話になりたいね」と。つまり、ファイナルまで残れればいいという意味だ。

カフェ・カーライル
カフェ・カーライル

 他にも、アンジェリカ・ヒューストンが仲睦まじかった頃のジャック・ニコルソンと泊まったときの想い出や、ソフィア・コッポラが映画を撮影中の父親、フランシス・フォード・コッポラと一緒に過ごしたときのエピソードを語る。また、監督のウェス・アンダーソンはホテル中にあるバー、ベーベルマンス・バーの壁に描かれたルドウィッヒ・ベーベルマンスの壁画から、「グランド・ブダペスト・ホテル」のアートワークを発想したと告白。また、カフェ・カーライルはウディ・アレンが仲間のジャズマンたちと一緒にクラリネットを演奏する場所として知られている。

ホテル予約サイトで予約も可能

 確かに、これ程も幅広い分野で活躍するトップ・セレブや王室関係者に愛用されるホテルは他にない。言い方を変えれば、カーライルは客を選ぶホテル。お金さえ払えば誰でも泊まれる5つ星ホテルとは違う泊める側プライドが、特別な価値を生んでいるのかもしれない。とは言え、エクスペディアで検索してみたところ、キングサイズ・ベッドのスーペリアルームが1泊約66000円で予約できる。次のニューヨーク旅行で試しに泊まってみてはいかがだろうか。映画では、かつて在りし日のマイケル・ジャクソンとダイアナ妃とスティーブ・ジョブスが同じエレベーター内で鉢合わせしたという震えるようなエピソードが紹介されている。その確率でいくと、もしかしたら、ジャスティン・ビーバーとキャサリン妃と孫正義にエレベーターで遭遇するかもしれないではないか!?

カーライル ニューヨークが恋したホテル

8月9日(金)よりBunkamuraザ・シネマ他全国順次公開

公式ホームページ http://thecarlyle-movie.com/

(C) 2018 DOCFILM4THECARLYLE LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

映画ライター/コメンテーター

アパレル業界から映画ライターに転身。1987年、オードリー・ヘプバーンにインタビューする機会に恵まれる。著書に「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社・刊)ほか。また、監修として「オードリー・ヘプバーンという生き方」「オードリー・ヘプバーン永遠の言葉120」(共に宝島社・刊)。映画.com、文春オンライン、CINEMORE、MOVIE WALKER PRESS、劇場用パンフレット等にレビューを執筆、Safari オンラインにファッション・コラムを執筆。

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