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海外ドラマに於ける性的マイノリティの描かれ方~FOXレインボーアワー~

清藤秀人映画ライター/コメンテーター
レディ・ガガ@アメリカン・ホラー・ストーリー

昨今の海外ドラマで単に1つの役柄には収まらず、物語の核になったり、テーマを担うこともあるゲイ・キャラクター。その背景には昨年6月、アメリカの連邦最高裁判所が事実上、同性婚の合法化を認めたこと等、社会背景の変化がある一方、ゲイを介することで物事の見方がダイヤモンドのカットのようにより多面的になるという脚本上のメリットも無視できない。そんな中、海外ドラマ、エンターテインメント専門チャンネルのFOXでは、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)にフォーカスした特別番組を、その名もLGBTのフラッグカラーに因んだ「FOX レインボーアワー」(4番組、5エピソード)と題して、7月23日から4夜に渡って放送する。

厳選された各エピソードを簡単に紹介しよう。

 Empire 成功の代償 
Empire 成功の代償 

「Empire 成功の代償 シーズン1」第1話「余命宣告」7月23日(土)19:00~20:00

ポイント→突然、余命宣告を受けた大手音楽プロダクション、エンパイア社のCEO、ルシウスの後継者の1人は、ゲイであることからルシウスから拒絶されている次男、ジャマルだ。

モダン・ファミリー
モダン・ファミリー

「モダン・ファミリー シーズン5」第1話

「プロポーズ大作戦」7月24日(日) 19:00~19:30

ポイント→カリフォルニア州で遂に同性婚が認められ、その日を待ち望んでいたミッチェルとキャメロンは互いに内緒で心に残るプロポーズ計画を練り始めるが。。。

「モダン・ファミリー シーズン5」第24話「キャムとミッチの結婚式2」7月24日(日) 19:30~20:00

ボイント→夢にまで見た結婚式は欠席者が出たり近くで山火事が発生したりで御難続き。理想とは程遠い現実に直面した2人は式の延期を決定する。

「glee」
「glee」

「glee シーズン6」第8話「結婚式の贈り物」7月30日(土) 19:00~20:00

ボイント→グリークラブのブリトニーとサンタナの結婚式に参列していた仲間のカートとブレインも同時にW同性婚。みんなが夢を実現していく。

「アメリカン・ホラー・ストーリー:ホテル」第3話「溺愛する母」7月31日(日) 19:00~20:00

ボイント→L.A.の街角にそびえ立つアールデコ調のホテル・コルテスに100年以上も棲み着く吸血鬼、伯爵夫人(レディ・ガガが怪演!)はバイセクシュアルという設定。

思えば、アメリカのドラマに初めてゲイを公言するキャラクターがレギュラーで登場したのは「ソープ SOAP」(1977~81/1978年9月より東京12チャンネル・現テレビ東京で放送)。コネチカットに住む2つのファミリーが各々、同性愛、浮気、性的不能、性的倒錯、色情狂等に纏わる際どい会話を連発する、言わば"アンチ・メロドラマ"とも呼べる同シリーズで、ビリー・クリスタル演じるジョディが恐らくドラマ史上初めてゲイをカミングアウトした人物だろう。以来、男性同士の過激なセックス描写が話題になったイギリス制作ドラマのアメリカ版リメイク「クィア・アズ・フォーク」(00~)、レズビアン同士の愛と確執を描いた「Lの世界」(04~)、そして、自らもゲイであることを公表しているクリエイター、ライアン・マーフィによる大ヒットドラマ「glee」(09~)、ゲイのカップルと彼らのために代理母を決意したシングルマザーの不思議な家族愛を綴る「New Normal おにゅ~な家族の形」(12~)、また、マーフィと同じくカミングアウト済みの脚本家、アラン・ボールの企画・監督作で、ゲイの葬儀屋が警官と恋に落ちる「シックス・フィート・アンダー」(01~)や、ゲイの吸血鬼が登場する「トゥルーブラッド」(08~)等、時代と共に登場人物のセクシュアリティも多様化の一途を辿ってきた。

前記の「トゥルーブラッド」を始め、「Sex and the City」(98~)や「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」(99~)等でテレビ界のタブーを次々破ってきたケーブルTV局、HBOの最新ヒット「ゲーム・オブ・スローンズ」(01~)にも王の末弟が義兄と禁断の愛を紡ぐというエピソードが。今月放送のFOX共々、ドラマの可能性拡大に貢献している。「Lの世界」で製作総指揮を務めたアイリーン・チェイケン(「Empire」も担当)はかつてドラマ撮影中のセットで、「我々が目指す道は未だ半ば」とコメントしたが、現時点では、恐らく違った風向きをその肌で感じ取っているのではないだろうか。

(C)2015 Fox and its related entities. All rights reserved. (C)2013-2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved. (C)2015-2016 Fox and its related entities. All rights reserved

映画ライター/コメンテーター

アパレル業界から映画ライターに転身。1987年、オードリー・ヘプバーンにインタビューする機会に恵まれる。著書に「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社・刊)ほか。また、監修として「オードリー・ヘプバーンという生き方」「オードリー・ヘプバーン永遠の言葉120」(共に宝島社・刊)。映画.com、文春オンライン、CINEMORE、MOVIE WALKER PRESS、劇場用パンフレット等にレビューを執筆、Safari オンラインにファッション・コラムを執筆。

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