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ビル・ベリチックの右腕的存在が、NFL海外選手育成プログラムに参加中の日本人選手を評価

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
NFL主催の海外選手育成プログラムに参加中の李卓(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 アメリカで最も人気のあるスポーツはアメリカンフットボールだが、世界的な普及度でみると、サッカー、バスケットボール、アイスホッケーに大きく劣るだけでなく、野球との差も大きい。

 NBA、NHL、MLBでは世界各国から選ばれた一流選手が鎬を削っているが、NFLはほぼアメリカ人選手で占められている。

 NFLは海外の選手に門戸を開くために、2017年から「インターナショナル・プレーヤー・パスウェー・プログラム(IPP)」と呼ばれる海外選手向けの育成プログラムを設けている。

 IPPの候補選手は、フロリダ州のIMGアカデミーで今月上旬から始まった10週間の特別キャンプに参加。そこで才能を認められると、シーズン中は特別練習生としてNFLチームの練習に参加できる資格を与えられる。

 今春のキャンプには、メキシコ、チリ、ニュージーランド、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オーストリア、そして日本の9ヶ国から11人が候補選手として参加している。

 IPP候補選手を対象にしたキャンプにアジア人選手が参加するのは、昨春の中国人選手に続いて、今回が2人目。日本から初めてIPP候補選手に選ばれたのは、オービック・シーガルズのランニングバック(RB)、李卓だ。

 IPPの選手は、NFLの8ディビジョンのうち、無作為に選ばれた1地区に所属する4チームに配属されて、海外練習生となる。各チーム1人のIPP選手を受け入れるので、4つの枠を巡る争いがIMGアカデミーでのキャンプで繰り広げられいる。

 昨季は10選手がIPP候補選手キャンプに参加して、メキシコのオフェンシブライン(OL)、ドイツのディフェンシブライン(DL)、オーストラリアのDL、オーストリアのRBの4選手がIPP選手に与えられる海外練習生枠を勝ち取った。

 海外練習生枠からNFL選手になる道は簡単ではなく、昨季までに24選手がIPPに参加しているが、公式戦に出場できた選手は2人しかいない。

 それでも、NFLスカウトの目に留まる機会がほとんどない海外出身選手にとって、IPPに参加できることは非常に大きなチャンスである。

ベリチック監督の右腕的存在が李を高評価

 今春のIPP候補選手キャンプは始まったばかりだが、選手評価に高い定評があるスコット・ピオリが、李に高評価を与えている。

 ピオリはビル・ベリチック監督がクリーブランド・ブラウンズの監督を務めていた1992年に選手人事部のアシスタントとしてNFLの世界に入り、97年にベリチックがニューヨーク・ジェッツに移ると、ベリチックはピオリをジェッツに呼び寄せ、選手人事部長を任せた。

 2000年にはベリチックと共にジェッツからニューイングランド・ペイトリオッツに移り、選手人事部の部長補佐を担当。翌01年には選手人事の責任者に昇格して、ペイトリオッツのスーパーボウル初優勝に貢献した。

 2002年から08年までは球団副社長として、ベリチックと共にペイトリオッツ王朝を築き上げるのに大きく貢献。

 その手腕を認められて2009年から12年まではカンザスシティ・チーフスでGMを務め、14年からGM補佐を務めたアトランタ・ファルコンズを16年シーズンにスーパーボウルへ導いた。

 ピオリはNFLで最も選手の能力評価に優れた人物だと言われている。

 アメリカで最も権威のあるスポーツ雑誌「スポーツ・イラストレイテッド」とスポーツ専門テレビ局のESPNは2000年から09年までの10年間の「最優秀チーム幹部」にピオリを選んだ。

 そのピオリがIPP候補選手キャンプで卓のプレーを見て、高評価を与えている。

 「練習生として2、3年鍛えれば、NFLで先発を争えそうな選手が2、3人いる」と今回IPP候補に選ばれた11選手の能力の高さに驚いたと言うピオリは、「タクは26歳(と年齢はかなり上)だが、練習を見ていると全てを100マイル(約160キロ)で行っている。スピードとクイックネスに優れ、バックフィールドでのボール捕球能力も高い。とても賢い選手でもあり、ブリッツ練習では相手ディフェンダーの動きをすぐに読み取っていた。サードダウン用のRBに必要とされる嗅覚と知性を備えている」と興奮気味にまくし立てた。

 今はテレビで解説者を務めるピオリは、今もリーグ内で一目置かれる存在であり、そんな人物から高評価を得たのはとても大きい。

 まずは11選手の競争を勝ち抜いて、4つの海外練習生枠を勝ち取ることが第一の目標となるが、ピオリを驚かせた常に全力で練習に取り組む姿勢を貫いていけば、2008年の木下典明(ファルコンズ)に次ぐ、日本人2人目となるNFLの海外練習生の座に近づけそうだ。

日本人で唯一NFLの海外練習生として1シーズンを過ごした木下典明(写真:三尾圭)
日本人で唯一NFLの海外練習生として1シーズンを過ごした木下典明(写真:三尾圭)

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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