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東京マラソンとは大違い! テロにも屈しなかったボストン・マラソンがバーチャルで開催へ

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
2018年ボストン・マラソンで優勝した川内優輝(写真:ロイター/アフロ)

 1897年に創設されたボストン・マラソンはオリンピックに次いで歴史があるスポーツイベントして知られ、戦時中でも毎年開催されてきた。

 この歴史ある世界的な大会は、2013年にテロ組織の標的となり、レース中にゴール付近で爆弾が爆発する事件が起こったが、テロに屈することなく大会は続いている。アメリカ独立戦争を祝う4月第3月曜日の祝日に開催されるが、今年は新型コロナウイルスのパンデミックで9月14日に延期すると告げられていたが、主催者からバーチャル・イベントにて行われると新たな変更が発表された。

 大会を主催するボストン体育協会のトム・グリルク代表は「地域社会と大会に携わる全員の健康を守ることが最優先される」とボストン・マラソンを『中止』にした理由を説明。参加者には参加費を全額返金する。

 ただし、そのまま大会中止で終わらせないのがボストン・マラソンの凄いところ。市内を走るレースは中止にするが、バーチャル・マラソンとして開催するとの代案も合わせて発表した。

 今年のボストン・マラソンに登録したランナーは、9月7日から14日の間に実施されるバーチャル・マラソンに参加して6時間以内に完走するとメダルなどの記念品が贈られる。

 バーチャル・マラソンの詳細はまだ発表されておらず、主催者側は後日発表するとしている。

 2007年のボストン・マラソンでは、国際宇宙ステーションに滞在していた宇宙飛行士のスニータ・ウィリアムズさんが宇宙から参加して、宇宙ステーションに設置されたトレッドミルの上で42.195キロを完走。史上初めて宇宙からランナーが公式参加したマラソン大会となったが、今回は史上初めてバーチャル・マラソンを開催する大会にもなる。

 また、日本人ランナーは1981年と87年大会を制した瀬古利彦など8人の男子選手がボストン・マラソンで優勝。最近では2018年に川内優輝が優勝している。

 その川内もツイッターで「今朝起きたら、ボストンマラソンから中止の連絡が入っていました」と報告。「9月に延期されたボストンマラソンを長期的目標にしてきましたが、目標をもう少し先のレースに修正する必要がでてきました」と今後のプランを練り直していく。

 124回目にして初の大会中止を決断したボストン・マラソンだが、ただ中止にするのではなく、バーチャル・マラソンにして伝統を保つと共に斬新なアイデアも取り入れる姿勢はさすがだ。

 今年のボストン・マラソン参加費225ドル(約2万5000円)は全額返金した上で、バーチャル・マラソンで6時間以内に完走したランナーにはメダルと記念品を贈る。また、2021年度の大会への参加資格も与えると言う。

 対照的に今年3月1日に開催された東京マラソンは一般の部を中止して、エリート部門のみ決行。1万6200円(海外からの参加者は1万8200円)を払った約3万6000人の一般ランナーへの返金はなかった。もちろん、ボストン・マラソンのような参加者を楽しませるバーチャル・マラソンみたいな企画もなく、東京マラソン参加を楽しみにしていた一般ランナーたちは腑に落ちない気持ちになった。

 2007年に始まった新興マラソン大会の東京マラソンは、世界最古のマラソン大会から学ぶべき点はまだまだ多そうだ。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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