ワールドシリーズMVP・ストラスバーグ。次のミッションは故郷の球団を世界一に導くことか?
今秋のワールドシリーズでワシントン・ナショナルズを球団初のワールドチャンピオンに導いてMVPに輝いたスティーブン・ストラスバーグ。
今プレーオフではワールドシリーズでの2勝無敗、防御率2.51を含めて5勝負けなしと圧巻のパフォーマンスで、首都ワシントンDCに初のワールドシリーズ・トロフィーを与えた。
ワシントンDCで優勝パレードが行われた11月2日、優勝の立役者であるストラスバーグは残りの契約を破棄してフリーエージェントとなることを宣言した。
2016年5月にナショナルズと7年総額1億7500万ドル(189億円)で契約延長を結んだストラスバーグだが、3年目の契約が終わる今オフに残り4年間の契約を破棄してFAとなれるオプションが付けられていた。
ストラスバーグの残り契約は4年間で1億ドル(108億円)。ワールドシリーズMVPを手にしたストラスバーグはそれ以上の契約を得られると判断して、FA権利行使に踏み切った。
FAとなったストラスバーグだが、ナショナルズと再契約を結ぶと考える識者は多い。2009年ドラフトで全体1位指名を受けてナショナルズに入団したストラスバーグは球団生え抜きのエースであり、ナショナルズに居心地の良さを感じている。彼自信もナショナルズ残留を望んでおり、新たな契約は2016年に結んだ1億7500万ドルを超える大型契約を狙っており、6年総額2億ドル(216億円)が攻防戦となりそうだ。
昨オフには主砲のブライス・ハーパーをFAで失ったナショナルズは、2年続けて投打の柱を失うことは避けたいところだが、今オフには三塁手のアンソニー・レンドンもFAの権利を手にした。
「ハーパーの穴は埋められても、レンドンの代わりはいない」と球団関係者が語るように、ナショナルズの最優先事項はストラスバーグとの再契約ではなく、レンドンの引き留め。今年2月にコロラド・ロッキーズが三塁手のノーラン・アレナドと8年総額2億6000万ドル(281億円)で契約延長を結んだが、レンドンはアレナドに匹敵する契約を望んでいると言われる。
ナショナルズがレンドンとストラスバーグの2選手と再契約するシナリオは十分に現実味はあるが、レンドンの値が上がるようだとストラスバーグを諦めざるを得ない。
その際にストラスバーグの移籍先として有力視されるのが長年低迷を続けているサンディエゴ・パドレスだ。
9年連続で負け越しを記録中のパドレスだが、若手選手が育ってきておりチームの未来は暗くない。一昨年のオフにはFAだったエリック・ホズマーを8年総額1億4400万ドル(156億円)で、昨オフはマニー・マチャドを10年3億ドル(324億円)で獲得。若い先発投手陣を牽引できるエースを獲得できれば、プレーオフ争いに加われる戦力は整う。
パドレスの今季の開幕時のチーム総年俸はメジャー全体で下から4番目の7580万ドル(82億円)で、パドレスが所属するナショナル・リーグ西地区を制したロサンゼルス・ドジャース(1億7090万ドル、メジャーで7位)の半分にも満たない。パドレスにはストラスバーグを迎え入れるだけの余裕があるだけでなく、ストラスバーグの地元という利点もある。
ストラスバーグはサンディエゴで生まれ育ち、大学も地元のサンディエゴ州立大学でプレー。大学時代に監督を務めたのは、パドレス一筋の殿堂入り選手、トニー・グウィン。サンディエゴには今でもストラスバーグの両親が住んでいるだけでなく、ストラスバーグの奥さんの両親も住んでいる。環境を変えるのを嫌うストラスバーグだが、サンディエゴでプレーすることは前向きに捉えている。
1969年に誕生したパドレスがワールドシリーズに出場したのは、グウィンがメジャー初のフルシーズンを過ごした84年と、グウィン晩年の98年の2回だけ。どちらもワールドシリーズで敗れて、悲願の世界一は達成できなかった。
奇遇にもナショナルズの前身であるモントリオール・エクスポズが誕生したものパドレスと同じ69年。ナショナルズ球団創設51年目に初の世界一に導いたストラスバーグが、パドレスにもワールドシリーズ・トロフィーをもたらすことができれば、グウィンも天国で喜ぶことだろう。