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英王室の「肌の色」発言はウィリアム王子かチャールズ皇太子 2人の王子は「カインとアベル」著名作家語る

木村正人在英国際ジャーナリスト
想像以上に深刻なヘンリー公爵とウィリアム王子の確執(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

エリザベス英女王が95歳に

[ロンドン発]73年連れ添ったフィリップ殿下を失ったばかりのエリザベス英女王が95歳の誕生日を迎えた4月21日、『ダイアナ妃の真実』(1992年)で世界中にセンセーションを巻き起こした英ジャーナリスト、アンドリュー・モートン氏が英外国人特派員協会(FPA)のオンライン記者会見に応じました。

モートン氏は2018年にはメーガン夫人の伝記『メーガン:ハリウッドのプリンセス』を発表し、今回、エリザベス女王と妹のマーガレット王女の人間ドラマを描いた『エリザベスとマーガレット:ウィンザー朝の姉妹(筆者仮訳、Elizabeth & Margaret: The Intimate World of the Windsor Sisters)』を出版しました。

この日、エリザベス女王は「私たち家族は深い悲しみの中にいます。夫への追悼の言葉がイギリスと英連邦、そして世界中から届き、慰められました。家族と私はみなさんの支援と厚情に感謝します。夫は人生を通して数え切れない人々に大きな影響を与えたことをずっと胸に刻みます」との声明を出しました。

99歳で亡くなったフィリップ殿下の葬儀は17日、ロンドン郊外ウィンザー城の聖ジョージ礼拝堂で行われ、久しぶりに再会したウィリアム王子とヘンリー公爵は葬儀後に歩きながら言葉を交わすシーンが見られましたが、目は合わせませんでした。

英王室を完全離脱したメーガン夫人とヘンリー公爵が米人気司会者オプラ・ウィンフリー氏のインタビューに、生まれてくる長男アーチーちゃん(1歳11カ月)の「肌の色」を巡る人種差別が英王室内にあったと告発したことで、ウィリアム王子とヘンリー公爵の関係は極度に悪化しました。

ウィリアム王子とヘンリー公爵の確執

記者会見では、もう歴史になったエリザベス女王とマーガレット王女(2002年2月没)の関係ではなく、現在進行形のウィリアム王子とヘンリー公爵の確執と英王室のこれからに質問が集中しました。英王室の内部事情を知るモートン氏は兄弟の関係をどう見たのでしょう。会見中の発言を拾ってみました。

オンライン記者会見に応じるアンドリュー・モートン氏(筆者がスクリーンショット)
オンライン記者会見に応じるアンドリュー・モートン氏(筆者がスクリーンショット)

「ウィリアム王子は米ラスベガスでハリー(ヘンリー公爵)のように振る舞う(パーティーで裸になり写真を隠し撮りされる)ことはありません。この兄弟にはカインとアベル(妬んだカインによって殺害される)の要素があります。ウィリアム王子がより賢明で注意深いというある種、聖書との共鳴があります」

「キャサリン妃へのウィリアム王子の求愛は正しい方法で行われました。彼女に結婚について考え、撤退したいのであれば撤退する十分な時間を与えました。ハリーとメーガン妃の場合、事情は異なります。2人は祭壇に向かって競争するような性急さでした」

「フィリップ殿下の葬儀が終わり、ハリーはアメリカに戻りました。現在、メーガン夫人とハリーは大西洋の向こう側にいます。私たちが葬儀の放送で知っているように、ハリーはウィリアム王子と言葉を交わしました。しかし彼らの間に横たわる問題が解決されたわけではありません」

「ハリーは米カリフォルニア州サンタバーバラの邸宅に戻っているので、しばらくの間、関係が改善されることはないと思います。ハリーとメーガン夫人は第二子の娘の誕生に焦点を合わせ、ハリーにもやらなければならない仕事があります。彼は今、働いています」

「2人の兄弟は今、別々の生活を送っています。それがこれからの2人の生き方になると思います。ハリーとメーガン夫人はサンタバーバラで友人の輪を作っています。彼らはそこでセレブの世界に加わっており、自分たちの邸宅を構えることを決めたのです」

将来の王室メンバーは一握り

「英王室の将来は保証されています。チャールズ皇太子、ウィリアム王子、ジョージ王子がいます。この世紀には男性の君主が長く続きます。バッキンガム宮殿のバルコニーで人々が自分の場所を探すために押し合いへし合いするようなことはありません。ほんの一握りのメンバーになっているでしょう」

「メーガン夫人とハリーが英王室を離脱する前、エリザベス女王は自分自身とチャールズ皇太子、ウィリアム王子、ジョージ王子が写ったクリスマスカードを飾りました。それで私たちはこれから英王室が進む方向をうかがい知ることができました。そこにいるのはほんの一握りの人々です」

「変更しなければならないということは優先順位をつける必要があるということです。英王室はどこに焦点を合わせるのでしょう。軍でしょうか。慈善活動でしょうか。王室による慈善活動の発展は比較的最近のものであることを覚えておく必要があります」

「エドワード7世は慈善イベントに参加しませんでした。彼はトゥルーピング・ザ・カラー(軍によるセレモニー)に行きました。彼は国を代表する正式な行事に出席しました。王室の優先順位がどこにあるのか。国、軍、慈善団体の中で優先順位をつけなければなりません。それは現在進行形の話です」

仲違いの実質的な理由とは

「彼らは人種差別の主張について話し合う必要があるでしょう。メーガン夫人のメンタルヘルスの問題についても話し合う必要があります。妊娠中の希死念慮は頻繁に起こります。メーガン夫人だけの問題ではありません。数十万とまではいかなくても数千人の女性は彼女が経験したことを理解できるでしょう」

「しかし、その根本的な原因を考えなければなりません。ハリーは兄が“交際についてしばらく考えよ”と言ったことに憤慨していますが、仲違いの実質的な理由とは思えません。彼らは王室の中でどのような役割を果たしたいのかを考えなければなりません」

「ハリーが妻にとても満足していることに私は圧倒されています。彼は恋をしています。ハリーはカメラやライトに追いかけられたことにストレスを感じており、これまでのように世間の注目を集めることを望んでいません。彼には自分自身で対処しなければならない心理的な問題があります」

「これに対する特効薬はなく、簡単な答えもありません。それは複雑な問題です。ハリーとメーガン夫人は近い将来、自分たちの道を作っていくと思います。彼らはサンタバーバラに家を構えました。彼らにはそこに友達がいます。彼らが築き上げている友達の輪を持っています」

「彼らはセレブのサーキットの一部です。収入を得ています。彼らの息子と将来の娘は安全な家を必要としています。しかしもう22回も侵入されました。私は彼らが前進していると思います。彼らは、王室がしていることではなく、自分たちの生活に焦点を合わせています」 

決してナンバー1にはなれないハリー

「ハリーはマーガレット王女と同じようにナンバー2で、どれほど人気があっても決してナンバー1にはなれません。ウィリアム王子の子供たちが成長し、結婚し子供をもうけるにつれて、ハリーの王位継承順位は下がっています。時間が経つにつれ、彼は継承順位では王室の取るに足らない人物になっていくでしょう」

「7月1日、ダイアナ元皇太子妃の60歳の誕生日を記念してケンジントン宮殿で像の除幕式が行われます。それは非常に象徴的です。ハリーの出席はメーガン夫人の出産でどうなるかは分かりませんが、メディアによって鵜の目鷹の目でウォッチされます。彼らはウィリアム王子とハリーの和解を探しているからです」

「ダイアナ元妃は2人の息子が目と目を合わせられなくなっていることに失望しているはずです。ダイアナ元妃はいつも私に、ハリーはウィリアム王子のバックアップだと言っていたからです。ウィリアム王子が国王になる時、非常に孤独で困難な仕事であり、絶対に信頼できる誰かを必要としています」

「ハリーはすでにウィンフリー氏の独占インタビューに応じました。彼が彼自身の声明を出すかもしれません。ウィリアム王子のような人にとってハリーは非常に危険な人物です。誰もが2人の和解を望んでいます。しかし7月の1度の訪問が2人の関係を変えることはないと思います」

「彼らは両方とも知的で敏感な個人です。彼らは馬鹿ではありません。彼らは誰もが彼らを見ていることを完全によく知っており、適切に行動するでしょう。しかし、それが和解を意味しているわけではありません」

問題発言はチャールズ皇太子かウィリアム王子

「アーチーちゃんの肌や髪の色など何であれ、2人の中心的な人物がいるように私には思えます。つまりチャールズ皇太子またはウィリアム王子です。ハリーはエリザベス女王とフィリップ殿下を除外しました。それについての調査はプライベートなものですが、いつか公になると確信しています」

「キャサリン妃はかなり恥ずかしがり屋で控えめな若い女性です。彼女は一般市民が王室に完全に統合されるまでに長い時間がかかることを思い出させてくれます。彼女とウィリアム王子とハリーは3頭立てのトロイカでした。ハリーがメーガン夫人に会うまでは、キャサリン妃と本当にうまくいっていました」

「ハリーとキャサリン妃は一緒に冗談を言い、笑いました。彼女は対立を嫌い、和解を求める人です。彼女はウィリアム王子とハリーの仲違いを修復しようとすると確信しています。フィリップ殿下の葬儀でハリーと話し始めたのはキャサリン妃で、それから一歩下がってウィリアム王子が話すきっかけを作りました」

「キャサリン妃は和平工作者であると言えます。ウィリアム王子にも非常に忠実です。彼女は将来の国王である夫の影響を受けており、未来の王妃です。それはウィリアム王子とハリーを隔てる問題です。ウィリアム王子は対立する関係を仲介するためにより中立的な誰かを必要としています」

「ウィリアム王子とハリーがもっと関係をこじらせる恐れはあると思います。ハリーとメーガン夫人は将来のポッドキャストやインタビューで他の不満をぶちまけることができます。彼らはこれらのことについて喜んで話しているので、かなりの数のカードを持っています」

無意識の差別はある

「王室が反論すると鉄砲の撃ち合いのようになります。それは卑劣で威厳のない応酬です。ハリーとメーガン妃は危険なほどコントロールが利かなくなっています。ウィリアム王子は“王室は人種差別主義者ではない”と言いましたが、無意識の差別はあると思います」

「王室が特定の階級から来たことを思い出してください。それは平等主義の制度では一度もありませんでした。メーガン夫人とハリーの結婚を通じて、王室が人種差別主義者であると非難されているのは悲劇だと思います。反論することは非常に困難です」

「ハリーは独占インタビューで“(ウィリアム王子やチャールズ皇太子が)囚われている”という言葉を使いました。みんなが和解を求めていますが、ハリーが言ったことのいくつかは、もう元に戻すことはできません。それを言ったら箱に戻すことはできないのです」

「ウィリアム王子が囚われていると非難したのは、おそらく行き過ぎだったと思います。人々はウィリアム王子とハリーの和解について話していますが、ハリーと父親のチャールズ皇太子はどうでしょう。ハリーによれば、父親はどうやら彼の電話を切ったようです」

「私たちはハリーとメーガン夫人の話だけを聞いています。その話自体が信頼性に欠けている場合があります。例えば“結婚式の3日前に密かに結婚した”と言いますが、実際にはそうではありませんでした。私はメーガン夫人とハリーの大ファンですが、彼らの発言のいくつかは論理的に矛盾しています」

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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