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ヘンリー王子とメーガン妃3月31日王室離脱 王室ブランド使用は禁じられバッキンガム宮殿からも完全追放

木村正人在英国際ジャーナリスト
文字通り、カバン一つで新生活に踏み出したヘンリー王子(写真:Splash/アフロ)

[ロンドン発]英王位継承順位6位のヘンリー王子(35)と妻の元米女優メーガン妃(38)、長男のアーチーちゃん=生後約9カ月、同7位=の“3月31日王室離脱”の全容が英大衆紙サンなどの報道で明らかになりました。

エリザベス女王が2人に対して最終的に言い渡した決定は、ロイヤルファミリーとの関係を完全に断ち切り、事実上、民間人になるという想像以上に厳しい内容でした。それによると――。

(1)3月31日からバッキンガム宮殿にある2人のオフィスを引き払う

(2)王子と妃という王室の称号(His or Her Royal Highness)は維持するものの、2人は使用しないことに合意

(3)2人が立ち上げた「サセックスロイヤル」のブランドは使用しない(交渉継続)。インスタグラムのフォロワーは2月20日現在、1123万人。当初、パートタイムの王族として活動することを望んでいた2人はすでに100以上の「サセックスロイヤル」ブランドを商標登録していたが、使えなくなる恐れも

(4)ヘンリー王子は英軍の階級を失う

(5)ロンドン郊外ウィンザーの邸宅フロッグモア・コテージとカナダを生活の拠点にする。フロッグモア・コテージの改装費240万ポンド(約3億4500万円)は返済し、月3万ポンド(約431万円)の賃貸料を負担

(6)ヘンリー王子とメーガン妃の2人は非営利の財団を立ち上げる

(7)銀行などから資金調達を自由に行えるようになる

(8)王室を離脱した12カ月後に全てについて見直す

(9)ヘンリー王子の次の公務は2月28日、傷痍軍人のための国際スポーツ大会「インビクタス・ゲームズ」

(10)ヘンリー王子最後の公務は3月9日、ウェストミンスター寺院で行われる英連邦の集会礼拝

(11)ヘンリー王子は4月のロンドンマラソンでスターターを務めるが王族としてではなく一民間人として参加

18日に公表された世論調査会社ユーガブの世論調査では王室を継続した方が良いという意見は62%。継続に反対が22%。分からないが16%でした。

ユーガブの別の調査では昨年10月3日から今年1月10日にかけヘンリー王子の支持率は71%から55%に急落。メーガン妃も55%から38%に落ち込み、不支持率が49%にも達しました。

一方、2人を王室から放り出した形になったエリザベス女王の支持率は82%から80%に少し下がったものの、大きくは変わりませんでした。

ヘンリー王子とメーガン妃はそろって2月6日、米マイアミ・サウスビーチのホテルで開かれた米金融大手JPモルガン・チェース主催のイベントに出席。

謝礼は明らかにされていませんが英大衆紙デーリー・メールは50万~100万ポンド(7200万~1億4400万円)と推測しています。

ヘンリー王子はメーガン妃に紹介され、最愛の母ダイアナ元皇太子妃を悲劇の交通事故で亡くした後の精神的な苦しみを話しましたが、英大衆紙だけでなく、米大衆紙からも「母親の死を食い物にしている」と叩かれました。

世界中で貧富の格差が広がる中、ヘンリー王子とメーガン妃が「プライバシー」を求めて逃げ出したカナダでも民間人になる2人の身辺警護は私費で賄ってほしいという署名運動が盛り上がっています。

2人は英大衆紙の取材を逃れるためと言って身辺警護のSP(イギリスとカナダの警察官)に食べ物やコーヒーを買いに行かせている実態が暴露されました。反省したヘンリー王子は野球帽をかぶって自分でサンドイッチを買っている姿が報じられています。

父チャールズ皇太子のコーンウォール公爵領からの利益配分230万ポンド(約3億3000万円)は1年間の期間限定で支給されるとみられているものの、ヘンリー王子は王族としての特権を全て剥奪されてしまいました。

英大衆紙が見積もるメーガン妃とヘンリー王子の新たな収入は上手く行けば年に7200万ポンド(約103億5000万円)にのぼりますが、これは捕らぬ狸の皮算用です。

ロイヤルファミリーはイギリスをはじめ英連邦の人々の気持ちに寄り添うことで存在を認められています。いくら慈善活動だとは言え、超VIPのセレブ気取りが抜けないメーガン妃にロイヤルファンは愛想を尽かしてしまったようです。

2人にとって自由の代償は考えていた以上に大きかったのは間違いありません。計算の狂ったメーガン妃にお人好しのヘンリー王子が捨てられないか心配になってきます。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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