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「メーガンとヘンリー王子のために私たちの税金を使わないで」カナダで署名9万人 若者の王室離れが加速

木村正人在英国際ジャーナリスト
英王室を離脱したヘンリー王子とメーガンさん、アーチーちゃん(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

47%が王室のスリム化に賛成

[ロンドン発]英王位継承順位6位のヘンリー王子(35)と妻の元米女優メーガン・マークルさん(38)、長男のアーチーちゃん=生後約9カ月、同7位=が王室を離脱した問題で、若い世代で王室制度の支持者が過半数割れするという衝撃的な世論調査の結果が出ました。

英大衆紙デーリー・エクスプレスが22、23の両日、世論調査(2039人)を実施したところ、18~34歳の若い世代で「王室はイギリスにとってプラス」と回答したのはわずか48%にとどまりました。

米富豪ジェフリー・エプスタイン被告の未成年者性的搾取疑惑に関連してアンドルー王子が公務から解任されたばかり。2大スキャンダルで英王室制度の土台が大きく揺らいでいます。世論調査の結果は次の通りです。

・全体では61%が英王室制度を支持。55歳以上の73%が「王室はイギリスにとってプラス」と回答

・47%が王室はスリム化すべきと回答。反対は15%

・男性の半数が王室のスリム化に賛成。女性は43%

・44%がヘンリー王子とメーガンさんが王室ブランドを使ったビジネスで商業的な利益を上げるのに反対し、27%が賛成

・40%はヘンリー王子が王族であることをやめたのは間違いと回答。正しい判断と答えたのは31%

・55歳以上の半分以上がヘンリー王子の行動は間違っていると回答。18~34歳では4分の1未満

・王位継承順位2位のウィリアム王子とキャサリン妃の支持率が急上昇。45%がウィリアム王子はチャールズ皇太子を飛び越して即位するべきだと答え、20%がこの考えに反対

・女性の50%がウィリアム王子の即位を支持、男性は40%。若者世代の半数がウィリアム王子の即位に賛成。55歳以上では3分の1強

・ヘンリー王子とメーガンさんの王室離脱で女性の3分の1がキャサリン妃派に

世界の長者2153人が最貧困層46億人を上回る資産を保有

国際NGOオックスファム・インターナショナルは世界のビリオネアの数が過去10年間で倍増し、世界のお金持ち2153人が最貧困層46億人(世界人口の60%に相当)を上回る資産を持っていると発表したばかりです。ポイントは次の通り。

・世界のお金持ち男性22人はアフリカの女性全員を上回る資産を持っている

・世界の女性と少女は毎日125億時間、無給の家事や育児に従事している。世界経済への貢献度は年間少なくとも10兆8000億ドル。世界のテクノロジー産業の3倍以上に相当

・世界トップ1%のお金持ちが今後10年間、0.5%多く追加の資産税を納めるだけで介護・育児・教育・医療分野で1億1700万人分の仕事を作り出すのに必要な投資に匹敵

世界中で貧富の格差が広がる中、王室の公費にも当然、厳しい目が向けられています。ヘンリー王子とメーガンさんが逃げ出したカナダでも民間人になる2人の身辺警護は私費で賄ってほしいという署名運動が盛り上がっています。

署名運動を呼びかけたカナダ納税者連邦のアーロン・ウドリック代表を直撃しました。

――署名運動を始めたのはいつですか

「私の組織であるカナダ納税者連邦は税金の削減、無駄のない支出、政府の説明責任を求める全国的な非営利団体です。 1月14日に署名運動を始めました」

内容は次の通りです。

〈ジャスティン・トルドー首相

メーガンとハリー(ヘンリー王子の愛称)のために私たちの税金を使わないで。カナダ人はサセックス公爵と公爵夫人が財政的に独立したいと願っていることを応援します。

カナダの納税者はカップルの支払いを負担する必要がありません。財政的な独立という目標は重要です。署名した私たちは、ハリーとメーガンのために納税者のお金を使わないよう首相に要求します〉

「23日の時点で、9万人の署名があります。 1月21日に首相官邸に最初の8万人分の署名を提出しました」

――なぜカナダの納税者はカップルの身辺警護費を負担することを望まないのだと思いますか

「カナダ人はカナダにハリーとメーガンがやって来ることを歓迎していると思いますが、彼らは富裕なセレブなので、自分で身辺警護費を払えない理由はありません」

――彼らがロイヤルファミリーのシニアメンバーである場合、カナダの納税者は彼らの身辺警護費を負担する必要があると思いますか

「カナダは英連邦に加盟しており、憲法体系の一部としてイギリスの君主制を持っているため、英王室は公式な役割を持っています。カナダ人は王族の公式訪問やエリザベス女王の代表であるカナダ総督の費用を負担しています」

「しかし、ハリーとメーガンは公式にはもう英王室を代表しないため、状況は異なり、納税者は彼らの費用を支払う義務がありません。身辺警護費の公的な数字ははっきりしませんが、それは年間数百万カナダ・ドルと推定されます」

――なぜカナダ人はカップルの行動にすぐ反応したのですか

「カナダ人はカップルがカナダに引っ越してくることに興奮していると思います! しかし裕福な映画スターやアスリートがカナダに移住しても、彼らはカナダの納税者に請求書を支払ってもらおうとは思わないでしょう。カナダ人はハリーとメーガンについても同じ質問をしているだけだと思います」

――これはカナダの政治問題に発展したと思いますか

「はい。ある世論調査では、カナダ人の73%がカップルを財政的に支援することに反対していることが示されています」

「トルドー政権は議会で過半数割れしており、十分な政治的支援を期待できません。この問題に対するカナダ人の気持ちに注意を払う必要があります!」

――カナダ人はイギリスの君主が元首であり続けることを望んでいますか

「はっきりしていません。この問題については常に意見が分かれていましたが、カナダではオーストラリアのように共和国になろうとする深刻な動きはありませんでした」

――付け加えることはありますか

「ハリーとメーガンはカナダで歓迎されています。私たちは彼らが財政的に自立しようとしている野心を称賛します! 彼らがそれを達成することを願っています!」

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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