海外の石炭発電に2兆円支援 石炭まみれの安倍首相と「ステーキ毎日食べたい」小泉環境相

安倍首相に石炭への支援を止めよと訴える人たち(FoE Japan高橋英恵氏撮影)

「なぜ16歳の女の子をそんなに恐れるの?」

[ロンドン発]抜本的な地球温暖化対策を迫るスウェーデンの少女グレタ・トゥンベリさん(16)が大西洋をヨットで折り返し、ポルトガル・リスボンに到着しました。

開催地が南米チリからスペイン・マドリードに急遽(きゅうきょ)変更された第25回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)に参加するためです。

グレタさんを嫌う中年男性を象徴するように英人気TVパーソナリティ、ピアーズ・モーガン氏(54)は「私もこんな盗まれた子供時代を送りたかった」とツイート。

純粋なグレタさんが、温暖化対策を推進しようとしている大人たちにいいように使われているという皮肉です。

コメント欄には賛否両論が渦巻きましたが、「なぜ16歳の女の子をそんなに恐れるの?」「彼女は環境に対する世界の考え方を変えようとしている。それがそんなに悪いこと」というモーガン氏への批判も目立ちました。

温暖化を巡ってはグレタさんのようなリベラルな脱炭素派と、パリ協定から離脱したドナルド・トランプ米大統領に代表される懐疑派が激しく対立しています。さて日本はどうなのでしょう。

「気候変動にはセクシーに取り組もう」

温室効果ガス排出の元凶の一つとみなされだしたステーキを「毎日でも食べたい」と発言して物議をかもした小泉進次郎環境相もCOP25に出席する予定です。

9月に開かれた国連気候行動サミットの共同記者会見では「気候変動のようにスケールの大きな問題に取り組むためには、楽しくかつクールで、しかもセクシーでなければならない」と述べました。

共同通信によると、この気候行動サミットで日本政府が安倍晋三首相の演説を要望したものの、国連側から断られていたことが分かりました。石炭火力発電を推進する日本の政策が問題視されたそうです。

世界が日本に求めているのは「言葉より行動」です。小泉環境相は共同通信の報道を「首相が日程上行くことがかなわず、断った」と否定しました。

「日本よ、石炭はもうよしなさい!」

その安倍首相に国内外で石炭火力発電を支援するのを止めるよう求める抗議活動「No Coal Japan(日本よ、石炭はもうよしなさい)!」が5日、マドリードのCOP25会場周辺で行われました。

石炭のバケツを持つ安倍首相にピカチュウが「ストップ! 石炭」「再生利用可能エネルギーを」と呼びかけました。

風力発電への転換を訴える「ピカチュウ」(FoE Japan高橋英恵氏撮影)
風力発電への転換を訴える「ピカチュウ」(FoE Japan高橋英恵氏撮影)

これに先立ち、長年にわたって気候変動枠組条約交渉をウォッチしてきた「気候ネットワーク」の平田仁子(きみこ)理事は次のように述べています。

「安倍首相は何年にもわたって石炭火力発電と“クリーンな石炭”を頑固に推進し続けてきました」

「梶山弘志経済産業相も最近、太陽光、風力、蓄電がより多くのエネルギーを供給できるという事実にもかかわらず、石炭火力を擁護しています」

「石炭は気候変動の最大要因であり、日本は先進7カ国(G7)の中で唯一、石炭火力発電所を建設しています」

日本は2011年の福島原発事故の後、石炭に大きく依存するようになりました。経済産業省の資料では17年の時点で日本の発電電力量における石炭依存度は32.7%、天然ガスは39.5%、石油その他8.7%となっています。

経済産業省のHPより
経済産業省のHPより

日本は「失われた30年」で世界からすっかり取り残されるどころか、アジアの発展途上国が石炭火力発電所を建設するのを支援して温室効果ガスをまき散らしています。

海外の石炭火力発電も支援

世界の化石燃料プロジェクトを調査している非営利団体グローバルエナジーモニターが「日本が支援する海外の石炭火力発電事業の48億ドル(約5200億円)が大きく毀損する恐れを抱えている」と警鐘を鳴らしています。ポイントは次の通りです。

・13年以来、国際協力銀行(JBIC)や国際協力機構(JICA)、日本貿易保険(NEXI)が石炭火力発電所や炭鉱、石炭関連の送電、石炭輸送インフラを含む海外の石炭プロジェクトの支援に投資した額は180億ドル(約2兆円)を上回る。

・現在、48億ドルが保留となりながらも支援は続けられ、バングラデシュ、インドネシア、ベトナムに集中。

グローバルエナジーモニターの発表資料より筆者作成
グローバルエナジーモニターの発表資料より筆者作成

・再生可能エネルギーの発電コストの低下や電力需要の伸び悩み、大気汚染の悪化による健康被害、地球温暖化への危機感から、南・東南アジアにおける石炭火力発電プロジェクトの経済的見通しに陰りが出ている。

・28年までには既存の発電所を運転するよりも、太陽光発電所や陸上風力発電所を新設する方が安くなる。石炭火力発電所は、数年間は採算が合っても今後10年もしないうちに資産価値が大きく損なわれる恐れがある。

・シティグループのアナリストらは、10~18年にかけ石炭火力発電への融資は80%減少したと発表。英スタンダードチャータード銀行やロイヤルバンク・オブ・スコットランド、日本生命保険は完全撤退を表明。

・日本の公的金融機関は3700メガワットを超える石炭火力発電所の支援を続けており、48億ドルを大きく損なう恐れを抱えている。

【バングラデシュ】

18~19年に新たに着工した石炭火力発電所は一つもない。10年以降、1万4700メガワットを超えるプロジェクトが棚上げ、または中止に。

JICAが融資するマタバリ石炭火力発電所のコストは1メガワット時当たり160ドル(約1万7400円)で、インドの太陽電力の入札額35.5ドル(約3900円)の4.5倍になる。太陽光発電と風力発電は将来性がますます高まる。

【インドネシア】

電力需要の増加率は当初計画の半分以下になり、今年ジャワ・バリ系統の余剰電力は55%に達するとみられている。

17年に計6100メガワットの石炭火力発電所の建設工事が開始されたが、18年には1124メガワットにまで減少。多数のプロジェクトが中止または中断された。

エネルギー・鉱物資源省はエネルギー10年計画で石炭火力発電の新設容量を4万2000メガワットから2万7000メガワットに削減した。

新規の太陽光発電がより低コストになることから今年以降に着工され、23年以降に完成する石炭火力発電所は稼働を始めてから5年以内に資産価値が大きく損なわれるリスクに直面する。

【ベトナム】

エネルギー調査会社によると、太陽光の発電設備容量は昨年の134メガワットから今年は5500メガワットまで増加する。

30年までに6000メガワットの洋上風力発電を計画。洋上風力発電は513ギガワットの潜在能力を秘める。

メコンデルタの海抜平均はわずか0.8メートルで、21世紀半ばまでに1200万人の命が海面上昇によって危険にさらされる。

首都ハノイの大気汚染は世界的にみて最悪のレベル。石炭火力発電の拡大による大気汚染に国民の反発が高まっている。

このため30年の石炭火力発電設備容量目標を7万5000メガワットから5万5000メガワットに引き下げる。石炭火力発電ユニット2基が中止、7基が30年以降まで延期となった。

(おわり)