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メディア「とても信頼している」最下位の0.8% 信頼できるのは「天皇・皇室」「自衛隊」「警察」

木村正人在英国際ジャーナリスト
参院選で応援演説する安倍晋三首相(写真:つのだよしお/アフロ)

権威主義が復活?

[ロンドン発]参院選の投開票(7月21日)を前に、日本の課題を考える特定非営利活動法人「言論NPO」が日本の民主主義に関する世論調査結果を公表しています。

衝撃的だったのが「日本のどの機関を信頼しているか」という問いに対する答えです。

“信頼できる御三家”は天皇・皇室87%、自衛隊77%、警察72%、“信頼できない御三家”は宗教団体・組織を除くと政党22%、国会29%、メディア32%です。

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「令和」の時代を迎え、天皇・皇室がいくら国民の関心を集めているとしても、その後に自衛隊、警察と続くと日本は権威主義化しているのだろうかと考え込んでしまいます。

海外で戦争責任を追及する声が強かった昭和天皇は「戦争」と「戦後」を体現していました。それに対して、今の天皇皇后両陛下は「平和」を祈る象徴になっているのでしょうか。

地に落ちたメディアへの信頼

「とても信頼している」という問いではメディアが0.8%で、宗教団体・組織の0.9%を下回って最下位。

ロイター・ジャーナリズム研究所の調査報告書「デジタルニュース・リポート2019」で「メディアは権力を監視しているか」という問いに、「はい」と回答したのは日本では読者・視聴者17%、ジャーナリスト91%と非常に大きな開きがありました。

メディアへの信頼はもはや地に落ちたと言えるような状況です。中でも衰退著しい新聞はインターネットの利点をフル活用して読者へのアウトリーチとエンゲージメントを強化することが急務になっています。

映画『新聞記者』のモデルにもなった東京新聞の望月衣塑子記者は菅義偉官房長官の記者会見で体制におもねらない質問を連発し、支持を集めました。

この現象は、読者がメディアを「権力に対する監視役」ではなく、「権力の代弁者」とみなしていることの裏返しのように思えます。

日本の政治に満足していない65%

首相は「信頼している」が47%、「信頼していない」が46%で非常に拮抗していました。

低成長の時代に入り、格差が拡大する中、民主主義への信頼も低下しているようです。「日本は民主主義の国か」という問いに「そう思う」と回答したのは52%に過ぎませんでした。

「日本の政治に満足しているか」という問いに「満足している」と答えたのは25%。一方「満足していない」が65%にのぼりました。

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前民主党政権の惨状を目の当たりにして政権交代に期待できなくなった日本の有権者は自民党・公明党以外の選択肢を失ってしまいました。

今回の参院選では立憲民主党や国民民主党など野党5党派は1人区で候補者を1本化しました。2013年の参院選の1人区で野党候補が乱立し、自民圧勝を許したからです。

しかし根幹政策を1本化できなければ単なる「野合」に過ぎません。

「急速に進む高齢化と人口減少に有効な対策が見えない」79%

言論NPOの調査で日本の将来を悲観視している人が多かった理由は次の通りです。

・急速に進む高齢化と人口減少に有効な対策が見えない 79%

・社会保障や年金が安心ではなく、自分の人生の将来が不安 53%

・日本の経済成長が停滞しており、今後の経済に展望を持てない 25%

「平均的な高齢夫婦無職世帯の赤字は毎月約5万円。30年(95歳)で約2000万円の取り崩しが必要」と試算した金融審議会の市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」が世論の反発を受け、事実上白紙撤回される事件がありました。

日本のメディアも政治も、不都合な真実を有権者に伝える時が来ています。高齢者の就業率(2017年)は60~64歳66%、65~69歳44%、70~74歳27%、75歳以上9%になっています。「赤字」は定年後も働くか、資産を運用して埋めるしか方法がありません。

メディア不信も政治不信も真実を語ることでしか解消できないのではないでしょうか。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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