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大阪万博誘致に追い風 ほんまかいな、そうかい(爽快)な、大阪市が「住みやすい都市」世界3位に大躍進

木村正人在英国際ジャーナリスト
大阪の道頓堀はアジアからの観光客でにぎわいを取り戻している(今年5月、筆者撮影)

公共交通と犯罪率が改善

[ロンドン発]英誌エコノミストの調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)」が発表した「世界で最も住みやすい都市ランキング2018」で大阪が堂々の3位に入りました。2025年大阪万博誘致に向け、大きな追い風になりそうです。

EIUの報告書をもとに作成
EIUの報告書をもとに作成

20年に東京五輪・パラリンピックを開催する東京は7位。日本から2都市がトップテン入りしています。

「世界で最も住みやすい都市ランキング」では安定性、医療、文化・環境、教育、インフラの5項目の得点(100点満点)を総合評価。大阪の評価は急上昇しており、半年前の前回調査まで6年半も首位に輝いたメルボルン(今回調査では2位)に0.7ポイント差まで肉薄する勢いです。

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犯罪率がコンスタントに下がり、公共交通の質と利便性が向上したことが安定性とインフラの得点を押し上げています。首位のウィーンの人口は190万人、大阪市は270万人と、大都市制度をとるニューヨークやロンドン、パリに比べ、都市のサイズは小さいとEIUの報告書は指摘しています。

20年前は「どないなってんねん大阪!」

大阪の道頓堀は昔から恋の花咲く街(今年5月、筆者撮影)
大阪の道頓堀は昔から恋の花咲く街(今年5月、筆者撮影)

1999年から2000年(平成11~12年)にかけ、つまり20世紀の最後の年に、産経新聞大阪社会部で大阪府警のキャップをしていた筆者は同僚記者と、23年連続ひったくり全国ワースト1の汚名を更新し続けていた大阪府の路上犯罪を減らすキャンペーンに取り組みました。

ひったくり件数は1万件を突破し、ワースト2の東京を倍近くも引き離していました。97年(平成9年)には天才漫才師の横山やすしさん(故人)が「どないなってんねん大阪!」と、どやしつけるマナー広告が大きな話題を呼びました。

当時、大阪の全国ワースト1はひったくりだけでなく、自動車盗、ひき逃げ、刑法犯少年の検挙・補導数、暴走族の団体数などなど。青信号になる前に発進する「フライング発車」はなんと世界ワースト1でした。

たこ焼きは今や世界的人気フード(同)
たこ焼きは今や世界的人気フード(同)

ひったくりは昨年も全国ワースト1でしたが、発生件数は646件まで激減しています。手のつけようがなかった大阪のやんちゃ坊主たちも随分、大人しくなったものです。

全国ワースト1の大阪が世界ベスト3に大躍進した理由について大阪市役所に問い合わせの電話を入れてみましたが、絵に描いたようなお役所対応で、全く要領を得ませんでした。筆者は、決め手は犯罪率の改善で、人口と少年の減少によるものだと直感しました。

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大阪府内の刑法犯総数は04年の25万5697件から昨年は10万7023件と6割近く減りました。一方、大阪市の人口推計は15年の262万4891人から40年には215年4000人に、0~19歳人口は40万6519人から25万9409人に減る見通しです。

大阪万博で反転攻勢

皮肉なことに人口減少によって犯罪が激減して住みやすくなった大阪市は「世界で最も住みやすい都市」世界3位に選ばれたのではないでしょうか。

解釈はともかく、大阪のインバウンドは好調で、25年の「大阪・関西万博(大阪万博)」誘致を目指す大阪にとっては弾みになります。ライバルはロシアのエカテリンブルク、アゼルバイジャンのバクーで、大阪の優勢が伝えられています。

ニッセイ基礎研究所の試算によると、大阪万博が実現した場合、25年度の大阪府の実質成長率は22~24年度の平均値に比べ1.5ポイント以上も上昇。施設の建設費や消費の拡大で5000億円以上の経済効果が見込めるそうです。

70年万博の太陽の塔(同)
70年万博の太陽の塔(同)

6421万人が入場した1970年の大阪万博で芸術家、岡本太郎の「太陽の塔」やアメリカ館の「月の石」、ソ連館、電気自動車、動く歩道に感動した筆者は25年大阪万博誘致に大賛成です。今年3月NHKが実施した意識調査では、賛成が45.7%、反対が10.6%でした。

賛成の主な理由は「地域経済の活性化につながる」「会場に予定している大阪湾沿岸の夢洲が有効に活用される」「万博で地域が盛り上がる」。

カジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法が成立したことを受け、関西財界は24年までに大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)でIRを開業することを目指しています。同じ夢洲で大阪万博を実現できたら大阪が世界に打って出る大きなチャンスになります。

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大阪府の観光統計調査によると、訪日外客数と来阪外客数は上のグラフのように増えています。来阪外客数が全体に占める割合は25%から40%近くに拡大。客室稼働率でも大阪府は東京都を押さえて3年連続日本一です。

大阪の魅力は道頓堀のくいだおれ人形やカニ、フグといった巨大ディスプレイ。お好み焼き、たこ焼きといったストリートフードがアジアからの観光客に親近感を持たせています。

筆者は、大阪万博を起爆剤に大阪は反転攻勢に出るべきだと思いますが、皆さんはどうお考えですか。

巨大ディスプレイがアジアからの観光客を吸い寄せる(同)
巨大ディスプレイがアジアからの観光客を吸い寄せる(同)

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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