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「トランプの娘婿ジャレッド・クシュナーを北朝鮮に急派せよ」米専門家が提言

木村正人在英国際ジャーナリスト
核・ミサイル開発を急ピッチで進める金正恩(写真:ロイター/アフロ)

北朝鮮情勢が風雲急を告げてきました。日米首脳会談を狙った弾道ミサイル発射実験、北朝鮮の朝鮮労働党委員長、金正恩の異母兄、金正男暗殺、そして6日から始まる米中首脳会談を牽制するかのような弾道ミサイル発射実験。

北朝鮮の核・ミサイル開発はどうなっているのでしょう。世界的権威のシンクタンク、国際戦略研究所(IISS)アメリカのマーク・フィッツパトリック本部長に尋ねてみました。

――北朝鮮は6回目の核実験を準備していると報道されていますが、どんなタイプの実験をしようとしているのでしょう。一部では2つの核爆弾を同時に爆発させるのではという指摘もあります。北朝鮮のゴールは何なのでしょう

フィッツパトリック本部長「北朝鮮の核実験場で活動が活発化していることは新たな実験を準備していることを示唆していますが、実際にするかどうかは定かではありません。なぜなら彼らの上空から監視する衛星をバカにするためだけにそう装っている可能性があるからです」

「2つの核爆弾を使った実験は可能です。しかしながら1つの核爆弾ではなく2つの核爆弾を使う目的はプロパガンダの効果をより大きくするものでしかありません」

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「また、新たな水爆実験を試してみることも可能です。昨年1月に北朝鮮は『水爆実験』と自慢しましたが、本当の意味での水爆実験を実施できたわけではありません。6回目の実験を実施したら、水爆実験というゴールに向けて前進しそうです」

――北朝鮮は核兵器のためにリチウム6の生産を始めたと言われていますが、どんな意味があるのでしょう

「同位体のリチウム6は核兵器の能力を高める引き金として使われます。北朝鮮はおそらく昨年、水爆実験を試みるのにリチウム6を使ったのでしょう。しかしとても奇妙なのは北朝鮮がインターネットを通じて中国国内でリチウム6を販売しようとしたことです。私は北朝鮮がリチウム6を生産できることを自慢するためにインターネット販売のオファーをしてみせたと疑っています」

――北朝鮮はいろいろなミサイル実験を行っています。彼らのミサイル能力はどの辺りまで到達しているのでしょうか。北朝鮮は近く「衛星」の打ち上げ実験を行うとも報じられています。アメリカ本土を攻撃できる大陸間弾道ミサイルの開発に北朝鮮が要する時間は残り2~4年とも報じられています

「北朝鮮は多くの種類のミサイル開発で大きな進歩を遂げていますが、信頼性を確実なものにするためにはもっと多くの実験を行う必要があります。私は、北朝鮮は今年、発射台付き車両(TEL)から発射できる新型中距離弾道ミサイル『ムスダン』(射程2500~4000キロメートル)や固体燃料の新型中距離弾道ミサイル『北極星2号』(同1200~3000キロメートル)の発射実験をより多く実施すると見ています」

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「道路を移動できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)のうち1つの実験を1度行うかもしれません。また再突入ロケット本体の実射テストもしそうです。ICBMの発射実験は最初の2~3回は失敗するでしょうが、私は4年以内に北朝鮮は核弾頭を搭載したICBMでアメリカ本土を攻撃できるようになるかもしれないと信じています」

「2年以内に北朝鮮がこうした能力を獲得するのに成功するとも考えられますが、私は疑っています。とにかく、衛星の打ち上げはICBMの実験とは同じではありません。いくつかの技術は同じですが、衛星の重量は核弾頭に比べてはるかに軽いからです」

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――金正恩は米中首脳会談を意識しているようですが、アメリカのトランプ大統領にどんな対北朝鮮政策を期待しますか。トランプはアメリカ大統領選の期間中に言っていたように金正恩と会談するのでしょうか

「トランプ政権は朝鮮戦争を再開させる恐れのある軍事行動を除いて、可能なあらゆる手段を使って北朝鮮への圧力を増していくのは確実です。報道からは、トランプ政権の対北朝鮮政策見直しの結果によるいかなる外交上の兆候も見られません」

「しかしトランプ政権が真剣に『あらゆる選択肢がテーブル上に残されている』と考えるなら、関与政策はその1つの選択肢であるのは間違いありません。私はトランプが娘婿の大統領上級顧問ジャレッド・クシュナーを北朝鮮に派遣することを考えるべきだと思います。彼なら同じ一族支配の金正恩にアピールする最良の使節になるでしょう」

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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