どんどん広がる日中の軍事力格差 4年後に5倍に、集団的自衛権と日米同盟の強化は避けて通れない
ロンドンにある有力シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)は11日、世界各国の軍事力に関する報告書「ミリタリー・バランス2015」を発表した。
米国の国防支出は2010年には世界全体の47%を占めたが、14年には38%前後まで下がった。それでも5810億ドルに達しており、2位の中国1294億ドルを大きく引き離している。
中東のサウジアラビが13年は596億ドルで4位だったが、イランの核開発やイスラム過激派組織「イスラム国」の台頭に備えるため14年には808億ドルまで国防予算を増やし、ランクを3位に上げた。
日本は円安の影響で世界ランクは7位のまま変わらなかったが、14年のドル・ベースでは前年の510億ドルから477億ドルに防衛予算を減らしている。
アジアの国防予算は10年以降、名目で4分の1以上増え、14年には総額3400億ドル以上に。10年には中国の国防予算はアジア全体の28%だったが、14年までに約38%に増えた。
一方、日本の防衛予算は同じ期間、アジア全体の20%から14%未満に低下した。東シナ海で圧力を強める中国に対し、安倍政権は3年連続で防衛費を増やし、新年度予算で過去最高の4兆9801億円を確保した。
それでもIISSのギリ・ラジェンドラン調査アナリストによると、19年には中国の国防予算はアジア全体の50%、日本は10%と5倍もの開きが出てしまう。
これは単年度の国防予算の比較で、どんどん累積されていく日中の軍事力格差を考えると気が遠くなる。
アジアの潜水艦は1990年の176隻から2015年には229隻に増えている。
ミリタリー・バランス2015によると、中国は原子力弾道ミサイル潜水艦4隻を含む70隻、日本の海上自衛隊は18隻と圧倒的な差をつけられている。
さらに中国人民解放軍は、戦闘機や核弾頭が搭載可能な極超音速滑空ミサイルなどの兵器開発を急ピッチで進めている。
IISSのジェームズ・ハケット上級研究員は「中国は南シナ海で漁船、公船などさまざまな船舶を使って現状変更を企てており、日本は軍事衝突には至らないグレーゾーンに対処する能力が求められている」と指摘する。
中国との政治的相互信頼関係の構築はもちろん大切だ。それと同時に集団的自衛権の限定的行使を容認し、日米同盟を強化して中国に対しスキをつくらないことが日本が進む現実的な道である。英国やフランスとの防衛協力・交流の強化もその一環だ。
そもそも集団的自衛権の行使を認めていないのは日本と常備軍を廃止したコスタリカぐらいのもので、「集団的自衛権すなわち戦争への道」という批判は国際政治の現実に目をつぶる幼稚な議論と言わざるを得ない。
(おわり)