米国は銃規制に踏み切れるか

昨年12月、児童20人、教師6人が犠牲になった米東部コネティカット州の小学校での銃乱射事件を受け、オバマ政権は銃規制の強化案を発表する。昨年12月のギャラップ調査では58%が銃規制の強化を支持、34%が現状維持派だ。再選を果たしたオバマ大統領は果たして、米国伝統の銃文化を変革できるのか。

米憲法修正2条(人民の武装権)は「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有し、また携帯する権利は、これを侵してはならない」と定めている。

米国の銃所有は、「自分の身は自分で守る」という安全面の理由より、憲法に明記された米国建国以来の文化、価値観に支えられている。米最大の銃ロビー団体「全米ライフル協会」が銃規制の強化に反対して、活発なロビー活動を展開してきた。米政権が銃規制強化に動くのはクリントン政権が時限立法で半自動小銃の製造・販売を停止して以来、実に約20年ぶりのことなのだ。

日経新聞によると、オバマ政権は「ガン・ショー」などでの個人売買を含めたすべての銃購入者の犯罪歴調査を義務付け、数十発の装填が可能な半自動小銃の新たな製造・販売禁止を打ち出す方針だ。

銃規制を強化すれば、銃による大量殺人を防げるのか。銃乱射事件は米国の専売特許ではない。欧州でも頻繁に起きている。世界の例を見てみよう。

2011年7月、極右思想の持ち主アンネシュ・ブレイビク被告が爆弾テロや銃乱射で77人を殺害したノルウェーは皮肉なことに銃規制が最も厳しい国として知られている。

狩猟や射撃が盛んなノルウェーの銃所有率は100人当たり31・3人。米国の同88・8人(いずれも2007年)に比べると低いが、先進国の中ではかなり高い部類に入る。

銃犯罪を防ぐため、ノルウェーでは銃所有には免許が必要で、銃購入の際、所有の理由を自筆で提出しなければならない。自動銃や強力な拳銃の販売は禁止され、散弾銃やライフル銃は厳重な保管が義務付けられている。警察には保管方法が順守されているか査察する権限が与えられている。

銃を身に着けて移動するのも厳禁されているのに、ブレイビク被告が銃で若者を1人ひとり射殺していく惨劇は防げなかった。2009年にノルウェーではさらなる銃規制強化が行われたばかりだというのに…。

米国内で銃規制強化に反対するグループはそれみたことかと言わんばかりに「ノルウェーの例を見れば、銃規制の強化がいかに無意味か、がわかる」「惨劇が起きた島には銃が保管されていたが、厳重にカギがかけられ、肝心な時に護身用に使用できなかった」と主張している。

コネティカット州の小学校での銃乱射事件後、米CNNの看板トーク番組「ラリー・キング・ライブ」の後番組の司会者を務める元英紙デーリー・ミラー編集長、ピアース・モーガン氏が銃規制の強化を訴えたところ、視聴者から「米国の銃文化に反対する奴は国外に出て行け」と袋叩きにあった。

これが銃社会・米国の現実である。

英国では1987年と1996年の銃乱射事件の後、拳銃の所有が全面的に禁止された。1996年3月、英スコットランド地方の小学校に43歳の男が押し入り、違法拳銃4丁を乱射し、児童16人と教師を殺害した事件では、スコットランドに咲く「マツユキソウ」の名前を取った署名運動が起き、70万5千人が銃規制の強化を求めた。

銃規制を推し進めることができるのは、銃を持たない住民の意思以外にない。

銃による殺人発生率をみると、米国が10万人当たり3・7件発生(2009年)。英国は同0・04件(2011年)。ノルウェーも英国と同じ0・04件(2010年)。

銃規制の強化は銃乱射事件を防げないとしても、銃犯罪の犠牲者を劇的に減らしているのが一目瞭然だ。

オーストラリアでも35人が殺害された1996年の銃乱射事件をきっかけに、わずか12日間に銃規制が強化され、1981~1996年には5人以上が犠牲になる銃乱射事件が十数件起きていたが、それ以降はなくなっている。

オバマ大統領は銃保有を認めた憲法修正2条を守りながら、「攻撃用の銃」を規制する方針だが、政治論争を乗り越えて、銃乱射の悲劇を防げるかは、オバマ大統領のリーダーシップというよりも、米国民の意思にかかっている。

(おわり)