『統一球騒ぎで忘れられた根本的問題』

昨日6月11日、プロ野球選手会と機構側の定期交渉の席で、選手会側から「明らかに使用球の反発(飛び具合)が違う。今年から変わったのでは?」という疑問に、機構側がアッサリ認めたのだという。

とはいえコーチや選手、いわゆる現場やマスコミ関係者の間では「今年は飛ぶ。去年のボールとはまったく違う」という声が支配的だっただけに「今更なにを」というのがこれまでの経緯と実情を知る者の感想だろう。ちなみに開幕後、NPBもメーカーのミズノも「変わってはいない」と否定してきた。これもNPBからミズノに対して「否定するように」とお達しがあったというから、呆れる。NPBも組織といえばそれまでだが、柔道連盟や相撲協会と根っこは一緒ということか。

ただ前述のように現場では、もはや変わっていたことは「事実」であり、それを追認しただけだから、今回の公表にあまり大きな意味はないと思う。

もし問題があるとすれば、本質を見失った統一球、公認球の今後だ。

そもそもはWBCが開催され始めた過程で、日本の選手(主に投手)から「国内リーグでの使用球と、WBCでの使用球には質や重さに違いがあり、困る」という声があがったことが発端だった(はずだ)。革の滑りが違えばボールの変化が変わるだけではなく、指やヒジに残る感触も変わる。それはケガにも繋がる(実際、前回大会後の松坂大輔のヒジの故障には、その影響があったという見方が根強い)。

そこで元駐米大使でもあるコミッショナーが、歴史に名を残したいと立ち上がり、国際球に限りなく近い「国内使用球」を導入することで、選手の故障の不安をなくそう、というのがことの始まりだった(はずだ)。結果、メーカー関係者によれば「上質な革を使って作っていた“国内球”を、国際級(メジャーの使用球とは厳密には違うとされるが、極めて近い)の皮質に“ダウングレード”させ、飛距離も反発係数を検査して、日本より飛ばない球質に変えた」のだという。そして目に見え、わかりやすい飛ぶ、飛ばないという現象ばかりに、ファンも関係者も関心が集まってしまった。2011年のことである。

だが今年の3月、4年ぶりにWBCの使用球を手にした日本人選手たちの印象は、前回までとほぼ変わらなかった。「滑る」。

つまり当時、あれだけすったもんだして変えたはずの「統一球」は、根本的な解決にはなっておらず、ただ飛距離だけを変え混乱させてしまっていたというわけだ。

ではなぜそんな茶番に至ったのか。その過程には製造面での技術的な要素もあるが、飛ばなくなった当時にも多くのメディアで触れているので、ここでは控える。

では最も問題と思われる点はなにか?

日本の統一球を納入していない、とあるスポーツメーカーの関係者がこんなことを言っていた。「メーカーは日本の企業で、取り寄せる革も違い、加工も違えば、どれだけ握ったときの感触を近づけようとしても、決して同じものは作れません。もし本気で同じものにするなら、米国メーカーのもの取り寄せるしかない。またその方が簡単です。でもそれでは日本球界としてのメンツも潰れるし、これまで付き合ってきた国内メーカーにも顔向けが出来ない」。

そうして生まれたのが、妥協の産物という名の「統一球」だった。

今回、NPBは「規定の反発係数の範囲内に収めるため、微調整をお願いした」という表現で、去年まで飛ばなかったボールを、飛ぶように変えた。言葉を換えれば、戻した。

しかし、変更時に最も重要視されていたはずの「滑る国際使用球との是正」は、どこかに行ってしまった。では果たして、国内での統一球を変更する必要性があったのか?

そんな根本的な疑問は、解決されぬままだ。

いや、そもそも野球の五輪参加が消滅し、国際大会が4年に一度のWBCだけとなった今、そのためだけに使用球を変えたこと自体、意味のあることだったかどうか。それすら疑問ではあるのだが。