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もし、とんでもないものを相続したら? 映画『相続人』

木村浩嗣在スペイン・ジャーナリスト
パリでゴージャスな生活をする主人公にいきなり電話がかかってくる

フランス語の原題は『Le Successeur』。訳せば「相続人」とか「跡継ぎ」とかになるだろうか?

いきなり警察から電話がかかってくる。疎遠にしていた父が死んだので、住んでいた家の処分をしてくれと。

こんな時、「私には関係ありません。父とは縁を切ってますから」とは法律上言えないらしい。顔を見るのも嫌で、何十年も連絡を取っていないとしても、父は父であり、子供は相続人であって、相続の権利が発生するのだそうだ。

■「人でなし」からは「ろくでもないもの」を相続する可能性が高い

もちろん、豪邸とかお金とか金銀宝石だったりの財産とかだったら大喜びなわけだが、その可能性は低い。なぜなら、疎遠な人=嫌な奴だったわけで、そういう人間が社会的に成功して金を溜め込んでいるとは考え難いし、仮に溜め込んでいるとすれば、どうせ非合法なやり方で得た汚い金だったりして面倒なことに巻き込まれたりするのではないか。

というわけで、人でなしの父からは相続するのは大概ろくでもないものだろう。

負の遺産というと、真っ先にゴミ屋敷とか借金とかが思いつく。ゴミ屋敷はよくニュースにもなっている。

これらも「いらん、知らん」と突っぱねるわけにはいかないそうだ。ゴミ屋敷は自費で綺麗にして住むか、売るかしないといけない。相続放棄という手もあるようだが、負の遺産だけを放棄するわけにはいかないとか、結局、姉妹兄弟に押し付けることになるとか、簡単にはいかないようだ。「相続、ゴミ屋敷」、「相続、借金」とか検索すると、膨大なページが引っ掛かる。

■自分に宛てた手紙と自分名義の預金通帳…。人情ドラマかも

あと、負の遺産というと、病気もそうか。

病気になりやすい体質も遺伝する。私も最近、突然発症した病気があり、1カ月ちょっとで2度も手術をする羽目になってしまった。血液等の数値は悪くなかったし、健康な生活をしていたのに、と訴える私に医師たちが尋ねたことは「家族に同じ病気になった人はいますか?」。「いる」。亡くなった父のことを思い出してしまった。

映画『相続人』の主人公は、病も受け継いでいる。胸が時々痛くなる。私と同じ症状だ。

グザヴィエ・ルグラン監督
グザヴィエ・ルグラン監督

もっとも、父は実は良い人で、息子のためにコツコツと貯金していた、という可能性もゼロではない。

こちらは血気盛んな若者で、父は親としては経験不足で、大喧嘩して家を飛び出した後、互いに意地を張り続け、和解するタイミングを失った。ガラクタを整理していたら、自分名義の貯金通帳と自分宛の手紙が出てきたりして……。そこで父の愛に気づいて涙、涙、なんてのも映画だったら、ない話ではない

グザヴィエ・ルグラン監督は前に見た『ジュリアン』(邦題)も大変面白かった。『ジュリアン』の評は→人気=観客動員?サン・セバスティアン観客賞2位『Custody』。共同親権下の”人質”としての子供

主人公が何を相続したか、と書くとネタバレになる。私が想像できなかったものだし、大変面白かった、という感想を最後に書き残したい。

※写真提供はサン・セバスティアン映画祭

在スペイン・ジャーナリスト

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟のコーチライセンスを取得し少年チームを指導。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペイン・セビージャに拠点を移し特派員兼編集長に。15年7月編集長を辞しスペインサッカーを追いつつ、セビージャ市王者となった少年チームを率いる。サラマンカ大学映像コミュニケーション学部に聴講生として5年間在籍。趣味は映画(スペイン映画数百本鑑賞済み)、踊り(セビジャーナス)、おしゃべり、料理を通して人と深くつき合うこと。スペインのシッチェス映画祭とサン・セバスティアン映画祭を毎年取材

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