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“不正行為”に対する韓国女子ゴルフ界の世論は予想上回る厳しさ?“誤球”隠ぺい選手の復帰の可能性は…

金明昱スポーツライター
韓国ツアー出場停止処分中のユン・イナ。日本ツアーの選択肢は?(写真・KLPGA)

 昨年、韓国女子プロゴルフ(KLPGA)ツアーで“誤球”を隠してプレーを続け、その後、その事実が発覚して出場停止処分を受けている20歳のユン・イナ。

 彼女の処分の行方は、国内ゴルフファンが見守っているところだが、今月14日にKLPGAの理事会でユン・イナの議題が持ち上がり議論が交わされた。しかし、ここで結論は出なかった。結論は「来年初めに開催される理事会で再び審議を行う」という。

 改めて“不正行為”の経緯を説明すると、昨年6月の「韓国女子オープン」の初日、当時19歳のユン・イナが誤球に気づきながらもそのままプレーしたが、その後、マネジメント事務所を通じて大韓ゴルフ協会(KGA)には約1カ月後にメールで報告していたという。しかし、その報告が行われたのは、ユン・イナがツアー初優勝した7月中旬の大会「エバーコラーゲンクイーンズクラウン」の2日目で、最終日の優勝会見でも不正行為に触れなかった。

 つまり、1カ月もこの事実を隠蔽していたわけだ。後日、「2罰打での処置をキャディーが助言したが、それを聞かずにプレーした」ことやコーチや両親もこの事実を知っていたことも明らかになると、ついに八方塞がりとなり、7月25日にマネジメント事務所を通じて謝罪文を出した。自ら残りのツアーへの出場も取りやめた。

 韓国女子ゴルフ界を揺るがす前代未聞の行為に大韓ゴルフ協会(KGA)と韓国女子プロゴルフ協会(KLPGA)は、それぞれが主管・主催する大会に3年間の出場停止処分を下していた。

 ただ、今年9月にKGAが1年6カ月に短縮すると発表。これはユン・イナの誤球プレーが、KGA主管の「韓国女子オープン」だったことも関係しているが、今もKLPGAツアーへの復帰はまだできない。

 KGAが短縮に踏み切ったのは、約50時間の社会奉仕活動、米ミニツアー13試合の獲得賞金を全額寄付など、真摯な反省が見られるとのこと。また、ファンや一部の選手たち5000人ほどが救済の嘆願書を提出していたという。

来年4月の韓国ツアー開幕戦には間に合う?

 仮にユン・イナのKLPGAの処分がKGAと同じ1年6カ月に短縮された場合、出場停止処分が終わるのは2024年2月18日で、来季4月開幕予定の韓国女子ツアーからは復帰が可能となる。

 今回のKLPGAの理事会は結論を出せなかった。韓国ツアー事情に詳しい人物からこの話を聞いたところ「まだユン・イナの行為が許せないという選手は多い」という。早期復帰はうれしい出来事かもしれないが、ユン・イナ自身の精神状況を考えると、後ろ指さされながら、ツアー生活を送ること自体、そう簡単なことではないのかもしれない。

 韓国ツアーがダメなら、日本ツアーを選択する可能性も考えられる。彼女自身が海外でプレーすること、収まらない韓国世論の喧騒から離れることもきっと想定しているはずだ。日本のプロテストを受け、その流れでQTに挑戦してツアー出場権が得られるならば誰も文句は言わないだろう。

 それに20歳にして、これほどのスター性を持った選手をこのまま放っておくのはもったいない。身長170センチで、ツアー出場当時のドライバーの平均飛距離は263ヤードの1位の飛ばし屋。「長打クイーン」の異名をとり、端正なルックスも相まってすぐに人気選手となった。

 日本ツアーには韓国の申ジエ、全美貞、李知姫などベテランの大先輩たちが多くプレーしているが、プロフェッショナルな姿勢を学ぶにはまたとない機会だと思うのだが、ユン・イナ自身にそのような考えはあるのだろうか。彼女の処分結果と判断を待ちたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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