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ネイマールに釣られてチケット「買った側の責任」?日本で不出場、韓国で2ゴールの活躍をどう見るべきか

金明昱スポーツライター
全北現代戦で2ゴール1アシストの活躍を見せたネイマール(写真:ロイター/アフロ)

「ネイマール!ネイマール!」

 来日したパリ・サンジェルマン(PSG)がアル・ナスル、セレッソ大阪、インテルと3試合を戦い、いずれもPSGのブラジル代表FWネイマールが出場しなかったことで、観客席からは何度もネイマールコールが起こっていた。

 無理もない。彼の姿を一目見ようとチケットを買った人が多かったのは間違いなかったからだ。筆者もセレッソ大阪戦は取材、インテル戦はチケットを購入して観戦したが、スタジアム内の大型スクリーンにネイマールが映し出されるたびに歓声が起こり、出場を待ちわびるサッカーファンの心情が痛いほどよく分かったが、試合前のアップする姿は一度も見られず、出る気配はまったく感じられなかった。

 しかも今回は高いチケット代がネットニュースでもたびたび話題になり、セレッソ大阪の香川真司も空席が目立ったことに「チケットの値段は考え直してほしい」と苦言を呈していたほど。それだけにネイマールのプレーが見られなかったことは、個人的にも残念で仕方ない。

 一方、8月3日に韓国の釜山で行われたKリーグ1部の全北現代との試合にネイマールはスタメンでフル出場し、2ゴール1アシストと大活躍。途中、韓国代表MFイ・ガンインも出場して、母国ファンを沸かせていた。何よりもチケット代も韓国のほうが日本よりも安く設定されていたこともあり、韓国ファンにとっては満足いく試合だったに違いない。

 これには日本のサッカーファンが腹を立ててしまう気持ちもわからなくない。実際に“ネイマールに釣られて”チケットを買った人が多かったのを考えると韓国で全北現代戦に出場して、圧巻のパフォーマンスを見せたというニュースは、うらやましく見えて当然だ。

 ただ、パリ・サンジェルマンのチーム事情としては、ネイマールのケガの回復やコンディション調整を優先させたわけで、そこはタイミングが悪かったと言うべきだろうか。

目玉の選手が外れることも想定すべき?

 2018年に韓国で行われたKリーグ選抜対ユベントスとの試合では、クリスティアーノ・ロナウドが“必ず出る”と宣伝したことから、チケットは完売。しかし、ロナウドはベンチに座っているだけで、試合には出ず「背信!(ペーシン!)背信!」とスタジアムから大ブーイングが沸き起こっていた。いわゆる“ノーショー”事件だ。

 この様子を当時の日本メディアとサッカーファンはこぞってこの一件を「韓国側のヒステリック」、「出場の有無は常に変わるもの」などと非難していた。一方、今回のジャパンツアーでネイマールが不出場で、韓国では出場したことについて韓国メディアの「OSEN」は「両国の“ノーショー”を比較すれば、ネイマールは“ケガ”でプレーできなかった状況。それでも日本のファンに向けてあいさつはして応えていた。それにも関わらず、韓国でフルタイムで出場したことに怒っている。状況が逆転したことで冷静になれないようだ」とこれ見よがしに報じている。

 とはいえ韓国でのパリ・サンジェルマン戦も、ネイマールやイ・ガンインが出場しなければ、どう伝えていたのだろうか――とも想像してしまう。

 相変わらず日本と韓国は、少しくだらないと思える比較が話題になるものだが、いずれにしてもチケットを買う前から、試合のスタメンに“目玉の選手”が外れることもあると、想定しておくべきなのだろう。最終的には「買った側」に責任がある、と言い切りたいがなんとも歯切れが悪い。

 個人的にはイベント的な興行ならば、高いチケット代に含まれる付加価値やプラスアルファが欲しいのは事実。来年もジャパンツアーは開催されるだろうが、教訓を生かしファン目線に立った施策を望みたいものだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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