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ペルーとエルサルバドルに“10点の日本”と“1点の韓国”…比較論は必要か?

金明昱スポーツライター
来年1月のアジアカップ優勝を目指す韓国代表。クリンスマン監督の手腕に期待がかかる(写真:ロイター/アフロ)

 サッカー日本代表と韓国代表が、国際親善試合でそれぞれ同じ国と2試合を戦った。相手はエルサルバドルとペルー。両方の試合を見たが、率直な感想は結果からして日本の躍動感がインパクトに残ったことだった。

 日本はエルサルバドルに6-0、ペルーに4-1で圧勝。韓国はエースFWソン・フンミンがケガでベンチに座り、ナポリの優勝に貢献したDFキム・ミンジェも欠いていたとはいえ、全体的な動きと連携にやや難ありの印象を受けざるを得なかった。

 ただ、選手たちの攻撃的な動きと姿勢は好印象で、ボールが回るので見ている側としては面白い。だが、得点に結びつかないのでは意味がない。久保建英の元同僚のイ・ガンインのパフォーマンスの見る人を沸かせるプレーは随所に光ったが、結果はエルサルバドルに1-1、ペルーに0-1で敗れた。

 特に南米の強豪・ペルーを相手に苦戦を強いられた韓国だったが、これは日本もそう簡単に勝てる相手ではないと予想していたものの、三笘薫や伊藤純也のサイドの突破力に加え、遠藤航の中盤でも競り負けない強さ、鎌田大地の状況判断と前線への素早いパス供給、さらに途中交代で久保建英や堂安律が入ってくる層の厚さで、南米の強豪を相手にしても試合の流れを完全に支配してしまうほどだった。

韓国唯一の得点者は元Jのファン・ウィジョ

 韓国メディアはこの結果を受けて、さっそく“日韓比較”をし始めていた。「スポーツ朝鮮」は「韓国は1ゴール、日本は10ゴール…同じ相手で“極と極”の結果」と見出しを打ち、こう伝えている。

「韓国と日本はAマッチ親善試合の相手が同じ場合、常に比較される対象だ。クリンスマン監督率いる韓国の得点力の悩みとは裏腹に、日本は2試合すべて、多彩なルートで選手たちがゴールを決めた。セットプレーからエルサルバドル戦で最初のゴールを決めたのを皮切りに、巧みなパス回しにカウンターなど様々な形からゴールネットを揺らした。10ゴールを10人が作り出すという点も印象的だった」

 ただ、この結果の違いから、現時点の日本と韓国の戦力差の大きさや実力の違いを論じるのは、多少強引な部分はある。

 特に日本の森保一監督はカタールW杯から続投、韓国はクリンスマン監督が就任してまだ4カ月しか経っていない。しかも、代表選手が集まり、戦術や攻撃の意図やコンセプトをさらに明確にし、新たな選手の発掘もこれからというもの。今回の結果を比較して「日本よりも実力が劣る」と嘆くのはナンセンスだろう。

 ペルーのフアン・レイノソ・グズマン監督は試合後に、「攻撃のトランジションでは日本のほうが少し組織的な部分があったと語っているが、その理由について「日本は長きにわたり一人の監督の体制で、韓国はそうではない」とも話している。

 クリンスマン監督の手腕に注目するのはこれからになりそうだが、直近で結果を求められるのは来年1月のアジアカップとなる。優勝を目指す韓国は、今回のテストマッチの結果をどのように受け止め、どのようにチームに還元していくのかは期待したいところだ。

 余談だが、今回の試合で唯一の得点者となった元ガンバ大阪のFWファン・ウィジョも今年で31歳になる。世代交代も徐々に迫る中で、1人気を吐いたゴールは、後輩への「しっかりしろ」との“喝”のようにも見えた――。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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