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「え?女子で300ヤード!?」18歳の“怪物”韓国女子ゴルファー登場に“歴代最高の飛ばし屋”の声

金明昱スポーツライター
18歳のパン・シンシルの剛腕ぶりに沸く韓国女子ゴルフ界(写真・KLPGA)

 いま韓国女子ゴルフツアーは18歳の新星の登場に沸いている。その名は2004年9月生まれのパン・シンシル。

 韓国で注目を浴びるきっかけは、4月のメジャー「KLPGAチャンピオンシップ」(4位)で、同大会がレギュラーツアーのデビュー戦だった。最終日の13番ホールのドライバーでのティショットが約320ヤードを記録し、ギャラリーの度肝を抜いた。圧倒的な飛距離から韓国メディアがつけた愛称は“怪物”。

 300ヤード超えのティショットについては「ドッグレッグのホールで実際よりも距離が長く測定されたのでしょう」と謙遜するが、違うホールでも290ヤードほど飛んでいるのが計測されている。

 また、5月の「NH投資証券レディスチャンピオンシップ」(3位)でも最終日の4番ホールでピンまで約220ヤードを4番アイアンでピン側に寄せたスーパーショットも話題になった。それも高い弾道で木の上を超えるショットは、男子の試合を見ているようだったという。

 彼女は昨年の韓国ツアー出場を賭けた予選会で40位となり、今季は1部の「KLPGAツアー」と2部の「ドリームツアー」を並行しながら戦っている。この長打力を武器に今季はレギュラーツアーに4試合出場して2試合でトップ5入りという成績で、初優勝も間近と言われている。

男子に匹敵するスイングスピード

 身長は173センチ。アマチュア時代は3年間、ナショナルチームで韓国代表としてプレー。数々のアマチュアタイトルを獲得し、将来有望な大型選手として期待されていた。昨年4月の「オーガスタナショナル女子アマチュア」では8位に入り、プロ転向したのは昨年の10月だ。

 元々、ドライバーの飛距離に自信はあったが、これほどまで飛ばす選手ではなかった。2019年にバセドウ病を患い、体重が10キロ落ちるなど辛い時期を送っている。

 一般紙「中央日報」によれば「むしろこれをいい機会ととらえ、治療から体重が回復したあと、昨年の冬から約2カ月半、1時間半ほどスピードスティックを振り続け、飛距離を増やす練習に集中した」という。また、「病気をしたことでさらにコンディション管理を徹底する機会にもなった」と伝えている。

「中央日報」が話を聞いたツアー担当者によれば「スイングスピードは平均時速で107マイル、ボールスピードは時速159マイルほど。韓国男子ツアー選手で平均111マイル、女子選手の平均は94マイルとすれば、107マイルはとてつもないスピード」という。

「ウェッジとパターにも自信」

 また、飛距離を増やすきかっけになったのは、「ナショナルチーム時代に戦ったタイのナタクリッタ・ボンタベーラプが自分よりも50ヤード以上、遠くに飛ばしているのを見て、距離を延ばさないといけないと思った」から。

 身長173センチと体格にも恵まれ、徹底した練習とコンディション管理もうまくできているのであれば、おのずと成果が見えてくるのもうなずける。それに彼女が好きなクラブは“ドライバー”ではなくパターで、「100メートル以内のウェッジショットのコントロール、パターにも自信があります」と話す。

 いずれ米ツアーでの活躍が期待される逸材がまた韓国に現れたが、いつか日本ツアーでも豪快なスイングと圧倒的な飛距離が見られるのを期待したいところだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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