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韓国女子ゴルフ賞金女王のパク・ミンジが国別対抗戦を辞退して日本のメジャー出場を決めた“裏事情”

金明昱スポーツライター
2021、22年韓国女子ツアー賞金女王のパク・ミンジ(写真・KLPGA)

 今週開催の国内女子ゴルフのメジャー初戦「ワールドレディスチャンピオンシップサロンパスカップ」に韓国女子ツアーから3人の選手が出場する。

 2021、22年にそれぞれ6勝して2年連続賞金女王となったパク・ミンジ(24)、22年年間女王のキム・スジ(26)、ツアー通算5勝のイ・ソミ(24)と、ツアー屈指の実力者が世界ランキング上位者の資格で出場を決めた。その中でも注目はやはりパク・ミンジだろう。1998年生まれで、日本の渋野日向子、勝みなみ、小祝さくら、原英莉花ら“黄金世代”と同年代にあたる。

 2年連続賞金女王という肩書き通り、今シーズンも好調で出場4試合をすべて予選通過でトップ10は2回。コロナ禍が収束したタイミングで満を持して、日本のメジャー初参戦となった。

国別対抗戦よりも日本ツアー参戦は問題なのか?

 実は、パク・ミンジは今週、米国で開催される国別対抗戦「インターナショナルクラウン」の出場資格を得ていたのだが、当初、韓国内ではマネジメント会社を通じて「移動距離と国内ツアー日程の問題で出場を辞退することにした」と説明がなされていた。

 そうなると、本来であれば米国に行かず、韓国ツアーにそのまま出場すると思うもの。しかし、ふたを開けてみれば、「インターナショナルクラウン」と同週開催の日本ツアーの「ワールドレディスサロンパスカップ」の出場リストに、パク・ミンジの名前が確認されたタイミングで、その事実が発覚したというわけだ。

 これに韓国メディアが「どういうことだ?」とにわかに騒ぎ始め、国内でニュースになると、ちょっとした騒動となった。その理由は分かりやすいもので、「なぜ韓国代表として出場できる国別対抗戦を辞退して、あえて日本のメジャーに出場するのか」というもの。

 これは韓国だけでなく、このような話が他国であった場合でも似たような騒ぎになるのではないだろうか。仮に日本の選手が国別対抗戦を辞退して、韓国ツアーに出ていたとなれば、批判の対象になっていたかもしれない。

 ただ、どちらかといえば、日本よりも韓国のほうが、「国を背負って戦うこと」への想いは強く、国別対抗戦よりも日本のメジャー参戦を選んだという判断に、韓国内にはショックを隠し切れない世論もあったに違いない。

パク・ミンジ「日本ツアーを一度は経験したい」

 マネジメント会社がその“誤解”を解くため、パク・ミンジがインターナショナルクラウンを辞退した理由について、韓国スポーツ・芸能専門サイト「MHNスポーツ」の取材に応じ、こう説明している。

「米国で試合をするには移動距離のため、2週ほどは国内の大会に出られません。インターナショナルクラウンの前週は国内メジャーのKLPGAチャンピオンシップがありますし、そのあとはディフェンディングの資格として必ず出場しなければならないNH投資証券レディスチャンピオンシップが開催されます。2大会ともすべて出場しなければならず、インターナショナルクラウンは辞退しました」

日本ツアーに一度は出場したかったというパク・ミンジ(写真・KLPGA)
日本ツアーに一度は出場したかったというパク・ミンジ(写真・KLPGA)

 また、日本ツアー参戦を決めた理由についても、きっちりと納得のいく説明がなされている。

「米国か国内か日本か、この3つのどの試合にすべきた悩みました。サロンパスカップは出場可否に関係なく、申請期間が決まっていたので書類を送りました。それにパク・ミンジ選手が日本ツアーで一度もプレーしたことがありません。それに数年前から『一度は経験してみたい』という意志も強かった。昨年も6勝して休んでもいい試合もほとんどなく、世界ランキングで出場できるサロンパスカップが、それでも日程が合ったので出場を決めたのです」

 結果的にはマネジメント会社の発表の内容が後手に回ったことで、誤解を生む羽目になったわけで、何もパク・ミンジに非があるわけではない。

プロとして問われる対応と発言力

 ただ一つ、「残念」な思いを抱いてしまったのも事実。実際、5月2日の練習日の取材日にパク・ミンジに話を聞こうと思ったところ、現場マネージャーから断られた。事の経緯をぶり返されると思ったのかは分からないが、理由は「マネジメント会社から事前取材のNGが出ている」と言われ、この日に話は聞けなかった。

 こちらとしては「日本の試合に出てみたかった」という強い思いを抱くパク・ミンジの心境を改めて聞きたかっただけなのだが、そうした経緯から、多少の警戒心があったのかもしれない。

 韓国の賞金女王であれば注目されるのは当然の事で、もっと堂々と話の受け答えもしても良かったはず。「サロンパスカップ」出場を決めたのはパク・ミンジ自身であり、プロとしてはそこでの発言や対応力も問われるからだ。

 今大会の成績によっては、彼女がメディア露出する機会は増えることだろう。韓国ツアー賞金女王の肩書きを持つ申ジエ、イ・ボミ、キム・ハヌルは日本ツアー人気を牽引してきたが、その名に恥じないプレーと対応を期待している。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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