Yahoo!ニュース

北朝鮮が“沈黙”破りスポーツの国際舞台に復帰…アジア大会とパリ五輪参加の足掛かりとなるか!?

金明昱スポーツライター
コロナ禍で国際大会出場から遠ざかっている北朝鮮。写真は2018年平昌五輪(写真:ロイター/アフロ)

 朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)がスポーツの国際大会にいよいよ姿を見せる。4月28日から3日間、中国・浙江省台州で開催される「第10回東アジア空手道選手権大会」なのだが、これは全競技を通じて約3年ぶりの国際競技大会の復帰という。

 とはいえ、本国から選手が参加するのではなく、日本生まれの在日コリアン2選手が北朝鮮代表として出場する。これは北朝鮮が新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、国際大会の参加を相次いで辞退しているため、日本に住む在日コリアン選手が代表選手に選ばれて出場することになったわけだ。

 同国は2020年から海外から人の往来をストップさせており、各競技の国際大会には今もなおエントリーする気配は見られない。

 もっとも驚かされたのが、サッカーのカタール・ワールドカップ(W杯)アジア予選を辞退したことだ。北朝鮮はアジア2次予選(2021年)に出場していたが、その時は勝ち点8。同組のトルクメニスタンと韓国は勝ち点9と最終予選進出の可能性も残しながらも辞退した。ちなみに同予選は「AFCアジアカップ2023」(来年1月にカタールで開催)予選も兼ねていたため、北朝鮮は参加できなくなった。また、当時、2021年に開催された東京五輪への参加も「コロナウイルス感染症から選手たちを保護するため」との理由で辞退している。

 しかし、世界的にコロナ禍が収束を見せる現在は、物資の輸入は少しずつ増え、人の往来も限定的ではあるが駐北朝鮮中国大使が行き来するなどの動きもある。今回の国際大会出場を機に北朝鮮スポーツ界も動き出す可能性があるかもしれない。

杭州アジア大会に参加の意向?パリ五輪は?

 ちなみに北朝鮮国内で、スポーツ大会を大々的に開催している様子も確認できる。北朝鮮体育省が運営するサイト「朝鮮体育」を見ると、2022年には「共和国選手権大会」、「万景台賞体育競技大会」など全国規模のスポーツ大会が開催されているほか、サッカーが盛んな北朝鮮では2022-23シーズンの1部リーグが昨年12月1日からスタートしたニュースが掲載されていた。

 また、4月にはアジアサッカー連盟(AFC)主催のC級指導者講習が平壌市サッカー学校で行われるなど、国際競技を意識した活動の報告も見られる。つまり、国内でのスポーツ活動においては普段通りの光景が戻ってきており、あとは選手たちが海外に出る許可が下りるのを待つのみという状況のようだ。

 3月24日には北朝鮮オリンピック委員会の総会が開かれ「国際競技でメダル獲得を持続的に増やすための活動に引き続き拍車をかけるべきだ」との報告もされている。

 そこで注目したいのが、今年9~10月に中国で開催される「杭州アジア大会」への出場がどうなるか。今月26日の「杭州アジア大会準備会合」に北朝鮮の代表団が出席し、参加への準備を進めている様子が報告されている。ただ、国境の往来規制が解除されるのかは不透明。仮に選手団を派遣できれば、来年開催のパリ五輪参加への足掛かりにはなるはずだ。

 いずれにしても今回の空手・東アジア大会参加は、北朝鮮の国際競技大会復帰への第一歩となった。今後は本国の動きに注目していきたい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

金明昱の最近の記事