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今季で日本女子ゴルフ引退のイ・ボミが獲得できる韓国の“スゴいタイトル”が実はまだあった?

金明昱スポーツライター
「KLPGA名誉の殿堂」入りの可能性を残しているイ・ボミ(写真・KLPGA)

 2011年から日本女子プロゴルフツアーに参戦し、2015、16年に賞金女王となったイ・ボミ。賞金女王になった年は、2年連続で3冠(賞金ランキング、MVP、平均ストローク)を達成し、15年には年間獲得賞金を始めて2億円の大台に乗せる記録も樹立。絶頂期の日本での人気ぶりは、韓国でも話題になるほどだった。

 そんな彼女も19年に結婚し、コロナ禍の影響などで成績が出ない時期が長くなるにつれて、選手生活をどのように終えるのかを考えるようになった。今季限りで日本ツアーから引退することを発表したが、日本の女子ゴルフ界に大きく貢献した韓国人選手であることに間違いはない。

 日本で残した功績はたくさんあるが、一方で、母国・韓国でも大きなタイトル獲得の可能性が残されていることが分かった。それが「KLPGAゴルフの殿堂」だ。

「KLPGA名誉の殿堂」パク・セリや申ジエら

 日本にも「日本プロゴルフ殿堂」があるが、青木功、樋口久子、岡本綾子などゴルフ界に貢献したレジェンドたちが表彰されているほか、近年は「特別賞」が設けられ、松山英樹(マスターズ制覇)、稲見萌寧(東京五輪銀メダル)、笹生優花(全米女子オープン史上最年少優勝)が顕彰者として名を連ねている。

「KLPGAゴルフの殿堂」もそれと似たようなものと言えば分かりやすいだろう。2005年に創設された。最初に殿堂入りしたのは、日本ツアーでもプレーした元KLPGA会長の具玉姫(故人)。その後、パク・セリ、申ジエ、パク・インビが殿堂入りを果たしている。

 ちなみに日本ツアー4度の賞金女王となったアン・ソンジュが、2018年に100ポイントを達成して条件を満たしたが、満40歳という年齢制限が加わったため、2027年に自動的に表彰されることになっている。

 韓国女子ツアーの“殿堂入り”には様々な条件がある。ツアー歴10年以上の選手で、メジャー大会での優勝や最少ストローク(平均ストローク1位)、大賞(年間最優秀選手)のうち、1つ以上の受賞が必要で、「名誉の殿堂ポイント」を100ポイント獲得する必要がある。

 このポイントの獲得の条件がかなり細かい。主にはKLPGAツアー、日本ツアー、米ツアーのメジャー優勝が4ポイント、通常の大会優勝は2ポイント。年間最優秀選手は4ポイント、平均ストローク1位や新人賞は2ポイント、賞金女王は1ポイントなどと決められている。

100ポイント獲得まで残り“3ポイント”

 そうしたツアーの大会ごとのポイントを総合すると、イ・ボミは現在97ポイント獲得しており、KLPGA公式サイトにも“殿堂入り候補者”として紹介されている。残り3ポイントで、「KLPGA名誉の殿堂」入りを果たせるわけだ。

 ちなみに今季、KLPGAツアーに3試合出場すれば「2ポイント」が与えられる条件もある。なので、韓国ツアーの永久シードを持つイ・ボミには、いずれ達成が可能と思われていた。しかし、これには実はからくりがあり、調べると「日本のシードを持っている場合」の条件だった。

 というのも、日本のシードを持っているのであれば、わざわざ韓国の試合に出ることはないからだ。KLPGA広報担当者に問い合わせたところ「日本のシードを持つ選手が、KLPGAツアーに出場することに意味があると判断してポイントを付与するようにしています」と説明していた。

日本か韓国ツアー優勝が“殿堂入り”の絶対条件

 つまり、イ・ボミがこのまま韓国ツアーに出場しても、ポイントは付与されない。100ポイントを達成して「KLPGA名誉の殿堂」入りする条件としては、日本ツアー、もしくは韓国ツアーで優勝して、100ポイント超えを狙うしか方法がない。

 ちなみに韓国のプロゴルファーとして、殿堂入りを果たせるのはごく一部の選手で、具玉姫やパク・セリと肩を並べられるのは、名誉なことだろう。それを目前にして、達成が困難な状況を知ったイ・ボミは、おそらくショックを隠し切れないはずだ。

 ただ、完全にその可能性を失ったわけではない。今季の大会出場が残っている日本ツアーで優勝2回(4ポイント)、もし達成できなくても、今後、永久シードの権利で韓国ツアーに出場し、そこで2回優勝すれば100ポイントクリアとなる。かなり厳しい条件で現実的ではないかもしれないが、まだ道は残されている。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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