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「なぜ日本の野球ファンは大谷翔平に熱狂するのか」韓国メディアの“驚き”と“分かった”こととは?

金明昱スポーツライター
WBC初出場の大谷翔平に韓国メディアも熱い視線を注いでいる(写真:CTK Photo/アフロ)

「大谷の、大谷による、大谷のためのWBC」――。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次リーグB組で日本対中国の試合を取材した韓国紙「東亜日報」の記者は、9日付の記事でそう表現していた。

 日本は中国に8-1で快勝。特に「3番・投手兼指名打者」として“二刀流”で先発した大谷翔平(エンゼルス)の活躍と日本ファンの熱狂ぶりを目の当たりしていた。大谷は2安打を放ち、投手としても4回1安打無失点、5奪三振の好投。試合の記録だけでなく、人としての魅力について同記者はこうまとめている。

「この日の試合では終始、大谷はまるでアイドルのような姿を見せていた。明るい笑顔を見せ、時にはチームメイトに向かってウィンクをしていた。審判とも自然な会話をし、ラーズ・ヌートバー(カージナルス)が好守備を見せたときも両手を上げて喜んでいた。チームメイトのヒットや得点が出れば、ダッグアウトで誰よりも大きな拍手を送っていた。とにかくファンは好きにならざるを得ない、そんな姿が見られた」

 また、この試合のMVPに選ばれた大谷のインタビューを待ち望んでいたかのように、球場に集まった約5万人の観客は誰一人として、席を離れる人がいなかったことにも驚いていた。さらに敗者の中国代表に対し「素晴らしい野球をしていた」と称えるコメントもそうだ。

 実力だけでなく、そうした彼の優しさ溢れる行動が多くのファンを魅了していることを目の当たりし、「なぜ日本のファンがこんなに大谷に熱狂するのかが分かった」と締めくくっていた。

「WBC最高のスターを選ぶなら日本の大谷翔平」

 スポーツ紙「スポーツ京郷」も「WBC最高のスターを選ぶならば、日本代表の大谷翔平だ。大谷が現れる場所にはどこにでも人が集まる。テレビをつければ毎日、大谷の話が扱われる。スポーツ紙には大谷がすべて一面を飾っていた」と、その熱狂ぶりについて報じている。

 また、「東京ドームでのグッズショップで、中国戦が行われるのは19時だったが、午前中から行列ができていた。大谷の日本代表ユニフォームだけでなく、エンゼルスや日本ハムのユニフォームを着たファンが大勢いて、もはや東京ドームは大谷を見に来たファンでごったがえしていた」と、韓国にいては味わえない人気ぶりを目の当たりにしていた。

 韓国メディアからしてみれば、そもそも日本代表メンバーの豪華さと大谷の人気ぶりは多少知っていたとはいえ、実際にこれほど日本国民に愛されている選手だとは、想像以上だったのかもしれない。韓国各社が伝える“オオタニ・ショウヘイ”報道もさらに増えるのは間違いない。

 とはいえ、WBC韓国代表には、大谷に惚れ惚れしている余裕などない。初戦でオーストラリアに7-8で敗れて崖っぷちに追い込まれた韓国は、今日10日に宿敵・日本と対戦する。1次リーグ突破には勝利以外は許されないため、緊迫した試合になるのは必至。

 韓国ネットメディア「NEWSIS」は「日本戦は不幸中の幸いだが、“投手・大谷”を相手しなくてもいい。ただ、韓国の投手陣は“打者・大谷”と対戦する。警戒対象なのは当然だ」と報じている。これまで国際大会で日本の壁となって立ちはだかってきた韓国だけに、今大会でも手に汗握る名勝負を期待したいものだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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